本記事は、YouTube動画『【緊急解説】需給崩壊で日経がヤバい!!』の内容を基に構成しています。
日本株市場では、信用倍率が2週連続で8倍を超える異例の状態となっています。
信用倍率が高いと聞けば、「個人投資家が信用取引で株を大量に買い、相場が過熱している」「近いうちに投げ売りが起きるのではないか」と考える人も多いでしょう。
しかし、今回の信用倍率上昇は、単純な信用買いの膨張によって起きたものではありません。動画では、信用買い残がむしろ減少していたにもかかわらず、信用売り残が1週間で約25%も減少したことによって、信用倍率が急上昇したと説明されています。
つまり、買い手が急激に増えたのではなく、売り手が大幅に減った結果として、信用倍率が高く見えているのです。
この違いは、今後の日経平均を考えるうえで非常に重要です。信用売り残が減少するということは、それまで株価上昇の燃料となっていた空売りの買い戻し需要が少なくなったことを意味するからです。
本記事では、信用倍率8倍超の背景、信用買い残6兆7000億円が抱えるリスク、日経平均の銘柄集中、海外投資家の現物株と先物の動き、そして強気・弱気の両シナリオについて詳しく解説します。
信用倍率8倍超という数字に隠された本当の意味
まずは、信用倍率の基本的な仕組みを確認しておきましょう。
信用取引には、大きく分けて信用買いと信用売りがあります。
信用買いとは、証券会社から資金を借りて株を購入する取引です。信用取引で買われたまま、まだ返済されていない金額や株数を「信用買い残」と呼びます。
一方、信用売りとは、証券会社などから株を借りて先に売り、後から買い戻して返却する取引です。一般的には空売りとも呼ばれます。まだ買い戻されていない信用売りの残高が「信用売り残」です。
信用倍率は、次のように計算されます。
信用倍率=信用買い残÷信用売り残
信用買い残が増えれば、信用倍率は上昇します。しかし、信用売り残が減少した場合にも信用倍率は上がります。
今回の信用倍率上昇を考える際には、この分母と分子の違いを理解することが重要です。
動画によると、7月3日時点の信用倍率は約9倍まで上昇し、7月10日時点でも8倍を超えました。これにより、信用倍率は2週連続で8倍を超える異例の水準となっています。
表面的な数字だけを見ると、個人投資家が借金を使って日本株を大量に買い上げたように見えます。
しかし、7月3日時点の信用買い残金額は、前週から約4%減少していました。信用買い残は増えておらず、むしろ整理されていたのです。
それにもかかわらず信用倍率が上昇した最大の理由は、信用売り残が1週間で約25%も減少したことでした。
買い手が強くなったのではなく売り手が撤退した
この状態は、綱引きに例えると分かりやすくなります。
赤組と白組が綱引きをしているとき、赤組が圧倒的に優勢になったとします。このとき、赤組の人数が増えたり、選手が急に強くなったりしたとは限りません。
白組の選手が一斉に綱から手を離したことで、結果として赤組が強く見えている可能性もあります。
今回の信用倍率上昇も、これと似た構造です。
信用買いを行う投資家が暴走しているというより、信用売りを行っていた投資家がポジションを閉じ、市場から撤退したことによって信用倍率が上昇しました。
したがって、「信用倍率が8倍を超えたから、すぐに暴落する」と単純に判断するのは正確ではありません。
ただし、安心できる数字でもありません。
信用売りを行った投資家は、いずれ株を買い戻さなければなりません。株価が上昇した場合には損失を止めるために買い戻し、株価が下落した場合には利益を確定するために買い戻します。
どちらの場合でも、信用売り残は将来の買い需要になります。
その信用売り残が約25%減少したということは、今後の買い戻し需要が少なくなったことを意味します。相場の下に敷かれていた買い戻しというクッションが、以前より薄くなったと考えられるのです。
危険なのは信用倍率の高さではなく上昇した理由
信用倍率が高いだけでは、その後に株価が上がるか下がるかは判断できません。
