日経平均は年後半に下落するのか?来年8万8000円予想とAI・半導体相場の行方を徹底解説

本記事は、YouTube動画『マーケット長分析・日経平均の今後と長期投資で選ぶ日本株』の内容を基に構成しています。

日本の株式市場では、AIや半導体関連銘柄を中心に急速な上昇が続いた後、大幅な調整が発生しました。日経平均株価が短時間で大きく下落するなど、投資家の間では「すでに上昇相場は終わったのか」「今後さらに下落するのか」という不安が広がっています。

一方、動画では、短期的な調整リスクを警戒しながらも、来年の日経平均株価が8万8000円に達する可能性があるという非常に強気な見通しが示されました。

一見すると、短期的な弱気予想と長期的な強気予想は矛盾しているように思えます。しかし、その背景にはAIデータセンター投資、中国の政策サイクル、米国の選挙サイクル、半導体の供給動向、日本銀行の金融政策など、複数の要因が存在します。

ここでは動画の内容を基に、直近の相場環境、年後半の下落リスク、AI・半導体市場の変化、来年に向けた上昇シナリオ、そして今後注目すべき投資分野について詳しく解説します。

目次

日米の株式市場で調整が強まった背景

直近1カ月の株式市場では、日本株と米国株の双方で調整色が強まりました。

米国株は当初、利上げ観測の後退や好調な企業決算を支えに上昇し、ニューヨーク・ダウは最高値を更新しました。S&P500も高値圏で推移し、市場全体には楽観的な空気が広がっていました。

しかし、その後はイランをめぐる中東情勢への警戒が強まり、原油価格が上昇しました。原油高はガソリン価格や輸送費、製造コストなどを通じてインフレを再加速させる可能性があります。

インフレ懸念が高まると、米連邦準備制度理事会、いわゆるFRBが利下げに動きにくくなります。場合によっては利上げ観測さえ再浮上するため、金利上昇に弱いハイテク株や半導体株に売りが広がりました。

この流れは日本株にも波及しました。米国半導体株の下落に加え、中東情勢への警戒、韓国市場における規制強化などが重なり、日経平均株価は一時4000円を超える急落となりました。

近年の日経平均は、AIや半導体、データセンター関連銘柄の影響を強く受けています。そのため、一部の大型テクノロジー株に売りが集中すると、指数全体の下落幅も大きくなりやすい構造になっています。

日経平均8万8000円という強気予想の根拠

動画では、相場が大きく荒れているにもかかわらず、来年の日経平均株価が8万8000円に達する可能性があるとの見通しが示されました。

この予想を理解するためには、まず過去の日経平均の値動きに見られる「約3割上昇すると一度止まる」という傾向に注目する必要があります。

動画の解説によると、日経平均は一定の水準から約3割上昇した後、上昇が一服し、しばらく横ばいまたは調整に入る動きを繰り返してきました。

当初は6万8000円程度までの上昇が想定されていましたが、実際には6万8000円台を突破し、7万2000円台まで上昇しました。その原動力になったと考えられているのが、AIデータセンター需要の拡大です。

仮に短期的な調整で日経平均が5万円台まで下落する場面があったとしても、来年に再び約3割の上昇局面が訪れれば、6万8000円を起点として8万8000円前後が計算上の目標になります。

さらに、7万2000円台の高値から約3割上昇すると、9万4000円前後も視野に入ります。

もちろん、これは日経平均が一直線に上昇するという予想ではありません。短期的には大きな調整を挟みながらも、AIや半導体を中心とした設備投資が再び拡大すれば、来年には上昇トレンドへ戻る可能性があるというシナリオです。

「逆ディープシークショック」とは何か

日経平均が予想以上に上昇した理由として、動画では「逆ディープシークショック」という独自の表現が使われています。

2025年1月に注目されたディープシークショックでは、高性能なAIモデルを比較的小規模な計算資源で動かせる可能性が意識されました。

AIモデルが短期間で小型化・効率化されるのであれば、将来的に巨大なAIデータセンターはそれほど必要なくなるかもしれません。この見方が広がると、半導体メーカーやメモリーメーカーが工場を増設しても、将来は供給過剰になる恐れがあります。

そのため、半導体各社は無理に生産能力を増やさず、既存設備の範囲内で需要に対応しようとしていました。供給が抑制される一方で需要が増えれば、メモリー価格が上昇します。

