本記事は、YouTube動画『何が起きても絶対売るな、永久保有銘柄7選』の内容を基に構成しています。
2026年7月17日の日本株市場では、日経平均株価が大幅に下落し、投資家心理を示す日経平均ボラティリティー・インデックスも一時43まで上昇しました。市場参加者が、平常時を大きく上回る値動きを警戒したことを示しています。
ところが、同じ日に任天堂の株価は上昇する一方、別の主力株は4%下落しました。市場全体が崩れているように見えても、すべての企業が同じ理由で売られているわけではありません。
重要なのは、企業の業績悪化による下落なのか、それとも機関投資家による先物売りやヘッジ取引に巻き込まれた一時的な下落なのかを見極めることです。
この記事では、リクルートホールディングス、信越化学工業、東京海上ホールディングス、任天堂、HOYA、キーエンス、伊藤忠商事の7社を取り上げます。株価の下落率だけでなく、利益率、営業キャッシュフロー、競争優位性、信用取引の需給などを確認しながら、長期保有候補としての強みと注意点を詳しく解説します。
2026年7月の株価急落は企業価値の崩壊なのか
2026年7月17日、日経平均株価は6万4,141円まで下落しました。6月25日に記録した最高値の7万2,366円からは、約11%の下落です。
一般的に、最高値から10%以上下落した状態は「調整局面」と呼ばれます。一方で、市場全体が20%以上下落すると、本格的な弱気相場に入ったと判断されることが多くなります。
日経平均全体では約11%の下落にとどまっているものの、半導体株や成長株の一部はすでに20~30%下落しています。そのため、実際に保有している銘柄によっては、本格的な暴落に近い感覚を持った投資家も少なくありません。
今回の下落については、中東情勢、金利上昇、半導体株の調整などが主な原因として挙げられています。これらはいずれも重要な要因ですが、7月17日に売りが一段と加速した仕組みを理解するには、先物とオプションの動きにも目を向ける必要があります。
海外投資家の先物売りが下落を増幅させる仕組み
動画によると、直前の7月6日から10日までに、海外投資家は日本の現物株を約4,929億円、先物を約1兆90億円買い越していました。合計すると約1兆5,020億円の買い越しです。
一方、個人投資家は約423億円を売り越していました。この数字だけを見ると、海外投資家が日本株に強気で、個人投資家が弱気だったように見えます。
しかし、先物取引には現物株とは異なる役割があります。
先物は、特定の企業を1社ずつ選んで売買するものではありません。日経平均株価やTOPIXなどの指数を、大きな単位でまとめて売買する手段です。海外投資家が大量の現物株を保有した後に、地政学リスクや金利上昇への警戒が強まった場合、すべての現物株を売却する前に先物を売って値下がりリスクを抑えることがあります。
例えば、高価な商品を大量に店頭へ並べている商人が、突然の台風予報を聞いた場面を考えると分かりやすいでしょう。商品を1つずつ倉庫へ戻すには時間がかかります。そこで、ひとまず保険をかけて損失に備えます。
株式市場において、この保険に相当するものの1つが先物売りです。
先物売りが増えると、指数に連動するファンドや裁定取引も反応し、現物株まで機械的に売られることがあります。企業の決算書を読んでいないコンピューターが、指数の構成比率に従って優良企業まで売却するのです。
これが、短期的に企業価値と株価が乖離する仕組みです。
オプション市場の恐怖が売りを加速させる
7月17日には、日経平均ボラティリティー・インデックスが37まで上昇し、取引時間中には一時43をつけました。
これは、市場参加者が今後1か月ほどの値動きが非常に大きくなると考え、高い保険料を支払ってでも下落に備えようとしたことを意味します。
オプション市場で投資家の恐怖が強まると、プットオプションなどを売った証券会社は、自社の損失を抑えるために先物を売ってポジションを調整します。株価が下がるほど、追加の先物売りが必要になる場合もあります。
坂道で重い車が動き始めると、その重さによってさらに加速するようなものです。最初の株価下落がヘッジ売りを呼び、その売りがさらなる株価下落を招く連鎖が発生します。
