本記事は、YouTube動画『世界経済リセットは起きるのか?株高と家計悪化を生む“税制のねじれ”』の内容を基に構成しています。
株価が上昇している一方で、一般家庭の生活は必ずしも豊かになっていない――。現在の米国経済では、一見すると矛盾するような現象が起きています。
動画では、この「株価は強いのに家計は苦しい」という状況について、単なる景気循環や金融政策ではなく、過去40年ほど続いてきた「税制の変化」という視点から分析しています。
そして、この構造が将来反転した場合、S&P500やオルカンなどを積み立てている長期投資家にも大きな影響が及ぶ可能性があると指摘しています。
重要なのは、「近いうちに暴落する」という予言ではありません。現在の株高を支えている構造は何なのか、そして、その構造が変わるサインをどこで確認すればよいのかを理解しておくことです。
「暴落後に買えば儲かる」とは限らない
株式市場では、大きな暴落が発生すると「絶好の買い場だ」と言われることがあります。
実際、過去を振り返れば、リーマンショックやコロナショックなどの大幅下落局面で株を購入し、その後長期間保有した投資家は大きな利益を得ました。
しかし動画では、これを単純に「暴落時に買えばよい」と考えることに注意を促しています。
過去の暴落後に株価が回復したのは、その後も基本的な経済・金融システムが維持されたからです。
もし、そのルール自体が変更されるような「経済のリセット」が起きれば、過去と同じような回復パターンになるとは限りません。
今回のテーマは、単なる株価暴落ではなく、株価を上昇させてきた経済構造そのものが将来的に変化する可能性について考えるものです。
米国で起きている史上まれな「ねじれ」
動画が最初に注目しているのが、米国人の心理に生じている奇妙なねじれです。
米国の民間調査機関であるカンファレンス・ボードは、消費者に対して「今後12カ月で株価が上昇すると思うか」という調査を長期間行っています。
動画によると、「株価が上昇する」と回答した人の割合は2024年末に観測史上最高水準となり、その後も高い状態が続いています。
つまり、多くの米国人が株式市場の将来について非常に楽観的になっているということです。
ところが、家計に関する調査を見ると正反対の結果が出ています。
消費者自身の家計や景気の先行きを尋ねる消費者信頼感は、2026年5月に約75年の統計の中でも極めて低い水準まで落ち込んだと動画では説明しています。
つまり現在の米国では、
「株価はこれからも上がると思う」
一方で、
「自分自身の生活は苦しくなると思う」
という2つの心理が同時に存在しているわけです。
動画では、これを約40年間の統計でもほとんど見られなかった「ねじれ」と位置付けています。
給料は1.5倍、株価は3倍
このねじれを生み出している背景として取り上げられているのが、所得と資産価格の成長格差です。
動画によると、米国の実質個人所得は過去15年間で約50%増加しました。
インフレを差し引いた実質ベースで約1.5倍になった計算です。
決して小さな伸びではありません。
しかし同じ期間、S&P500はインフレ調整後でも約3倍になったとされています。
つまり、
「働いて得る所得は約1.5倍」
である一方、
「株式という資産は約3倍」
になったということです。
ここに大きな差が生まれています。
さらに2026年に入ると、米国の1人当たり実質可処分所得は前年同期比でマイナス圏に入り、家計の貯蓄率も2%台まで低下したと動画では説明しています。
平均的な家計では、物価上昇などによって実質的な購買力が圧迫され、貯蓄ペースを落としながら生活を維持する状態になっているという見方です。
株高の恩恵を受ける人は限られている
さらに重要なのが、株式を誰が保有しているのかという問題です。
動画では、米国株式市場の時価総額の約9割を上位10%の世帯が保有していると説明しています。
そのため株価が大きく上昇しても、その恩恵はすべての国民に均等に行き渡るわけではありません。
株式や不動産などの資産を多く持っている人ほど資産価格上昇のメリットを受けやすく、毎月の給与を中心に生活している人ほど恩恵を受けにくくなります。
その結果、同じ米国経済の中でも、
「給与を中心に生活する人」
と、
「株式などの資産を持つ人」
では、まるで別の経済環境を生きているような状態が生まれます。
本来は「所得」と「株価」は長期的に連動する
動画では、現在の状況が昔から続いてきたわけではないことも重要なポイントとして挙げています。
