本記事は、YouTube動画『日経平均の急落と半導体株の今後、キオクシアの妥当株価を解説』の内容を基に構成しています。
先週の日本株市場では、週末にかけて売りが急速に広がり、日経平均株価は週間で約4%下落しました。特に厳しい値動きとなったのが、キオクシアホールディングスをはじめとする半導体関連銘柄です。
日経平均は1カ月単位で見ると、すでに約10%下落しています。短期間で大きく上昇してきた銘柄を中心に利益確定売りが広がり、相場全体が本格的な調整局面に入ったようにも見えます。
もっとも、株価が大きく下がったからといって、すべての企業で業績が悪化しているわけではありません。現在の下落には、業績面だけではなく、過熱していたポジションの解消や信用取引の需給悪化、季節的なアノマリーなど、複数の要因が影響していると考えられます。
この記事では、日経平均と半導体株が急落した背景を整理したうえで、キオクシア、村田製作所、任天堂、SHIFTなどの妥当な株価水準について、利益成長や信用取引の状況を基に詳しく解説します。
日経平均は1カ月で約10%下落
先週1週間の日経平均株価は約4%下落しました。さらに期間を1カ月まで広げると、下落率はすでに約10%に達しています。
短期的な値下がりというよりも、約1カ月にわたって調整が継続している状況です。なかでも下落が目立つのは、それまで相場上昇をけん引してきた半導体関連銘柄です。
株式市場では、上昇率の高かった銘柄ほど、相場の流れが変わったときに売られやすくなる傾向があります。株価上昇の過程で買いポジションが積み上がっているため、一定の下落をきっかけに利益確定や損切りが重なり、値下がりが加速することがあるからです。
今回の日本株市場でも、企業業績の急激な悪化というより、半導体株に集中していた資金が一斉に巻き戻されている可能性があります。
キオクシア株は7万7000円から5万2000円まで急落
調整局面の中心にいる銘柄の1つがキオクシアホールディングスです。
キオクシアについては、指数への組み入れ比率が大幅に増えることにより、10月末や11月末に機関投資家からまとまった買い付けが入る可能性が注目されていました。
指数連動型の運用を行う機関投資家は、構成銘柄や組み入れ比率の変更に合わせてポートフォリオを調整します。そのため、指数への新規採用や組み入れ比率の上昇は、株式の需給を改善させる材料になります。
しかし、そのイベントを迎えるより前に、キオクシア株は大幅な調整に見舞われました。動画が前回公開された時点では7万7000円程度だった株価が、短期間で約5万2000円まで下落し、5万円割れを意識する水準となっています。
1年以上保有している投資家であれば、取得価格によってはまだ大きな損失になっていない可能性があります。一方、最近になって信用買いを中心にポジションを構築した投資家にとっては、非常に厳しい展開です。
信用取引は少ない自己資金で大きな金額を取引できる反面、株価が予想と反対方向へ動いたときには損失も拡大します。追証や強制決済が発生すれば、下落局面で売りがさらに増える可能性もあります。
金曜日の下落率上位には半導体関連銘柄が並ぶ
金曜日の日経平均構成銘柄を下落率順に見ると、上位には半導体や電子部品に関連する企業が並びました。
キオクシアはストップ安となり、SUMCO、SCREENホールディングス、太陽誘電なども大幅に下落しています。一部では下落率が15%前後に達しました。
一方、半導体検査装置を手掛けるアドバンテストの下落率は約7%にとどまり、ほかの関連銘柄と比べると相対的に小さな下げとなりました。もっとも、1日で約7%の下落は決して軽微ではありません。
これに対し、金曜日に上昇した銘柄としては、SHIFT、セブン&アイ・ホールディングス、コナミグループなどが挙げられています。半導体株に売りが集中する一方で、ゲームや内需に関連する銘柄には資金が向かいました。
任天堂も、それまで軟調な値動きが続いていましたが、半導体株が下落する局面では相対的な強さを見せています。市場全体から資金が完全に流出しているというよりも、過熱していた半導体株から別の業種へ資金が移動している可能性があります。
7月にはモメンタム株が調整しやすい傾向がある