その結果、パソコンやスマートフォン、ゲーム機などの価格まで押し上げられる可能性がありました。

ところが、その後の研究やAI開発の進展によって、AIの「知識」そのものは簡単には圧縮できないという認識が強まったと説明されています。

AIモデルを効率化できたとしても、より高度な知識を蓄積し、複雑な推論を行わせるには、依然として大規模な計算資源と大量のデータが必要です。

つまり、AIが進化するほどデータセンターの必要性が低下するのではなく、むしろ巨大なAIデータセンターが今後も増え続ける可能性があるということです。

この認識の変化が「逆ディープシークショック」です。

AIデータセンター需要が日本株を押し上げた

巨大なAIデータセンターが今後も必要になるとの見方が強まると、Amazon、Microsoft、Google、Oracleなどのハイパースケーラーによる投資拡大への期待が高まります。

ハイパースケーラーとは、世界規模で大規模なクラウドサービスやデータセンターを運営する企業を指します。

日本企業では、データセンター向け電線を扱うフジクラや、メモリーを手掛けるキオクシアホールディングスなどに対する期待が膨らみました。

AIデータセンターには、GPUやメモリーだけでなく、電線、光ファイバー、電源装置、空調設備、変圧器、建設資材など、幅広い製品が必要です。そのため、データセンター投資が拡大すると、半導体関連企業だけでなく、日本の製造業全体に恩恵が広がります。

従来は一部の値がさ半導体株が日経平均を押し上げる一方、TOPIXの上昇は比較的限定されていました。

しかし、データセンター投資の恩恵が電力機器、素材、ケーブル、建設設備などへ広がれば、日経平均だけでなくTOPIXも上昇しやすくなります。これは日本全体の成長率を高める要因となり、来年に向けた株高シナリオを支える可能性があります。

中国の共産党大会が来年の相場を支える可能性

来年を強気に見るもう1つの理由が、中国の政治・経済サイクルです。

中国では5年に1度、共産党大会が開催されます。共産党大会は単なる政治イベントではなく、党内の人事や昇進にも大きな影響を与えます。

中国共産党には非常に多くの党員がいるため、誰を昇進させるのかを判断するには、目に見える成果が必要になります。

現在の5カ年計画では、AIや半導体などの先端分野への集中投資が重要な政策課題に位置付けられています。このため、地方政府や関係企業は、共産党大会までにAI・半導体分野で成果を示そうとする可能性があります。

その結果、半導体設備やメモリーに対する中国の需要が増加し、日本を含むアジアの半導体関連企業に追い風が吹くという見方です。

実際、動画では、中国による半導体輸入が春頃から大きく増加していると指摘されています。

中国では、Moonshot AIの「Kimi K3」やAlibaba系のAIモデルなど、新しいサービスも次々に登場しています。これらは米国のAI企業にとって競争上の脅威になる一方、AI開発競争そのものを加速させる要因でもあります。

競争が激しくなれば、より高性能な半導体や大規模なデータセンターが必要になります。したがって、中国製AIの台頭は短期的に株価を下落させる材料になっても、中長期的にはAI関連投資を拡大させる可能性があります。

米国の選挙サイクルも来年の株高要因に

米国の政治サイクルも、来年の株式市場にとって重要です。

動画では、米大統領選挙の前年、つまり政権3年目は、米国株が比較的上昇しやすいと説明されています。特に共和党政権では、政権3年目の株価パフォーマンスが強い傾向があるとされています。

大統領選挙を控えた政権にとって、景気後退や株価の大幅下落は避けたい事態です。来年と再来年の経済成長率が悪化すれば、選挙で政権交代が起きる可能性が高まります。

そのため、政権は景気を支える政策を打ち出しやすく、株式市場にとっても追い風になりやすいという考え方です。

一方、今年は中間選挙の年に当たり、中間選挙の直前まで株式市場が調整するケースは珍しくありません。

通常、米国株には春から初夏に高値を付け、その後は秋まで調整する季節性があります。今年は政策への期待からピークがやや後ろにずれたものの、年後半は様子見姿勢が強まりやすいと分析されています。