1970年代から2018年ごろまでの長期データを見ると、米国の個人所得と株式市場は、おおむね同じようなペースで成長していたと説明されています。
これは経済の基本構造を考えれば自然です。
労働者の所得が増えれば消費が増えます。
消費が増えれば企業の売上が増え、利益も増えます。
そして利益の増加が最終的に株価上昇につながります。
そのため、本来であれば実体経済と金融市場は長期的に大きく乖離し続けることは難しいと考えられます。
ところが、この10年ほどで株価と所得の差が急速に広がりました。
では、なぜこの状態が長期間続いているのでしょうか。
動画では、その答えの1つとして「税制」を挙げています。
企業利益はGDP比で約12%まで上昇
現在の米国では、企業が経済全体から受け取る利益の割合が歴史的に高い水準になっています。
動画によると、米国企業の利益はGDP比で約12%に達しています。
1980年代には約5%だったため、経済全体に占める企業利益の割合は約40年間で2倍以上になった計算です。
その間には、パンデミック、ロシアによるウクライナ侵攻、インフレ、貿易摩擦など、企業経営にとって大きな逆風となる出来事もありました。
それでも米国企業全体では、高い利益率が維持されています。
一方で、GDPに占める賃金の割合は歴史的に低い水準まで低下していると動画では説明しています。
つまり経済全体で生み出された利益の「取り分」が、労働者側から企業側へ徐々に移ってきたという見方です。
株高を支えた「税金の傾き」
では、なぜ企業側の取り分が増え続けたのでしょうか。
動画が最大の要因として注目しているのが、過去40年間の税制の変化です。
米国では1980年代以降、企業側の税負担が軽くなる一方、一般家庭の負担が相対的に大きくなる方向へ制度が変化してきたと説明されています。
現在の米国の連邦法人税率は21%です。
一方、平均的な家計が実際に負担する税率は歴史的にも高い水準にあると動画では指摘しています。
つまり、
企業は減税される
↓
企業に利益が残る
↓
企業利益が拡大する
↓
株主への還元や投資余力が増える
↓
株価が上昇しやすくなる
という流れが生まれます。
反対に家計側では、税負担や物価上昇などによって可処分所得が圧迫されます。
この「企業には有利、家計には厳しい」という税制の傾きが、株価と家計心理のねじれを作り出しているのではないかというのが動画の中心的な主張です。
税制が変わらない限り「資産を持つ側」が有利
この考え方を投資家の視点から見ると、非常に重要な意味があります。
税制が企業や資本に有利な状態である限り、資産を持っている人が構造的に有利になりやすいからです。
そのため動画では、相場の方向性を見るうえでFRBの利上げ・利下げだけを見るのではなく、税制そのものにも注目する必要があると指摘しています。
金融政策は景気循環によって何度も変更されます。
一方で税制は、企業利益や家計の可処分所得の配分を根本から変える可能性があります。
つまり投資家にとって本当に怖いのは、単なる金利変更ではなく「ゲームのルールそのものが変わること」だという考え方です。
1970年代には税制の「逆回転」が起きた
では、現在とは反対に、企業から家計側へ経済の取り分を戻す政策が行われると何が起きるのでしょうか。
動画では、その参考になる時代として1960年代後半から1980年代にかけての米国を取り上げています。
当時は企業に有利だった構造が徐々に家計・労働者側へ戻されました。
その結果、企業利益が圧迫され、株式市場も非常に厳しい環境になりました。
動画によると、1965年から1980年代にかけての約15年間で、S&P500はインフレ調整後では約50%下落したとされています。
これは非常に重要です。
名目株価だけを見れば長期間投資によって資産を維持できたように見えても、インフレを考慮した「実質的な購買力」では大きく減少していた時代があったということです。
ただし、その後は家計側の購買力が回復し、1980年代から1990年代にかけての米国経済の拡大につながったというのが動画の説明です。
つまり「経済リセット」とは単純な株価暴落ではなく、企業・株主・労働者の間で利益の配分を組み直す大きな調整だということです。
なぜ現在はリセットが起きないのか
それでは、現在も株価と所得の格差が拡大しているにもかかわらず、なぜ政策当局は構造を大きく変更しないのでしょうか。
動画では政治的な理由を指摘しています。
企業への増税や金融所得課税の強化によって株価が急落すれば、その政策を実行した政権は大きな政治的ダメージを受ける可能性があります。