今回の下落を考えるうえで注目されるのが、7月にモメンタム株が調整しやすいというアノマリーです。
モメンタム株とは、直近まで株価の上昇傾向が強かった銘柄を指します。業績の成長期待やテーマ性によって買いが継続し、上昇の勢いがさらに買いを呼んでいる銘柄です。
動画で紹介されたデータによると、モメンタムの強い銘柄で構成したバスケットは、ここ6年連続で7月に調整する傾向が観測されています。明確な原因を特定するのは難しいものの、季節的な傾向として繰り返されている事象です。
同じように、12月末にかけてもモメンタム株が一時的に調整しやすい傾向があります。
ただし、アノマリーは必ず再現される法則ではありません。過去に同じ傾向があったとしても、その年の企業業績や金融政策、投資家のポジションによって結果は変わります。今回の下落が7月の季節性だけで説明できるわけではありませんが、調整を強めた要因の1つとして考えることはできます。
急落後には短期的な自律反発も期待される
今年のモメンタム株は、一時的に約27.5%という大きな調整を記録しました。過去の統計では、月間のパフォーマンスが20%以上下落した場合、その後に一定の自律反発が起きる傾向も確認されています。
動画で紹介された過去の平均では、月間で20%以上下落した後のリターンは、1週間で約3.7%、1カ月で約5.8%の上昇となっています。
また、直近5日間で10%以上下落した場合には、その後1週間で約5.8%、1カ月で約10.3%戻るという平均的な結果も示されています。
短期間で下落の勢いが強まりすぎると、売られ過ぎを狙った買いや、空売り投資家による利益確定の買い戻しが入りやすくなります。そのため、相場が一直線に下がり続けるとは限りません。
もっとも、これらの数字は過去の平均にすぎず、今回も同じように反発する保証はありません。急落後に一時的な反発が起きたとしても、それが本格的な上昇トレンドへの転換を意味するとは限らない点にも注意が必要です。
キオクシアの利益予想と株価の乖離が拡大
キオクシアの株価を考えるうえでは、1株当たり利益であるEPSが重要になります。
EPSとは「Earnings Per Share」の略で、企業の純利益を発行済み株式数で割った数字です。EPSが増加すれば、1株が生み出す利益も増えていることになります。
動画内のデータでは、2026年度のEPSとして943円前後の数字が示され、その後の2027年度、2028年度にはさらに大きな利益成長が予想されていました。一部の予想では、将来的にEPSが9000円や1万2000円に達するという数字も示されています。
利益予想が引き上げられるにつれて株価も急速に上昇しましたが、足元では株価だけが5万円程度まで大きく下落しています。このため、将来利益の予想と株価の間に大きな乖離が発生しています。
将来の利益予想が維持されるのであれば、4万円台は過度な調整として魅力的な買い水準になる可能性があります。ただし、利益予想そのものが下方修正されれば、現在の株価が必ずしも割安とはいえなくなります。
重要なのは、株価が以前より安くなったかどうかではなく、その株価を正当化できるだけの利益を将来生み出せるかどうかです。
キオクシアの下落率は過去5年でも最大級
キオクシアのドローダウンを見ると、今回の下落幅は最大で約32.8%に達し、過去5年でも最大級の調整となっています。
ドローダウンとは、株価が直近の高値からどの程度下落したかを示す数字です。例えば10万円から7万円まで下落すれば、ドローダウンは30%となります。
過去には2023年初めにも約34%の調整がありました。その際は、底打ち後に緩やかな反発へ移りましたが、元の水準を回復するまでには約1年を要しています。
今回も短期的な自律反発が起きる可能性はありますが、以前の高値を取り戻すまでには相当な時間が必要になるかもしれません。短期的な反発を狙う投資と、長期的な業績成長を期待して保有する投資では、考え方を分ける必要があります。
少なくとも、下落幅だけを見れば、すでに相応の調整が進んでいる状況です。
半導体株の方向を左右するハイパースケーラーの設備投資
今後の半導体株を考えるうえで最も重要な要素の1つが、ハイパースケーラーによる設備投資です。