重要なのは、信用倍率がどのような経緯で上昇したのかです。
信用買い残が急増して信用倍率が上昇した場合、個人投資家の強気姿勢が過熱し、将来の返済売りが増えている可能性があります。
信用取引には返済期限があり、含み損が拡大すれば追加証拠金の差し入れや、強制的な決済を求められることがあります。そのため、信用買い残の急増は将来の売り圧力として警戒されます。
一方、今回のように信用売り残が急減して信用倍率が上昇した場合には、別の問題が生じます。
それは、直前まで株価を押し上げていた「踏み上げ相場」が一巡した可能性です。
踏み上げ相場とは何か
踏み上げとは、株価の下落を予想して空売りしていた投資家が、予想に反して株価が上昇したことで損失に耐えられなくなり、買い戻しを迫られる動きです。
空売りを解消するためには、株を買い戻す必要があります。
株価上昇によって空売り勢の買い戻しが増えると、その買い注文によってさらに株価が上がります。すると、別の空売り投資家も買い戻しを迫られ、上昇が上昇を呼ぶ状態になります。
これが踏み上げ相場です。
6月末から7月初めにかけて信用売り残が急減したのであれば、すでに相当量の買い戻しが進んだ可能性があります。
これまで株価を押し上げていた踏み上げの燃料が、徐々に少なくなっていると考えられるのです。
機関投資家は強制的に売買する投資家を探している
機関投資家や大口投資家は、ニュースの見出しだけを見て感情的に売買しているわけではありません。
市場のどこに、将来的に売買を強制される投資家がいるのかを分析しています。
信用売り残が多ければ、株価上昇時に買い戻しを迫られる投資家が多いことになります。
一方、信用買いの含み損が拡大していれば、株価下落時に損切りを迫られる投資家が多いことになります。
現在は、上昇時に買い戻しを迫られる信用売りが減少する一方、信用買い残は依然として高水準にあります。
機関投資家から見ると、上昇を支える買い戻し需要が減った一方で、下落時の売り圧力は残っているように見える可能性があります。
ただし、信用買い残が多いからといって、そのすべてがすぐに売却されるわけではありません。
信用取引で含み益が出ている人もいれば、追加資金を入れる余力がある人もいます。返済期限が比較的長い一般信用取引を利用している人もいるため、信用買い残全体が一斉に投げ売りされるとは限りません。
相場を動かすのは、信用買い残の大きさだけではなく、信用取引全体の損失がどこまで深くなっているかです。
過去の信用倍率8倍超と今回の違い
過去にも、信用倍率が8倍を超えた局面はありました。
動画では、代表的な事例として2024年8月と2025年4月が挙げられています。
いずれも株価が急落し、市場に強い恐怖が広がった時期です。2025年4月には、信用倍率が約10倍まで上昇したとされています。
この事実だけを見ると、信用倍率8倍超は暴落の前兆のように感じられます。
しかし、重要なのは時間の順序です。
過去の事例では、信用倍率が上昇した後に暴落したというより、株価がすでに急落した結果として信用倍率が高くなったケースが少なくありません。
株価が下落すると、信用買いをしている投資家は損切りをためらい、信用買い残が市場に残りやすくなります。
一方、空売りをしていた投資家は利益が出るため、株を買い戻して利益を確定します。その結果、信用売り残だけが急速に減少し、信用倍率が上昇します。
つまり、高い信用倍率が暴落を引き起こしたのではなく、暴落によって高い信用倍率が生まれる場合があるのです。
信用評価率マイナス3%はまだパニック水準ではない
今回の状況を過去の急落局面と比較するうえで、重要になるのが信用評価損益率です。
信用評価損益率とは、信用取引で株を買っている投資家全体が、平均的にどの程度の含み益や含み損を抱えているのかを示す指標です。
動画によると、7月3日時点の信用評価損益率はマイナス約3%でした。
これは、信用買いをしている投資家全体が平均すると含み損を抱えているものの、その損失はまだ比較的小さいことを示します。