つまり、今年の後半に調整し、来年の政権3年目に再上昇するというのが、動画で示された基本的な相場シナリオです。

年後半の底は8月・10月・年末の3つが候補

日本株の季節性を見ると、7月に高値を付け、その後に調整し、10月頃から持ち直すケースが多いとされています。

米国株は10月頃まで軟調になりやすい一方、日本株は8月頃までに下落が一巡し、その後は底固めに入る傾向があるとのことです。

今回の相場でも、日経平均は6月後半、TOPIXは7月上旬まで上昇しました。TOPIXが高値を付けた頃には、東証の騰落レシオが120%台に達していました。

騰落レシオとは、一定期間における値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の比率から、市場の過熱感を判断する指標です。一般的には120%を超えると買われ過ぎ、70%前後まで低下すると売られ過ぎと判断されます。

動画の試算では、値上がり銘柄数と値下がり銘柄数の推移から考えると、8月中旬頃に騰落レシオが底を付ける可能性があります。

また、最近の相場ではSQ週の月曜日に安値を付けるケースもあることから、8月のSQ週が最初の底値候補として挙げられました。

ただし、そこで完全に調整が終わるとは限りません。動画では、年後半の底値候補として次の3つの時期が示されています。

  • 8月のSQ週
  • 10月上旬
  • 年末

最初の反発が8月に起きても、その後に米国株や信用市場が悪化すれば、10月または年末に再び安値を試す可能性があります。

日経平均が6万円を割り込む可能性も

動画では、短期的な下落リスクについてかなり慎重な見方が示されています。

近年の日経平均は、一部のAI・半導体関連銘柄によって大きく押し上げられてきました。そのため、それらの銘柄が上昇分を吐き出すと、TOPIX以上に日経平均の下落が大きくなる可能性があります。

AIデータセンター関連株の上昇分が剥落した場合、日経平均が6万円を割り込む可能性があるほか、信用市場まで悪化すれば5万2000円前後まで下落するシナリオも完全には否定できないとされています。

ただし、この予想は確定的なものではありません。動画の解説者自身も「外れてほしい」としたうえで、考えられるリスクとして提示しています。

重要なのは、来年の強気予想だけを見て一括投資するのではなく、今年の年後半には大きな調整が発生する可能性も想定しておくことです。

米国の住宅価格下落でインフレは鈍化へ

米国市場については、秋以降に金融政策の支援が期待できると解説されています。

米国の住宅価格は前月比で3カ月連続の下落となっており、今後は家賃の伸びも鈍化する可能性があります。

米国の消費者物価指数において、家賃関連項目は非常に大きな割合を占めています。そのため、家賃の上昇率が低下すれば、インフレ率全体も押し下げられます。

ただし、家賃統計には反映まで時間がかかります。

米国の家賃調査では、地域を複数のブロックに分け、順番に調査します。すべての地域を一巡するまで約6カ月かかるため、統計上の家賃は事実上、6カ月移動平均に近い性質を持っています。

実際の家賃がすでに下がっていても、消費者物価指数にはすぐに反映されません。家賃の鈍化が統計上明確になるのは、秋以降、場合によってはさらに後になる可能性があります。

それまでの間は、原油価格や中東情勢によってインフレが再燃するリスクが残ります。

イラン情勢と原油価格が最大の不安材料

秋までの米国市場にとって、大きな不安材料となるのがイラン情勢です。

原油価格が上昇すると、米国のガソリン価格も上がります。家賃インフレが十分に低下していない段階でガソリン価格まで上昇すれば、FRBは金融緩和へ転じにくくなります。

動画では、1987年のブラックマンデーにも言及されています。

当時、アラン・グリーンスパンFRB議長は就任翌月に利上げを実施しました。その後、米国が護衛するタンカーへのイランの攻撃と米国による報復など、中東情勢も緊迫しました。

ブラックマンデーの原因は国際的な金融政策の不調和など複数ありますが、中東情勢も市場心理を悪化させる一因になった可能性があります。

今回も、家賃インフレの鈍化が確認される前に原油価格が大幅上昇すれば、FRBがタカ派姿勢を強め、株式市場が耐えられなくなる恐れがあります。

秋以降に家賃の鈍化が明確になれば、FRBは金融緩和へ動きやすくなります。しかし、それまでの期間は中東情勢に対して脆弱な相場が続く可能性があります。

日本銀行の金融引き締めが株式市場を圧迫

日本株にとっては、日本銀行の金融政策も重要な問題です。

日本銀行は利上げだけでなく、保有資産を減らす量的金融引き締めを進めています。動画によると、直近の1年間だけで日銀の総資産は約67兆円圧縮されました。

国債保有残高についても、長期間にわたって大幅な圧縮が進む計画になっています。

市場では補正予算や減税政策による国債発行の増加が長期金利上昇の原因として注目されがちです。しかし、日銀による数十兆円規模の国債保有縮小の方が、市場に与える影響は大きい可能性があります。