ハイパースケーラーとは、大規模なデータセンターやクラウド基盤を運営する巨大IT企業を指します。代表的な企業として、Google、Amazon、Microsoft、Oracleなどが挙げられます。
これらの企業は、AIモデルの開発やクラウドサービスの強化を目的として、データセンター、半導体、サーバー、ネットワーク機器などに巨額の資金を投じています。
設備投資額は英語で「CAPEX」と表記されます。今後発表される各社の決算では、足元の利益だけでなく、AI関連の設備投資計画が大きな注目点になります。
ハイパースケーラーが今後も積極的な設備投資を続ける方針を示せば、AI半導体やメモリに対する需要期待が再び高まり、関連株の反発材料になります。
反対に、設備投資を抑制する方針が示されれば、半導体関連株には厳しい相場が続く可能性があります。日本の日経平均は半導体関連銘柄の寄与度が高いため、米国株よりも大きな影響を受けることも考えられます。
設備投資を減らせば米国の巨大IT企業には追い風となる
ハイパースケーラーが設備投資を減らすことは、半導体企業にとっては悪材料ですが、設備投資を行う巨大IT企業にとっては必ずしも悪い話ではありません。
設備投資を減らせばコスト負担が軽くなり、フリーキャッシュフローや利益率が改善する可能性があります。AI開発への投資が期待ほどの収益を生んでいないと判断されれば、投資家は設備投資の拡大よりも収益性の改善を評価することがあります。
つまり、設備投資が増えれば半導体企業に追い風となり、設備投資が減ればGoogleやMicrosoftなどの利益にプラスとなる可能性があります。
この構造から考えると、日経平均よりもS&P500やNASDAQなど、米国の幅広い株価指数を中心に保有した方が、設備投資の増減による影響を分散しやすいという見方もできます。
動画では、ハイパースケーラーの設備投資額について、2025年の水準から今年は約80%増加し、翌年にはさらに約20%増加するという前提が紹介されています。
しかし、この強い設備投資予想を考慮しても、キオクシアの株価10万円を正当化するのは難しいという見方が示されました。
キオクシアの理論株価をEPSから計算
キオクシアの直近の業績を見ると、2期前までは赤字が続いていましたが、2026年3月期には業績が急回復しています。
営業利益率は約37%となり、EPSは約1024円です。前期のEPSが約519円だったため、ほぼ2倍に増加した計算になります。
この1024円を出発点として、ハイパースケーラーの設備投資増加率を利益成長に当てはめ、将来の理論株価を試算しています。
強気シナリオでは5年後のEPSが約6600円
最初の強気シナリオでは、翌期の利益成長率を約85%と仮定します。その後は、利益成長率が毎年約30%ずつ低下していく前提です。
この場合、EPSは1024円から約1900円へ増加し、さらに約3000円、約4280円と拡大していきます。5期後には約6600円となり、現在の約6~7倍の利益水準に達する計算です。
この非常に強い成長が5年間継続して、ようやく理論株価は約7万3000円になります。
つまり、7万円台を正当化するためには、AI設備投資が長期間にわたって拡大し、キオクシアの利益も高い成長を続ける必要があります。半導体・メモリ業界には景気循環があるため、5年間にわたって高成長が続くという前提には相応の不確実性があります。
予測期間を3年程度に短縮すると、妥当な株価は約5万円になります。遠い将来ほど利益予想の不確実性が高くなることを考えれば、5万円前後は比較的現実的な水準とも考えられます。
10万円を正当化するには極めて強い成長が必要
株価10万円以上を正当化するためには、高い利益成長率がほとんど低下せず、複数年にわたって続くという強気の前提が必要です。
しかし、ハイパースケーラーの設備投資は、足元では約85%増加すると予想されていても、翌年には約25%程度の伸びへ鈍化する見込みです。
設備投資の成長率が急速に低下するのであれば、キオクシアの利益だけが高い成長を長期間維持するという想定には無理があります。
成長率が約70%ずつ低下する保守的な前提を採用すると、理論株価は3万円前後となります。ただし、これはかなり慎重な見方です。
中間的なシナリオでは4万4000円前後
より現実的なシナリオとして、利益成長率が毎年半分程度へ低下すると仮定します。