過去のパニック局面では、信用評価損益率がマイナス10%を超える水準まで悪化していました。
今回のマイナス約3%は、信用買いを行っている投資家が直ちに投げ売りを迫られるほど深刻な水準ではありません。
過去の高い信用倍率が「嵐が直撃した後」に現れた数字だとすれば、今回は雲が厚くなっているものの、まだ本格的な暴風雨にはなっていない状態と表現できます。
信用評価損益率がマイナス10%へ近づくと何が起きるのか
含み損が小さい段階では、多くの投資家は保有を続けられます。
株価下落を押し目買いの機会と考え、追加購入する人もいるでしょう。そのため、信用買い残が多くても、相場がすぐに崩れるとは限りません。
しかし、日経平均や保有銘柄がさらに下落し、信用評価損益率がマイナス10%へ近づくと状況が変わります。
損失が膨らむと、証券会社から追加証拠金を求められる可能性があります。投資家は不足資金を補うために入金するか、保有株を売却しなければなりません。
場合によっては、信用取引で買った銘柄だけでなく、含み益が出ている現物株まで売却して資金を確保することになります。
信用取引の損失が、直接関係のない優良株の売却まで引き起こすのです。
この連鎖が始まるかどうかを確認するための体温計が、信用評価損益率だと考えられます。
日経平均だけでは日本株全体の需給を判断できない
信用取引の統計は、日本株市場全体を対象にした数字です。
一方、日々のニュースで大きく報道される日経平均株価は、225銘柄から構成される特殊な株価指数です。
動画では、2026年7月14日時点において、アドバンテスト、東京エレクトロン、ファーストリテイリング、ソフトバンクグループの上位4銘柄だけで、日経平均への影響度が約38%に達していると説明されています。
さらに、テクノロジー関連の比重は全体の約57%とされています。
これは、学校のクラス平均を一部の成績上位者が大きく左右しているような状態です。
クラスの多くの生徒の点数が下がっていても、上位4人が高得点を取れば平均点は上昇します。
反対に、ほとんどの生徒が良い成績を取っていても、上位4人の点数が大きく下がれば、クラス全体の平均点は下落します。
半導体株の動きだけで日経平均が大幅変動する
信用買い残が多い中小型株で投げ売りが起きても、半導体関連株が強ければ日経平均は高値を維持することがあります。
反対に、日本株市場全体はそれほど弱くないにもかかわらず、日経平均への影響が大きい半導体株だけが売られ、指数が大幅に下落することもあります。
この場合、ニュースだけを見ていると、日本企業全体に重大な問題が起きたように感じられます。
しかし、実際には日経平均の構造や、先物取引による機械的な売買が指数を大きく動かしているだけかもしれません。
動画では、7月14日の日経平均終値は6万774円とされ、この日は値上がり銘柄が値下がり銘柄を上回り、上昇が市場全体へ広がったと説明されています。
長期投資家は、日経平均の数字だけで相場全体を判断するべきではありません。
確認したいのは、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数、TOPIXとの強弱、保有企業の利益予想、売買代金がどの業種まで広がっているかです。
日経平均が上昇していても値下がり銘柄が多ければ、見た目より相場は弱い可能性があります。
反対に、日経平均が下落していても値上がり銘柄が多ければ、日本株市場全体は見た目ほど弱くない可能性があります。
信用売り残が減っても空売り取引は消えていない
信用売り残が急減したと聞くと、空売りを行う投資家が市場からいなくなったように感じるかもしれません。
しかし、信用売り残と市場全体の空売り取引は同じものではありません。
信用売り残は、主に個人投資家などが週末まで持ち越している未決済の売りポジションを示します。
一方、東京証券取引所が公表する日々の空売り売買代金には、海外機関投資家、ヘッジファンド、証券会社の自己売買、指数連動商品の調整、先物取引との裁定取引、マーケットメイクなどが含まれます。