日銀の資産圧縮が進む時期と、日本の長期金利が上昇する時期には一定の関係が見られます。金利上昇は企業の借入コストを増やし、設備投資を抑制します。

動画で紹介された企業調査でも、これまでの利上げによって、約半数の企業にマイナスの影響が出ているとされています。

政府側も日銀の金融政策に対し、景気や市場の安定に配慮し、十分な説明責任を果たすよう求めているとのことです。

利上げは政府の成長戦略と矛盾する可能性

日本政府は今後、危機管理投資や成長投資を長期間にわたって進める方針です。設備投資が増えれば、生産能力が拡大し、売上や企業利益の増加につながります。

実際、日本企業の設備投資額と日経平均株価は、おおむね連動してきました。

しかし、実質長期金利が上昇すると、企業は設備投資に慎重になります。動画では、設備投資計画の伸び率がすでに鈍化し始めていると指摘されています。

日銀が実質長期金利を引き上げる政策を続ければ、政府が進める成長投資や危機管理投資と逆方向に作用する恐れがあります。

円安を止めるために利上げを行うべきだという意見もあります。しかし、金利上昇によって設備投資が減れば、日本企業の生産能力や輸出力が高まりません。

日本の設備投資額は1990年代以降、長期的に大きく増えていないとされます。輸出できる製品や生産能力が十分に増えなければ、円安になっても貿易収支が改善しにくくなります。

本質的な円安対策は、単に利上げすることではありません。緩和的な金融環境を維持しながら設備投資を増やし、日本企業の輸出力を高めることが重要だというのが動画の見方です。

政策相場への期待も後退しつつある

動画では、解散総選挙後の株高効果についても説明されています。

過去の相場では、衆議院解散から6カ月から8カ月程度、株価が上昇するケースが見られました。この経験則から、当初は今年7月または9月頃まで相場が上昇すると予想されていました。

しかし、内閣支持率の低下などを受け、政策への期待を背景とした相場が終わりに近づいている可能性があります。

日経平均の高値は6月、TOPIXの高値は7月となっており、すでに年内の高値を付けた可能性も否定できません。

今後、米国が金融緩和へ転じれば、日銀も金融引き締め姿勢を修正しやすくなります。ただし、その順番は米国が先になると考えられます。

米国の金利低下が先行すれば、日米金利差が縮小し、為替市場では円高が進む可能性があります。

株安が円高を引き起こす仕組み

外国人投資家は日本株を約400兆円保有しているとされます。そのすべてが為替リスクを無防備に抱えているとは考えにくく、一部は円安に備えた為替ヘッジを行っているとみられます。

仮に外国人投資家が100兆円分の為替ヘッジを行っている場合、日本株が上昇すれば保有資産額も増加するため、ヘッジ額を増やす必要があります。その際には追加の円売りが発生します。

つまり、株高が円売りを生み、円安がさらに日本株を押し上げる循環が形成されていた可能性があります。

ところが、日本株が下落すると状況は逆になります。保有資産額が減るため、為替ヘッジを縮小する必要が生じ、円を買い戻す動きが発生します。

このため、株価の下落と円高が同時に進む可能性があります。2024年8月にも、同様の現象が見られたと説明されています。

円高局面では、食品、小売、陸運などの内需関連株が相対的に強くなる可能性があります。しかし、これらの銘柄は日経平均への影響が小さいため、内需株が上昇しても日経平均全体は上がりにくい場合があります。

半導体の増産が価格下落を招く可能性

逆ディープシークショックによってAIデータセンター需要への期待が高まると、米国、韓国、中国のメモリーメーカーは一斉に設備投資を増やそうとします。

需要増加は本来、半導体企業にとって好材料です。しかし、各社が同時に増産すれば、供給量が急増し、メモリー価格の下落につながります。

特に中国では、YMTCやCXMTなどの半導体企業が資金調達や生産能力拡大を進める可能性があります。

中国の地方政府や企業が共産党大会までに成果を競えば、公的資金を背景として生産設備が急速に増えることも考えられます。

中国企業が製造を強化すると、価格競争が激しくなりやすくなります。長期的には半導体の普及を後押しする一方、短期的には既存メーカーの利益率を圧迫します。

NAND型フラッシュメモリーの価格には、すでに下落の兆しが見られると説明されています。

キオクシアなどのメーカーにとって、何もせずにいると市場シェアを失う恐れがあります。シェアが低下すると、研究開発費などの固定費を少ない販売数量で負担しなければならず、製品1単位当たりのコストが上昇します。