最初の年に85%増加し、翌年は約42%、その次は約21%と成長率が鈍化していく計算です。この前提で5年間を評価した場合、理論株価は約4万4000円となります。
動画では、この4万4000円前後が現在の事業環境に比較的合った水準ではないかと分析しています。
この試算から考えると、4万円台は長期投資を検討しやすい価格帯となる一方、再び7万円や10万円を目指すためには、現在の市場予想を上回る業績成長が必要です。
AI設備投資とメモリ価格はどのようにつながるのか
ハイパースケーラーの設備投資額とメモリ価格は別の数字ですが、両者には密接な関係があります。
設備投資が増えれば、AIサーバーやデータセンターの建設が進みます。AI向けの高性能サーバーには大量のメモリが必要になるため、需要が増え、メモリ価格も上昇しやすくなります。
一方、設備投資が減少すれば、メモリの単価がすぐに下がらなかったとしても、購入される数量は減少します。需要の減少が続けば、最終的にはメモリ価格にも下押し圧力がかかります。
このため、ハイパースケーラーの設備投資とメモリ市場は、中長期的にはおおむね同じ方向へ動く可能性があります。
キオクシアに投資する場合は、同社の決算だけを見るのではなく、Google、Amazon、Microsoft、Oracleなどの設備投資計画も確認する必要があります。
信用買いの増加がキオクシア株の重荷に
キオクシア株には、企業業績とは別に信用取引の需給という問題があります。
動画で示されたチャートでは、信用買い残が急速に膨らむ一方、信用売りや空売りはそれほど増えていません。
信用買いが多い銘柄では、株価が下落すると含み損を抱えた投資家が増えます。損失に耐えられなくなった投資家が売却したり、証拠金不足によって強制決済されたりすると、株価に追加の下押し圧力がかかります。
これに対し、空売り残高が多ければ、下落時に利益確定の買い戻しが入り、株価を支えることがあります。しかし、キオクシアでは信用売りが信用買いほど膨らんでいないため、買い戻しによる支えが弱くなります。
信用買いだけが増えた銘柄は、下落時に買いポジションの解消が続きやすく、株価が徐々に下値を切り下げる展開になりがちです。
キオクシアは6万円前後が戻り売りの壁になる可能性
直近3カ月の取引状況を見ると、キオクシアの空売りが多く積み上がった中心価格は約8万3000円とされています。
現在の株価が5万円前後であれば、空売り投資家には大きな含み益が発生しています。また、買い戻しが行われた平均価格は約6万9800円です。
一方、信用買いが多く入った価格帯は、約5万8000円と約6万5000円です。現在の株価がこれらを下回っているため、多くの信用買い投資家が含み損を抱えている可能性があります。
株価が5万2000円付近から反発しても、5万8000円から6万5000円へ接近すると、「利益を得たい」という買い手よりも、「損失が小さくなったところで逃げたい」という投資家の売りが増える可能性があります。
このような売りは「やれやれ売り」と呼ばれます。含み損に耐えていた投資家が、買値付近まで戻ったところで安堵して売却する動きです。
そのため、キオクシアは6万円前後が当面の上値抵抗帯になる可能性があります。株価が本格的に回復するためには、この価格帯に残っている売りを消化する必要があります。
韓国のSKハイニックス関連商品も値動きを不安定にする要因
半導体・メモリ市場では、日本株だけでなく、韓国のSKハイニックスなども激しい値動きを見せています。
韓国市場では、SKハイニックスに連動するレバレッジ商品が多く取引され、短期売買が活発になっています。レバレッジ商品は上昇時の利益を大きくできる反面、下落時には損失も拡大します。
こうした商品が増えると、現物株の値動き以上に投資家心理が振れやすくなり、メモリ関連株全体のボラティリティが高まることがあります。
キオクシアでも信用取引を利用した短期売買が集中しているため、業績から算出した妥当株価だけでは説明できない値動きが続く可能性があります。
株価が安定するためには、短期的な値幅取りを目的とした取引が減り、中長期の業績を評価する投資家が増える必要があります。
Microsoftのサプライチェーンから恩恵を受ける日本企業