同じ日のうちに売って買い戻される空売りもあるため、信用売り残として残らない取引も少なくありません。
現在の日本株市場では、持ち越される信用売りは減少している一方、日中の機関投資家による空売りは活発という2層構造が起きている可能性があります。
ヘッジ売買が相場の値幅を拡大させる
この2層構造は、相場の値幅を大きくする要因になります。
朝に悪材料が出ると、先物売りやリスク回避のためのヘッジ売りが一斉に出ることがあります。
特に日経平均への影響度が大きい銘柄には、機械的な売り注文が集中しやすくなります。
個人投資家は急落を見て不安になりますが、その売りのすべてが企業の長期的な成長力に対する悲観を意味するわけではありません。
一部は、一時的に損失を抑えるための保険として行われる売りです。
午後や翌日に悪材料への警戒が弱まれば、ヘッジを外すための買い戻しが入り、株価が急反発することがあります。
昨日は暴落し、今日は急騰するという値動きが起きても、企業価値が24時間で激変したとは限りません。
多くの場合、機関投資家によるヘッジの着脱によって価格が大きく振られています。
信用倍率が8倍を超える状況で起きやすいのは、一方向への暴落だけではありません。上昇と下落の両方向に、値動きが極端になりやすいことが本当のリスクです。
海外投資家は現物を買いながら先物を売っている
日本株市場を考えるうえでは、海外投資家の動向も欠かせません。
動画によると、6月29日から7月3日の週、海外投資家は日本株の現物を約3662億円買い越しました。
一方、株価指数先物は約5157億円売り越し、現物と先物を合計すると約1494億円の売り越しでした。
個人投資家は、現物と先物を合わせて約6679億円売り越したとされています。
この数字を見ると、海外投資家が日本株を売っているように見えます。
しかし、内訳を見ると異なる姿が浮かびます。
海外投資家は日本企業の現物株を購入しています。その一方で、指数全体の短期的な下落に備えるため、先物を売って保険をかけている可能性があります。
これは、気に入った家を所有しながら、台風や火災に備えて保険へ加入するようなものです。
家に価値がないと考えているから保険に入るのではありません。価値を認めて保有を続けながら、短期的な損傷に備えているのです。
海外投資家の先物買い戻しが新たな上昇燃料になる可能性
海外投資家が現物株を保有しながら先物を売っているのであれば、この先物売りは将来の上昇燃料になる可能性があります。
半導体企業の決算、米国金利、日銀の金融政策などが市場の警戒ほど悪くなければ、海外投資家は先物のヘッジを外すかもしれません。
先物売りを解消するための取引は、先物の買い戻しです。
信用売り残の減少によって個人投資家の買い戻し余力は小さくなっていますが、海外投資家の先物ヘッジ解除が代わりの上昇燃料になる可能性があります。
そのため、信用倍率が高いからといって、上昇の道が完全に閉ざされたわけではありません。
反対に、悪材料が重なった場合、海外投資家は現物株を保有したまま先物売りを増やすこともできます。
この場合、企業業績が大きく悪化していなくても、日経平均は先回りして急落する可能性があります。
海外投資家の動きを見るときは、単純に買い越しか売り越しかだけを見るのではなく、現物と先物を分けて確認することが重要です。
6万9172円が需給上の重要な価格帯になる理由
動画では、7月の日経225先物・オプションの特別清算指数であるSQ値が6万9172円だったと説明されています。
TOPIXのSQ値は4065ポイントとされています。
SQ値とは、先物やオプション取引の最終決済に使われる価格です。
多くの機関投資家や取引参加者が、この価格を基準に損益を確定したと考えられます。
7月14日の日経平均終値は6万774円で、SQ値の6万9172円を下回っています。
この差は、単なるチャート上の線ではありません。
SQ値付近で先物やオプションのポジションを作った投資家にとって、損益が大きく変化しやすい境界になる可能性があります。