そのため、利益率が低下する可能性があっても、競争力を維持するためには設備投資を増やさざるを得ません。

韓国の規制強化が日本株急落の一因に

韓国では、半導体株を中心とするレバレッジ型ETFに対し、最低証拠金を3倍に引き上げる措置が決まったと説明されています。

韓国の半導体レバレッジETFは、実質的にSKハイニックスとサムスン電子の影響を強く受けます。証拠金の引き上げは、レバレッジ取引を抑制し、関連株への資金流入を弱める要因になります。

この規制が韓国市場の休日前に発表された一方、日本市場は翌日も取引が行われていました。しかも日本では3連休前だったため、投資家がリスクを減らす売りを急いだ可能性があります。

その結果、日経平均が一時4000円近く下落する異常な動きにつながったと分析されています。

一定程度はすでに株価へ織り込まれた可能性がありますが、規制が実施される8月5日頃までは、半導体株に対する様子見姿勢が続く可能性があります。

NVIDIAのRubin遅延疑惑に注意

動画で特に警戒されているのが、NVIDIAの次世代GPU「Rubin」の生産遅延です。

Rubinには、HBM4と呼ばれる高性能メモリーが搭載される予定です。HBM4はGPUの近くに配置され、高速で大量のデータを処理するために重要な部品です。

HBM市場ではSKハイニックスが高いシェアを持っています。しかし、同社が業績予想を下方修正する可能性や、HBM4の増産を抑制するとの情報が出ていると説明されています。

これが事実であれば、Rubin向け部品のサンプル出荷や量産が、当初の想定ほど進んでいない可能性があります。

新しいGPUの生産開始時に歩留まりが悪化すること自体は珍しくありません。

NVIDIAの過去のGPUでも、Ampere、Hopper、Blackwellなどの世代交代時には、少なくとも2四半期程度、製造側の利益率が悪化する傾向がありました。Blackwellでは、問題が1年以上続いた局面もあったとされています。

TSMCの利益率見通しが以前よりやや低いレンジに設定されていることからも、新製品の製造難度が上がっている可能性があります。

専門家の間では「新製品の遅れはいつものこと」との見方もあります。しかし、今回は過去と状況が異なる可能性があります。

AIデータセンター投資の鈍化は世界景気にも影響する

現在、NVIDIAのGPUはAIデータセンターで圧倒的なシェアを持っています。そのため、次世代GPUの供給が遅れると、NVIDIAだけでなく、AIデータセンター投資全体が鈍化する可能性があります。

かつては、1つの半導体製品の遅れが世界景気全体を左右することは限定的でした。しかし現在は、AIデータセンター投資が世界経済や株式市場を支える重要な柱になっています。

動画では、日本の輸出について、AIデータセンター関連以外がほぼ横ばいである一方、データセンター関連の輸出は大きく伸びていると説明されています。

半導体・電子部品、半導体製造装置、非鉄金属、ケーブル、電力機器、空調設備などを含めると、日本からの輸出のかなりの部分がデータセンター投資に関連しています。

もしNVIDIAの次世代GPU供給が遅れ、データセンター建設や設備導入が停滞すれば、日本の景気と株式市場も大きな影響を受けます。

クレジットスプレッドの悪化にも警戒

次世代GPUの生産遅延は、株価だけでなく信用市場にも影響を与える可能性があります。

動画では、投資適格債の中で信用力が比較的低いBAA格社債と国債の金利差、いわゆるクレジットスプレッドが紹介されています。

クレジットスプレッドとは、企業の信用リスクを反映した社債金利と、安全資産とされる国債金利との差です。

この差が拡大することは、投資家が企業の返済能力や景気の先行きに不安を感じ、より高い金利を要求していることを意味します。

Blackwellの生産問題が表面化した時期には、クレジットスプレッドも悪化しました。その後、生産改善への期待が高まると信用市場も回復しましたが、Blackwell Ultraなど新製品への移行時には、再び不安定な動きが見られました。

今後、Rubinの生産遅延によってAI投資が鈍化すれば、信用市場の悪化が年末まで続く可能性があります。

年末は企業や投資ファンドの資金繰りが厳しくなりやすい時期です。クレジットスプレッドの拡大が続けば、株式市場のリスクプレミアムも上昇し、日経平均の下落幅が大きくなる恐れがあります。