したがって、日経平均が1日で4%下落したからといって、日本企業の価値が一斉に4%失われたとは限りません。先物とオプションを利用した防御的な取引が、値下がりを一時的に増幅した可能性があります。
ただし、すべての下落を需給の問題として片付けるのも危険です。業績悪化を株価が先に織り込んでいる場合もあるため、利益率、営業キャッシュフロー、競争優位性、信用買い残などを確認する必要があります。
第7位:リクルートホールディングス
第7位は、リクルートホールディングスです。
動画で示された2026年7月17日時点の株価は1万2,820円で、年初来高値の1万2,885円から1%未満しか下落していません。企業としての成長力は非常に高いものの、今回の暴落によって割安な水準まで調整した銘柄とは言いにくい位置です。
求人件数ではなく顧客単価の上昇が成長を支える
2026年3月期の営業利益は6,306億円、純利益は4,969億円でした。2027年3月期については、営業利益7,870億円、純利益6,230億円を計画しています。
注目すべきなのは、米国の採用需要が爆発的に増えたわけではないにもかかわらず、求人事業における顧客1社当たりの売上高が17%増加したことです。
リクルートの成長は、単純な求人件数の増加だけによるものではありません。企業がIndeedへ支払う金額が増えたことに加え、AIによる求職者と企業のマッチング効率が改善し、1件の採用から得られる収益が大きくなっています。
これは大きな競争力ですが、同時に注意点でもあります。企業が求人広告費を増やしても採用人数が伸びないと判断すれば、顧客単価の上昇が止まる可能性があるためです。
リクルートで確認したい数字
強気のシナリオは、顧客単価が15%以上伸び、求人事業の利益率が37%前後を維持する展開です。
反対に、顧客単価の伸び率が5%未満へ低下し、利益率が35%を下回る場合には注意が必要です。
リクルートは長期保有候補として質の高い企業ですが、株価が最高値圏にある以上、「良い会社だから今の価格でも安全」とは限りません。企業の質と株価の割安度を分けて考える必要があります。
第6位:信越化学工業
第6位は、信越化学工業です。
動画で示された株価は7,157円で、年初来高値の7,930円から約10%下落しています。信用倍率は約6倍で、極端に悪い状態ではないものの、信用買い残が軽いとはいえません。
信越化学は半導体材料だけの会社ではない
信越化学と聞くと、多くの投資家は半導体用シリコンウエハーを思い浮かべるでしょう。しかし、2026年3月期の電子材料事業の売上高が約1兆158億円であるのに対し、塩化ビニルを中心とする生活環境基盤材料事業の売上高も約9,814億円あります。
つまり、2つの事業規模はほぼ同じです。
AI・半導体向け材料の需要が伸びても、塩化ビニルの採算が悪化すれば、会社全体の利益は思うように増えません。実際に売上高は2兆5,739億円とほぼ横ばいでしたが、営業利益は6,352億円と14%減少しました。
売上高が減っていないにもかかわらず利益が減ったということは、販売数量だけでなく、製品価格、原材料費、工場の稼働率、製品構成などが利益を左右していることを示しています。
5,000億円規模の自社株買いをどう評価するか
信越化学は前期に5,000億円規模の自己株式取得を実施しました。自社株買いによって発行済み株式数が減れば、1株当たり利益を押し上げる効果が期待できます。
ただし、本業の利益が減少している間に自社株買いが株価や1株当たり利益を支えている場合、資本還元が一巡した後に何が残るのかを確認しなければなりません。
強気のシナリオは、半導体材料の売上高が10%以上伸び、塩化ビニル事業の利益率も底打ちする同時回復です。
弱気のシナリオは、半導体顧客の在庫調整が長引き、塩化ビニルの採算も改善しない展開です。
長期投資家が警戒したい目安としては、全社営業利益率が20%を下回ること、半導体材料部門が2四半期連続で減収になること、在庫が3四半期連続で増えることが挙げられます。
第5位:東京海上ホールディングス
第5位は、東京海上ホールディングスです。
動画で示された株価は7,526円で、年初来高値の8,038円から約6%の下落です。予想配当利回りは約3%で、2027年3月期の年間配当は245円が計画されています。