株式市場への参加者が増えた現在では、株価下落は富裕層だけの問題でもありません。
年金、確定拠出年金、NISAのような制度を通じて、一般家庭も株式市場とつながっています。
そのため政治家にとって、意図的に企業利益や株価を圧迫するような政策を実施するハードルは非常に高くなります。
これが、株価と所得のねじれが長期間続いている理由の1つではないかと動画では分析しています。
日本にも同じ「税制のエンジン」がある
この問題は米国だけではありません。
動画では、日本でも似た構造が存在すると説明しています。
日本の法人税の基本税率は1980年代には43.3%でしたが、現在は23.2%まで低下しています。
一方、家計側では1989年に3%で始まった消費税が、1997年に5%、2014年に8%、2019年に10%へと引き上げられました。
さらに社会保険料の負担も長期的に増加しています。
つまり日本でも、
企業側の税負担は軽くなる
一方で、
家計側の負担は増える
という方向への変化が続いてきたということです。
日本では内部留保が600兆円を突破
その結果として動画が紹介しているのが、企業利益と家計所得の違いです。
日本の実質賃金は長期的に大きく伸びていない一方、企業の内部留保は増え続けています。
動画によると、2023年度末には企業の内部留保が600兆円を突破し、12年連続で過去最高を更新しました。
そして日本株も大きく上昇しています。
そのため、
「給料はなかなか増えないのに企業利益と株価は増える」
という現象は、米国だけではなく日本でも起きているというわけです。
新NISAは「資本側に回るための制度」とも考えられる
日本政府は2024年から新NISAを開始し、「貯蓄から投資へ」という政策を進めています。
動画では、これを少し違った角度から解釈しています。
賃金だけでは資産を増やしにくい経済構造が続くのであれば、国民自身にも株式などの資産を保有してもらう必要があります。
つまり新NISAは、
「労働だけではなく、国民も資本を所有してください」
という制度と見ることもできるという考え方です。
もちろん、これは動画内で示された1つの解釈です。
ただ、企業利益と資産価格が賃金以上に成長する構造が続くのであれば、株式を保有することの重要性が増しているという点は、個人投資家にとって無視できないテーマでしょう。
日本でも税制の風向きに変化の兆候
一方、日本でもこれまでとは違う方向への動きが一部で見られます。
動画では2021年の岸田政権による金融所得課税の強化議論を例として挙げています。
株式の売却益や配当などに対する課税強化、いわゆる「1億円の壁」の見直しが話題になると、株式市場では警戒感が強まりました。
その後、政策としてすぐに本格導入されたわけではありませんでしたが、市場が税制変更に敏感であることを示す事例として紹介されています。
さらに動画では、2026年4月に始まった「防衛特別法人税」にも注目しています。
長年にわたり法人税負担を軽くする方向が続いてきた中で、企業側への負担増につながる政策が現れたことを、税制の風向きが変わる可能性を考える材料の1つとしています。
S&P500やオルカンの積立はやめるべきなのか
ここまで読むと、「それならS&P500やオルカンの積立をやめた方がいいのではないか」と考える人もいるかもしれません。
しかし動画では、積立投資をやめるべきだとは主張していません。
むしろ現在の資本に有利な構造が続いている間は、NISAなどを利用して資産を保有する側に回ることには合理性があるとしています。
重要なのは「株は長期なら必ず儲かる」という言葉を無条件で信じないことです。
過去には15年ほど保有しても、インフレを考慮すると実質的な資産価値が低下した時代がありました。
特に考える必要があるのが、投資の「出口」です。
30代で積立投資を始めた人と、10年後から資産を取り崩す予定の50代では、長期低迷相場が発生した場合の影響は大きく異なります。
若い投資家であれば安値で長期間積み立てられますが、取り崩し直前に長期低迷が始まれば、老後資金計画そのものに影響する可能性があります。
個別株では高収益の成長企業ほど注意が必要
動画では、個別株投資家についても1970年代の経験が参考になるとしています。
企業利益への逆風が強まる局面では、それまで高い利益率を維持し、高成長への期待から高く評価されていた企業ほど影響を受けやすくなります。
一方、生活必需品やエネルギーなど、実体経済に近く安定した需要が存在する分野が相対的に耐える場合があります。