ハイパースケーラーの設備投資拡大は、半導体メーカーだけでなく、その周辺に位置するさまざまな企業に影響します。
動画では、Microsoftのサプライチェーンが紹介されています。Microsoftの主要な仕入れ先には、NVIDIA、Hon Hai Precision Industry、SKハイニックスなどが並び、日本企業では村田製作所などが含まれています。
さらに、これらの1次サプライヤーが取引する企業まで広げると、シャープやソニーグループをはじめとする日本企業も登場します。
つまり、ハイパースケーラーの設備投資が増加した場合、その恩恵はGPUやメモリを製造する企業だけに限られません。電子部品、センサー、電源、通信機器、製造装置など、複数の段階を通じて日本企業へ波及します。
投資対象を検討する際には、AIという大きなテーマだけで判断するのではなく、サプライチェーンのどこに位置し、売上や利益にどの程度の影響があるのかを確認することが重要です。
村田製作所の現在株価はどこまで成長を織り込んでいるのか
Microsoftの1次仕入れ先として名前が挙げられた村田製作所についても、利益成長から妥当株価が試算されています。
動画で使用されたデータでは、村田製作所のROEは約8.8%、営業利益率は約15%、EPSは約127円です。利益水準は極端に伸びているわけではありません。
株価は7600円付近まで下落しているものの、この水準を正当化するためには、将来の大幅な利益成長が必要になります。
ハイパースケーラーの設備投資が初年度に約85%増加し、その恩恵を強く受けるという前提では、理論株価は約9000円となります。この強気シナリオであれば、7600円は相対的に安い水準です。
一方、利益成長を保守的に見積もると、理論株価は約5500円まで低下します。
5年後のEPSを約475円と想定しても、現在の127円から約4倍に増やす必要があります。9000円を正当化する場合には、5年後のEPSが800円台となり、現在の約7倍まで増加しなければなりません。
村田製作所はキオクシアほど投機的な値動きではないものの、現在の株価には相応の利益成長が織り込まれていると考えられます。
村田製作所の信用需給で注目される価格帯
村田製作所については、信用取引の規模がキオクシアほど大きくないため、株価への影響も比較的限定されています。
それでも、過去に空売りが多く入った価格帯として、8000円から9000円付近が注目されます。信用買いの中心価格は9600円前後です。
7000円付近にも信用買いが増加した形跡があるため、この水準が下値の支えになる可能性があります。ただし、7000円を明確に割り込むと、新たに買った投資家の損切りが出て、下落が加速することも考えられます。
上方向では8500円前後に空売りや過去の取引が集中しており、戻り局面の抵抗帯となる可能性があります。
任天堂の7300円は比較的説明しやすい株価水準
半導体株が売られるなかで相対的な強さを見せた銘柄の1つが任天堂です。
動画で示された任天堂の株価は約7300円です。業績を見ると、売上高は大きく伸びているものの、営業利益率は以前の約40%から約15%まで低下しています。
EPSも以前の400円台から、足元では約364円へ低下しました。売上高の増加が十分に利益へ結びついていない点は課題です。
EPSを400円台へ回復させ、その後5年間にわたって年率10%程度の利益成長を続けると仮定した場合、理論株価は約5800円にとどまります。この前提では、7300円は割安とはいえません。
一方、初年度に約20%成長し、その後は成長率が徐々に低下するシナリオでは、現在の7300円前後を説明できるようになります。
例えば、EPSが400円台から500円、550円、580円、600円と、5年間で約1.5倍に成長するのであれば、7300円という株価は極端に割高とはいえません。
AI・半導体関連株と比べると、任天堂に必要とされる利益成長率は比較的現実的です。相場全体が半導体株から内需株やゲーム株へ資金を移す局面では、選択肢の1つになり得ます。
SHIFTも現在の株価を説明できる成長率
金曜日の日経平均構成銘柄で上昇率1位となったSHIFTについても、将来利益から株価水準が分析されています。