2026年3月期の純利益は9,804億円で、海外保険事業の利益も5,000億円を超えています。国内市場だけに依存せず、北米を中心に利益源を分散していることが強みです。
保険株では金利より自然災害が重要になる
保険株は、一般的に金利上昇の恩恵を受けやすいと考えられています。保有する債券などの運用利回りが上昇し、運用収益の改善が期待できるためです。
しかし、東京海上の短期的なリスクを考える場合、金利だけでなく自然災害にも注意する必要があります。
動画によると、会社は国内と海外を合わせて約2,000億円の自然災害損失を想定しています。ここで重要になるのが、保険料収入に対する保険金と経費の割合を示す「コンバインドレシオ」です。
簡単にいえば、100円の保険料を集めるために、保険金の支払いと経費で何円を使ったかを示す数字です。
コンバインドレシオが95%以下であれば、自然災害が発生しても保険引受事業から利益を残しやすくなります。反対に、自然災害損失が想定の2倍を超え、コンバインドレシオが100%を上回れば、一時的な利益悪化に注意が必要です。
信用倍率は約14倍とされ、短期的な需給は軽くありません。長期保有候補として見る場合は、配当利回りだけでなく、自然災害損失と保険引受利益を継続的に確認することが重要です。
第4位:任天堂
第4位は、任天堂です。
動画で示された株価は7,294円で、年初来高値の1万890円から約33%下落しています。今回取り上げられた7銘柄の中では、最も大きく調整した銘柄です。
一方、信用買い残は約1,387万株、信用倍率は約20倍とされています。株価の調整は進んでいますが、信用取引の需給には依然として重さが残っています。
Nintendo Switch 2で売上高は増えたが利益率は低下
2026年3月期は、Nintendo Switch 2の発売により、売上高が2兆3,130億円と約99%増加しました。営業利益も3,601億円と28%増加しています。
これだけを見ると大成功ですが、営業利益率は24%から16%へ低下しました。
新型ゲーム機の発売初期には、本体の部品、製造設備、物流、広告宣伝などに多額の費用がかかります。まずはハードを広く普及させることが優先されるため、本体1台当たりの利益は必ずしも高くありません。
任天堂が本格的に利益を伸ばすのは、普及したゲーム機に利益率の高い自社ソフト、追加コンテンツ、オンラインサービスなどが積み上がる段階です。
値上げにはブランド力と販売減少の両面がある
2027年3月期には、メモリ価格や関税などの影響として約1,000億円が織り込まれています。日本国内の本体価格も、4万9,980円から5万9,980円へ変更されたと動画では説明されています。
値上げには2つの側面があります。価格を引き上げても購入者がついてくるのであれば、任天堂のブランド力を示す材料になります。
しかし、値上げによって本体販売台数が減れば、ゲーム機の普及速度が鈍ります。本体の普及が遅れると、将来のソフト販売やオンライン収入にも影響が及びます。
強気のシナリオは、年間販売台数が2,300万台以上のペースを維持し、ソフト装着率が上昇し、営業利益率が18%以上へ回復する展開です。
弱気のシナリオは、値上げによって本体販売が鈍化し、営業利益率が15%を下回る展開です。
信用倍率が約20倍ということは、信用売り1株に対して信用買いが約20株存在する状態です。株価が反発すると、含み損から解放された信用買いの投資家が売却するため、戻り売りの壁が形成される可能性があります。
ただし、日経平均が4%下落した7月17日に任天堂株は上昇しました。1日だけの値動きで底打ちを判断することはできませんが、悪材料に対する株価の反応が弱くなり始めた可能性はあります。
任天堂を長期保有する場合には、本体販売台数だけでなく、営業利益率、ソフト装着率、デジタル売上高、信用倍率の4つを確認することが重要です。
第3位:HOYA
第3位は、HOYAです。
動画で示された株価は2万5,215円で、年初来高値の3万400円から約17%下落しています。