半導体製造装置株より電力設備株に資金が向かう可能性

NVIDIAの新製品供給が遅れる局面では、すべてのデータセンター関連株が同じ動きをするわけではありません。

東京エレクトロンやディスコなどの半導体製造装置株、アドバンテストやレゾナックなどの後工程関連株は、新製品の歩留まり悪化や生産遅延の影響を受けやすくなります。

フジクラや村田製作所なども、サーバー導入の遅れによる影響を受ける可能性があります。

一方、三菱電機、富士電機、明電舎、日立製作所など、データセンター向けの電源設備や電力インフラを提供する企業は、相対的に強くなる可能性があります。

データセンターの建物が完成しても、GPUサーバーの到着が遅れることはあります。しかし、電源設備や変圧器、空調設備などは、サーバーの到着前に設置できます。

そのため、半導体の供給が遅れても、データセンター建設そのものが続く限り、電力設備関連企業には需要が残ります。

今後は、割高感のある半導体株から、AIデータセンター需要の恩恵を受けるバリュー株へ資金が移る可能性があります。

AIを「作る側」から「使う側」へ注目が移る

新しいGPUは、従来製品より価格が高くても、処理速度が大幅に向上します。

仮にGPUの価格が2倍になっても、処理速度が4倍になれば、同じ作業を従来の4分の1の時間で完了できます。データセンターの利用料金が時間単位で決まる場合、実質的なコストは半分になります。

これは、AIデータセンターを運営する側の売上成長を鈍化させる可能性がある一方、データセンターを利用する企業にとっては大きなメリットです。

今後は、AIインフラを構築する企業だけでなく、そのインフラを利用してサービスを提供する企業にも注目が移る可能性があります。

特に有望とされているのが、AIエージェント、AIベンチャー、ロボティクス、フィジカルAIなどの分野です。

AIエージェントとは、人間から与えられた目的に沿って、自律的に情報を収集し、判断し、複数の作業を実行するAIです。

フィジカルAIとは、ロボットや自動運転車など、現実世界で動く機械とAIを組み合わせる技術です。

AI計算資源の利用コストが下がれば、こうした企業はより多くの実験や学習を行えるようになります。

自動運転やロボティクスへの恩恵

動画では、フィジカルAIの代表例として、Google系の自動運転タクシー「Waymo」が紹介されています。

自動運転技術は、現実の道路だけで学習させるには限界があります。実際の道路で事故を繰り返しながら学習することはできないためです。

そこで、仮想空間の中に道路や交通環境を再現し、膨大な距離を走行させます。仮想空間であれば、さまざまな事故や異常事態を安全に経験させることができます。

高性能なAIデータセンターを低コストで利用できるようになれば、こうしたシミュレーション学習をさらに拡大できます。

自動運転だけでなく、工場用ロボット、物流ロボット、建設機械、介護ロボットなど、現実世界で動くAIの開発にも追い風となります。

AI半導体の価格下落は半導体メーカーにとって利益率低下の要因になりますが、AIを使う企業にとっては成長機会になるのです。

小型株が見直される可能性

AIベンチャーや新興ロボティクス企業の多くは、小型株に分類されます。

これまでの相場では、大型のAI・半導体関連株に資金が集中し、小型株は取り残されてきました。しかし、今後は大型株から小型株へ資金が循環する可能性があります。

動画では、大型株の長期サイクルと小型株の相対的な強さの関係が紹介されています。

設備投資には約10年のサイクルがあり、大型株が底を打ってから約5年が経過すると、新興市場や小型株が大型株を上回り始める傾向があるとのことです。

さらに、10月にはTOPIXの制度改革が予定されており、一部の小型株がTOPIXに採用されやすくなる可能性があります。

指数への採用が期待される企業には、機関投資家や指数連動型ファンドからの買いが入りやすくなります。

まだ本格的な小型株相場には早い可能性もありますが、AIを活用する成長企業や、これまで上昇していなかった小型株を調整局面で探すことは、年後半の投資戦略の1つになります。