動画内で示された株価は約743円です。EPSが現在の約33円から5年間で約88円まで増加すれば、理論株価は1000円前後になると試算されています。
利益成長率を年率25%程度と想定すると、現在の株価に近い評価になります。足元から5年間で利益が約2倍になるのであれば、現在の株価を正当化できる計算です。
任天堂と同様に、非現実的なほど高い成長率を前提としなくても説明できるため、過熱した半導体株と比較すると投資判断を行いやすい水準と考えられます。
ただし、成長企業の株価は将来の利益予想に強く依存します。利益成長が鈍化すれば、妥当株価も大きく下がる可能性があります。
今後の日本株で確認すべき3つのポイント
今後の日本株、とりわけ半導体関連銘柄の方向を判断するには、主に3つのポイントを確認する必要があります。
第1は、Google、Amazon、Microsoft、Oracleなどの決算で示されるAI設備投資計画です。設備投資額が市場予想を上回れば半導体株の反発材料になり、下回れば調整が長期化する可能性があります。
第2は、キオクシアをはじめとする半導体企業の利益予想です。株価が下落しても利益予想が維持されるのであれば、割安感は強まります。一方、株価下落に続いて利益予想も引き下げられれば、現在の価格が底値とは限りません。
第3は、信用取引の整理です。信用買い残が高水準のままでは、反発時に戻り売りが出やすくなります。出来高を伴って信用買いが整理され、需給が改善するまでは、値動きの不安定な状態が続く可能性があります。
急落後に投資する際の注意点
株価が短期間で30%以上下落すると、以前より非常に安く見えます。しかし、「高値から大きく下がった」という事実だけでは、買いの根拠として十分ではありません。
確認すべきなのは、現在の株価がどの程度の利益成長を織り込んでいるのか、その利益成長が現実的なのかという点です。
キオクシアの場合、4万円台であれば中間的な利益成長シナリオに近づきますが、7万円台や10万円台を正当化するには、AI設備投資とメモリ需要が長期間にわたって高い成長を続ける必要があります。
また、底値を正確に当てることは困難です。長期的な成長を期待して買う場合でも、1度に全額を投じるのではなく、価格帯を分けて購入する方法が考えられます。
短期的な自律反発を狙う場合は、6万円前後に存在するとみられる戻り売りを意識する必要があります。長期投資の場合は、四半期ごとの業績や設備投資計画を確認しながら、前提が崩れていないかを継続的に点検することが重要です。
まとめ
日経平均は先週1週間で約4%、1カ月では約10%下落し、半導体関連銘柄を中心に大きな調整が進みました。
キオクシアは7万7000円付近から5万2000円前後まで急落し、ドローダウンは最大で約32.8%に達しています。過去の急落局面では短期的な自律反発が観測されているものの、以前の高値を回復するまでには長い時間がかかる可能性があります。
利益成長から見たキオクシアの妥当株価については、強気シナリオで約7万3000円、現実的な中間シナリオでは約4万4000円、保守的なシナリオでは3万円前後という試算が示されました。5万円前後は3年程度の成長を織り込んだ水準と考えられます。
ただし、信用買い残が大きく積み上がっているため、5万8000円から6万5000円付近では、含み損を抱えていた投資家の戻り売りが出る可能性があります。
今後の最大の注目材料は、Google、Amazon、Microsoft、Oracleなどのハイパースケーラーが示すAI設備投資計画です。設備投資が拡大すれば半導体株には追い風となり、抑制されれば巨大IT企業自身の利益改善につながる可能性があります。
現在の相場は、日本株全体が一様に売られているというより、半導体株から任天堂やSHIFTなど、より現実的な利益成長で株価を説明できる銘柄へ資金が移動している局面とも捉えられます。
急落後は株価の安さだけで判断せず、将来のEPS、信用取引の需給、AI設備投資の持続性を確認することが重要です。短期的な反発と長期的な業績回復を区別し、自分の投資期間に合った判断を行う必要があります。


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