現在人気のある企業だから安全というわけではありません。
株価には将来の利益成長が織り込まれているため、利益率の前提そのものが崩れれば、高い評価を受けている企業ほど株価調整が大きくなる可能性があります。
投資家がチェックすべき2つの税制ニュース
動画では、今後投資家が確認すべきポイントとして、大きく2つを挙げています。
米国の法人税・キャピタルゲイン課税
1つ目は、米国で法人税増税やキャピタルゲイン課税強化が本格的な政治課題になるかどうかです。
単に政治家や評論家が発言するだけではなく、選挙公約として具体化され、さらに法案として議会の審議に入る段階まで進むかどうかが重要になります。
企業利益の取り分を減らす方向へ税制そのものが変更されれば、これまで株高を支えてきた構造に変化が起きる可能性があります。
日本の金融所得課税と法人課税
2つ目は、日本における金融所得課税です。
特に注目すべきなのが、毎年公表される税制改正大綱です。
株式の売却益や配当に対する税率変更、「1億円の壁」の見直し、防衛特別法人税のさらなる引き上げなどが具体的な政策として盛り込まれるかどうかが重要になります。
動画では、こうした動きを単なる政治ニュースとして見るのではなく、「株式市場を支えてきた構造が変化しているかどうか」を判断する材料として見るべきだとしています。
金利だけでなく「税制」を見る
株式市場では、どうしてもFRBの利下げや利上げ、インフレ率、雇用統計などに注目が集まります。
もちろん、これらは株価に大きな影響を与えます。
しかし今回の動画が伝えているのは、それよりさらに長期的な視点です。
金利は上がったり下がったりします。
一方で税制は、企業と家計のどちらに経済の利益を多く配分するのかという、経済システムそのものを左右します。
企業に有利な税制が続けば企業利益が拡大し、資産価格には追い風になります。
反対に、企業や資産保有者から家計・労働者へ取り分を戻す方向へ政策が転換すれば、企業利益や株価の前提そのものが変わる可能性があります。
その意味で、税制は「相場の寿命」を考えるうえで重要な指標の1つになるというわけです。
「経済リセット」は明日起こる話ではない
ただし、動画では「すぐに経済リセットが起こる」と結論付けているわけではありません。
むしろ現在のところは、金利やインフレの動向の方が短期的には重要であり、税制については頭の片隅に置いておけばよいというスタンスです。
税制や経済構造は、一夜にして変わるものではありません。
政治的な議論が始まり、公約となり、法案化され、実際に制度として施行されるまでには時間がかかります。
だからこそ、その変化を早い段階で把握しておくことに意味があります。
まとめ
今回の動画では、現在の株式市場を単なる「AI相場」や「金融緩和期待」として見るのではなく、企業・労働者・資産保有者の間で利益がどのように配分されているのかという、より大きな構造から分析しています。
米国では、株価の先行きに対する楽観が強い一方、家計や景気に対する消費者の不安は非常に強くなっています。
その背景には、過去数十年間で企業利益の割合が高まり、賃金や家計側の取り分が相対的に伸びにくくなった構造があるというのが動画の見方です。
そして、その構造を長期間支えてきた要因の1つとして「税制の傾き」が挙げられています。
日本でも、法人税率が長期的に低下する一方で消費税や社会保険料など家計側の負担が増え、企業利益や内部留保、株価が拡大してきました。
こうした状況が続く限り、S&P500やオルカンなどを通じて「資産を持つ側」に参加することには合理性があります。
ただし、税制の方向が反転すれば状況は変わります。
米国の法人増税やキャピタルゲイン課税、日本の金融所得課税や法人税負担の強化が本格化すれば、それまで企業利益と株価を支えていた前提が変化する可能性があります。
そのため投資家は、FRBの金利政策やインフレだけでなく、税制改正にも目を向ける必要があります。
「株は長期なら必ず上がる」と考えるだけではなく、自分がいつまで積み立て、いつから取り崩すのかまで考えることも重要です。
今回の動画が伝えているのは、今すぐ株を売るべきだという話ではありません。
現在の株高を支えている仕組みを理解し、その仕組みが変わり始めた時に気付けるよう準備しておくことこそ、長期投資家にとって重要だということです。


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