日経平均が6万9172円を明確に回復すれば、下落に備えていた先物売りやオプションのヘッジが外れ、買い戻しが加速する可能性があります。
反対に、何度上昇しても6万9172円付近で押し返される場合、戻りを利用した売り注文が待っている可能性があります。
ただし、SQ値は未来を予言する魔法の数字ではありません。
重要なのは、単に価格を超えたかどうかではなく、売買代金を伴って上昇したか、値上がり銘柄数が増えたか、TOPIXも一緒に上昇したか、半導体株だけで指数を押し上げていないかを確認することです。
複数の証拠が重なったときに、単なる一時的な上振れと、本格的な需給転換を区別しやすくなります。
強気シナリオは先物ヘッジの解除から始まる
現在の日本株市場には警戒材料がありますが、強気の土台も残っています。
信用買い残は高水準であるものの、7月3日の週には減少しました。
信用評価損益率もマイナス約3%であり、強制的な投げ売りが広がるほど深刻な水準ではありません。
海外投資家は現物株を買っており、日本企業の利益成長、株主還元、資本効率改善への評価が完全に崩れたわけでもありません。
強気シナリオでは、まず日経平均が重要な価格帯を回復します。
次に、上昇が半導体株だけでなく、銀行、商社、機械、内需株などへ広がります。
海外投資家が先物ヘッジを外し、売っていた先物を買い戻します。
指数上昇を見た短期投資家も買いに追随し、信用評価損益率が改善します。信用買いをしている投資家が損切りを迫られにくくなり、売り圧力も弱まります。
この循環が形成されれば、信用倍率が8倍を超えたままでも、日経平均が高値を試す可能性があります。
信用売り残が少なく、踏み上げ相場が起きにくいとしても、上昇の燃料がなくなるわけではありません。
海外投資家の先物買い戻し、企業による自社株買い、年金基金など長期投資家の現物買いが新たな上昇燃料になります。
強気シナリオを確認するための条件
強気相場を確認するには、日経平均が上昇しているだけでは不十分です。
指数上昇と同時に値上がり銘柄数が増えていること、TOPIXが追随していること、海外投資家の先物売りが縮小していること、信用買い残が過度に増えず信用評価損益率が改善していることが重要です。
これらが重なれば、一部の大型株だけに依存した細い上昇相場から、市場全体に広がる安定した上昇相場へ移行する可能性があります。
弱気シナリオでは買い戻しの少ない下落が進む
次に警戒すべき弱気シナリオを見ていきます。
半導体企業の決算が市場予想を下回る、米国金利が上昇する、円相場が急変する、日銀の追加利上げ観測が強まるといった悪材料が重なり、日経平均への影響度が大きい上位4銘柄に売りが集中したとします。
上位4銘柄は、日経平均への影響度の約38%を占めるとされています。
単純化すると、この4銘柄が平均して10%下落するだけで、ほかの銘柄が動かなくても日経平均を約4%押し下げる力があります。
日経平均が下落すると、指数連動型の金融商品から機械的な売り注文が出ます。
先物売りが現物株へ波及し、信用買いを行っている投資家の評価損が拡大します。
しかし、信用売り残はすでに減少しています。
株価下落時に利益を確定するため買い戻す空売り投資家が、以前より少なくなっているのです。
売りたい投資家は増える一方、買い戻さなければならない投資家は少ないという、需給の空洞が生まれる可能性があります。
信用評価損益率マイナス10%が警戒ライン
特に警戒したいのが、信用評価損益率がマイナス10%へ近づく場面です。
この水準になると、心理的な不安だけでなく、証拠金管理のための売却が増えやすくなります。
信用取引で買った銘柄だけでなく、含み益が出ている現物株まで換金されます。
その結果、決算や業績が良い企業まで売られ、市場全体へ下落が広がる可能性があります。
この局面では、個人投資家がニュースに振り回されやすくなります。