年後半はグロース株からバリュー株へ

日本株には、一定の季節性があると説明されています。

一般的に、2月頃から8月頃まではグロース株が相対的に強くなりやすく、8月頃から翌年2月頃まではバリュー株が優位になりやすい傾向があります。

9月末の配当権利取りや、11月末の配当再投資などが、バリュー株への資金流入を支えるためです。

グロース株とは、将来の高い成長が期待され、現在の利益に比べて株価が高く評価されている企業です。

バリュー株とは、利益や資産、配当などに比べて株価が割安と判断される企業を指します。

今年前半は、AI・半導体を中心とするグロース株が大きく上昇しました。しかし、8月以降は割高なテクノロジー株から、業績が安定した割安株へ資金が移る可能性があります。

特に注目されるのは、AIと無関係なバリュー株ではなく、AIデータセンター需要の恩恵を受けながら、株価評価が比較的割安な企業です。

電源設備、重電、インフラ、建設設備などは、その代表的な分野といえます。

投資家が今後確認すべきポイント

動画の内容を総合すると、年後半の投資では「AI相場が終わったか、続くか」という単純な判断では不十分です。

AIデータセンターの長期需要は強い一方、半導体メーカーの増産、次世代GPUの生産遅延、メモリー価格の下落などによって、短期的には関連株が大きく調整する可能性があります。

今後は、次のような点を確認する必要があります。

  • NVIDIAのRubinやHBM4が予定どおり量産されるか
  • SKハイニックスが業績見通しや設備投資計画を修正するか
  • NAND型フラッシュメモリーの価格下落が続くか
  • 中国のYMTCやCXMTが生産能力をどこまで増やすか
  • 米国のクレジットスプレッドが拡大するか
  • イラン情勢によって原油価格が上昇するか
  • 米国の家賃インフレが秋以降に鈍化するか
  • 日銀が利上げや資産圧縮の姿勢を修正するか
  • 日経平均とTOPIXの格差が縮小するか
  • グロース株からバリュー株、小型株への資金移動が起きるか

これらを確認しながら、特定のシナリオだけに賭けないことが重要です。

追加解説:来年強気でも今年の下落に注意すべき理由

来年の日経平均8万8000円という予想を聞くと、今すぐ株を買って長期間保有すればよいと考える人もいるでしょう。

しかし、仮に日経平均が7万円台から5万円台まで下落した場合、下落率は非常に大きくなります。最終的に8万8000円へ上昇したとしても、その途中で大きな含み損に耐えなければなりません。

特に信用取引やレバレッジ型商品を利用している場合、長期的な予想が正しくても、途中の下落で強制決済される可能性があります。

そのため、強気の長期見通しと短期的なリスク管理は、分けて考える必要があります。

現金比率を一定程度維持し、相場が下落した時に複数回に分けて買う方法も考えられます。8月、10月、年末という複数の底値候補がある以上、最初の下落で資金をすべて投入するのではなく、時間を分散することが有効です。

また、AI関連株だけに集中するのではなく、電力設備、内需、バリュー株、小型株などへ分散することも、相場変動への備えになります。

まとめ

動画では、直近の急落によって日経平均がすでに下落局面へ入った可能性がある一方、来年には8万8000円を目指す強い上昇相場が訪れる可能性も示されました。

来年を強気に見る理由は、中国の共産党大会に向けたAI・半導体投資の拡大、米国の大統領選挙前の政策支援、巨大AIデータセンター需要の継続などです。

一方、今年後半には複数のリスクがあります。

米国の家賃インフレが十分に低下する前に原油価格が上昇すれば、FRBがタカ派化する可能性があります。日本では日銀の利上げと資産圧縮が設備投資を抑制し、株式市場を圧迫する恐れがあります。

さらに、NVIDIAの次世代GPU「Rubin」の生産が遅れれば、AIデータセンター投資が鈍化し、日本の輸出や信用市場にも影響が広がる可能性があります。

短期的な底値候補は8月のSQ週、10月上旬、年末の3つです。AI・半導体株の調整が深刻になれば、日経平均が6万円を割り込むシナリオも否定できません。

その一方で、年後半はグロース株からバリュー株へ資金が移りやすくなります。三菱電機、富士電機、明電舎、日立製作所など、AIデータセンター関連の電力設備を手掛ける企業や、AIを活用する小型株、ロボティクス関連企業などに新たな投資機会が生まれる可能性があります。

重要なのは、AI相場の長期的な成長性と、短期的な供給過剰・生産遅延リスクを同時に見ることです。来年の強気シナリオだけに期待するのではなく、今年後半の大幅な値動きにも耐えられる資金管理と分散投資が求められます。

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