ニュースは、株価が下落した後になって悲観材料を並べる傾向があります。含み損を抱えた投資家は、その説明を見て「自分の恐怖は正しかった」と確信し、流動性が低下した時間帯に売却してしまうことがあります。
しかし、その直後に機関投資家がヘッジを外し、株価が急反発する場合もあります。
株価が下落したという事実と、企業価値が壊れたという判断は分けて考える必要があります。
価格は需給によって大きく変動しますが、企業価値は売上高、受注、利益率、財務内容、競争力などによって決まります。
この区別が、長期投資家をパニック売りから守ります。
信用倍率が低下しても安心できるとは限らない
信用倍率が8倍から7倍、6倍へ低下すれば、需給が改善したように見えます。
しかし、信用倍率の低下にも2種類あります。
1つ目は、信用売り残が増えることで倍率が下がるケースです。
信用買い残がほとんど変わらない状態で信用倍率が7倍へ低下するには、信用売り残が約21%増える必要があると動画では説明されています。
空売りが増えることを悪材料と考える人もいるでしょう。
しかし、信用売り残は将来の買い戻し候補でもあります。株価が上昇すれば踏み上げが起きやすくなり、株価が下落しても利益確定の買い戻しが入ります。
このため、株価が崩れずに信用売り残が増え、信用倍率が低下するのであれば、相場に新しいクッションが形成されたと考えることもできます。
2つ目は、信用買い残が投げ売りによって減少し、倍率が下がるケースです。
信用売り残が変わらない状態で信用倍率が7倍へ低下するには、信用買い残が約17%減る必要があり、金額では1兆円を超える整理になるとされています。
これは需給改善ではなく、信用買いを行っていた投資家が損失を確定した結果かもしれません。
同じ信用倍率の低下でも、信用売り残が増えたのか、信用買い残が減ったのかによって意味は正反対です。
信用倍率が低下したというニュースを見たときは、安心する前に、分子と分母のどちらが変化したのかを確認する必要があります。
長期投資家が取るべき冷静な戦略
現在の日本株市場は、強気一辺倒でも弱気一辺倒でもありません。
そのため、相場を完璧に予想することより、どのシナリオになっても市場から退場しない戦略が重要です。
信用倍率だけで保有株を売却しない
まず、信用倍率が8倍を超えたという理由だけで、保有株を一括して売却しないことです。
市場全体の信用需給と、自分が保有する企業の長期的な価値は別の問題です。
売上高、利益率、受注、現金、借入金、株主還元、競争力などが悪化していないのであれば、指数の需給が不安定になっただけで企業価値が消えるわけではありません。
レバレッジを高めすぎない
現在は上昇余地も残っていますが、上下の値幅が拡大しやすい相場です。
分析が正しくても、短期的な急落に耐えられなければ、投資を続けられません。
現金余力は、利益を生まない無駄な資産ではありません。相場急変時にも冷静な判断を維持するための保険です。
投資する時間を分散する
一度の売買で将来の価格を当てようとするのではなく、購入や売却の時期を分散することも重要です。
決算前、決算発表後、需給改善後など、複数のタイミングに分けて判断すれば、予想が外れた場合の損失を抑えやすくなります。
実質的な集中投資を確認する
保有銘柄の社名や業種が異なっていても、半導体、AI、円安など、同じ材料で動く企業ばかりを保有していれば、実質的には集中投資です。
景気敏感度、金利感応度、為替感応度、国内需要と海外需要などを分け、異なる値動きをする資産や企業を組み合わせることが重要です。
強気と弱気の撤回条件を決めておく
相場見通しを持つ場合は、自分の予想を撤回する条件を事前に決めておく必要があります。
強気見通しを維持する条件としては、企業利益が維持されること、信用評価損益率が大幅に悪化しないこと、海外投資家の現物買いが続くことなどが挙げられます。
警戒を強める条件は、日経平均が下落したという事実だけではありません。
信用評価損益率がマイナス10%へ近づき、信用買い残が高止まりし、海外投資家が現物と先物を同時に売り、値下がり銘柄が市場全体へ広がる場合には、需給悪化を警戒する必要があります。
反対に、弱気見通しを撤回する条件も決めておくべきです。
日経平均が6万9172円を回復し、値上がり銘柄数が増加し、TOPIXも追随し、海外投資家の先物売りが縮小するのであれば、需給改善を認める必要があります。
自分の予想に忠誠を誓うのではなく、データに忠実であることが、長期投資家にとって重要な姿勢です。
現在の日本株市場を4つの視点から整理
現在の日本株市場は、強み、弱み、機会、脅威という4つの視点から整理できます。
日本株市場の強み
信用買い残は大きいものの、直近では増加していません。
信用評価損益率もマイナス約3%にとどまり、強制的な投げ売りが本格化する水準ではありません。
海外投資家は現物株を買っており、日本企業への中長期的な評価は残っています。
日経平均が一時的に下落しても、企業の利益成長や株主還元が相場を下支えする可能性があります。
日本株市場の弱み
信用売り残が急減したことで、将来の買い戻し需要が薄くなっています。
日経平均は一部の大型株への集中度が高く、特に半導体関連株が失速した場合、指数全体が大きく下落する可能性があります。
さらに、6兆7000億円を超える信用買い残は、下落が深まれば将来の売り候補になります。
日本株市場の機会
海外投資家が積み上げた先物ヘッジが解除されれば、新たな買い需要が生まれます。
日経平均が6万9172円を回復し、上昇が幅広い業種へ広がれば、信用倍率が高い状態でも相場は高値を試す可能性があります。
また、株価が崩れない状態で信用売り残が少しずつ増え、信用倍率が正常化するのであれば、需給はむしろ健全になります。
日本株市場の脅威
半導体企業の決算、米国金利、日銀の金融政策、為替変動などが同時に悪化した場合、日経平均への影響が大きい銘柄への売りと、信用買いの損切りが重なる可能性があります。
信用評価損益率がマイナス10%を超えて悪化し、海外投資家が現物と先物を同時に売り始めれば、買い戻し需要が薄いという需給の弱点が表面化します。
まとめ
信用倍率が2週連続で8倍を超えた最大の理由は、信用買い残が急増したことではありません。
信用売り残が1週間で約25%減少し、売り手が市場から撤退したことによって、信用倍率が押し上げられました。
そのため、信用倍率8倍超を見て、個人投資家の信用買いが暴走していると決めつけるのは正確ではありません。
一方で、信用売り残の減少は、将来の買い戻し需要が少なくなったことを意味します。
これまで相場を押し上げてきた踏み上げの燃料が減少する一方、信用買い残は6兆7000億円を超える高水準に残っています。
信用評価損益率はマイナス約3%であり、現時点では投げ売りが本格化する水準ではありません。しかし、相場がさらに下落し、信用評価損益率がマイナス10%へ近づけば、信用買いの損切りや現物株の換金売りが増える可能性があります。
現在の信用倍率8倍超は、暴落の日時を示す予言ではありません。
良い材料にも悪い材料にも、相場が以前より大きく反応しやすくなっていることを示す警報です。
好決算、米国金利低下、海外投資家の先物ヘッジ解除が重なれば、日経平均が大きく上昇する可能性があります。
反対に、半導体株の失速、米国金利上昇、日銀の引き締め観測、信用評価損益率の悪化が重なれば、買い戻し需要の少ない下落が急速に進む可能性があります。
重要なのは、上昇か下落かを1つに決めつけることではありません。
信用倍率の分子と分母、信用評価損益率、海外投資家の現物と先物、日経平均の銘柄集中、値上がり銘柄数、TOPIX、SQ値の6万9172円といった複数のデータを確認し、どの数字が変化すればシナリオを修正するのかを事前に決めておくことです。
相場では、常に正しい予想ができる投資家だけが生き残るわけではありません。
自分の間違いを認め、過度なレバレッジを避け、資金を守り、次の機会まで市場に残り続けられる投資家が、長期的には強いといえるでしょう。


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