HOYAは、メガネレンズ、コンタクトレンズ、医療機器に加え、半導体製造に使用されるマスクブランクスやHDD用ガラス基板も展開しています。医療と半導体という異なる成長分野を同時に抱える珍しい企業です。
一時的な利益と本業の利益を分けて考える
2026年3月期は大幅な増益を記録しましたが、動画では、その増益をすべて本業の成長と考えると実態を見誤る可能性があると指摘しています。
会社の説明によると、利益には大きな一時的要因が含まれていました。通常の営業活動から得た利益も2桁増益となっていますが、表面的な利益成長率よりは緩やかです。
この違いは非常に重要です。
株式市場は、決算発表時に示される大幅増益という見出しを先に評価します。しかし、翌年度に一時的な利益がなくなると、本業が悪化していなくても「成長が急停止した」ように見えることがあります。その数字の見え方によって、株価が売られる可能性があります。
医療・半導体・余剰資金という3つのエンジン
HOYAは豊富な現預金を保有しており、今後約3年間で余剰資金を自社株買いなどによって段階的に還元する方針とされています。
本業の成長率が多少鈍化しても、発行済み株式数が減れば、1株当たりの企業価値は支えられます。
強気のシナリオは、ライフケア事業が7%以上、情報・通信事業が10%以上伸び、本業ベースの利益率が30%以上を維持する展開です。
弱気のシナリオは、本業の成長率が5%未満へ落ち、自社株買いなどの資本還元も鈍化する展開です。
HOYAの本当の魅力は、一時的な大幅増益ではありません。医療分野の安定需要、半導体材料の成長、豊富な余剰資金という3つのエンジンを持っていることです。
第2位:キーエンス
第2位は、キーエンスです。
動画で示された株価は7万880円で、年初来高値の8万4,170円から約16%下落しています。信用倍率は約2倍で、今回取り上げられた銘柄の中では比較的需給が軽い状態です。
2026年3月期の売上高は1兆692億円、営業利益は5,958億円、純利益は4,452億円でした。営業利益率は約51%です。
100円の商品を販売すると、営業段階で約51円が利益として残る計算です。製造業としては異例の高収益体質といえます。
キーエンスはセンサーではなく生産性を売っている
キーエンスの競争力は、センサーや測定機器などの製品そのものだけではありません。
営業担当者が顧客の工場へ入り、どの工程を自動化すれば不良品が減り、作業時間を短縮できるかを提案します。顧客企業は単なる機械ではなく、生産性の改善に対してお金を支払っています。
そのため、一般的な製造業と比較して価格競争に巻き込まれにくく、高い利益率を維持しやすいのです。
営業利益率51%でもROEが約14%にとどまる理由
キーエンスの営業利益率は約51%ですが、ROEは約14%です。
非常に高い利益率を持つにもかかわらず、資本効率が飛び抜けて高く見えない理由は、自己資本比率が約95%あり、巨額の現金を抱えているためです。
事業そのものは超高収益ですが、事業に使われていない現金まで自己資本に含まれるため、会社全体のROEが低く見えます。
これは弱点であると同時に、将来の可能性でもあります。増配、自社株買い、成長投資などによって余剰資金の使い道が変われば、利益額が同じでもROEが上昇し、株式市場での評価が変わる可能性があります。
現在の株価下落は、工場自動化における競争力が壊れたというより、金利上昇によって高いPERを維持しにくくなった影響が大きいと考えられます。
金利が上昇すると、将来得られる利益の現在価値が低く計算されるため、高PERの成長株ほど売られやすくなります。
強気のシナリオは、売上高が8%以上伸び、高い営業利益率を維持しながら、海外売上高も10%以上増加する展開です。
弱気のシナリオは、売上高成長率が5%未満となり、営業利益率が48%を下回る展開です。
キーエンスは、企業の競争優位性が壊れた下落と、評価倍率だけが低下した下落の違いを考えるうえで、代表的な銘柄といえるでしょう。
第1位:伊藤忠商事
第1位は、伊藤忠商事です。
動画で示された株価は1,903円で、年初来高値の2,286円から約17%下落しています。予想PERは約11.4倍、信用倍率は約12倍とされ、短期的な需給は必ずしも軽くありません。
2027年3月期には純利益9,500億円を計画し、年間3,000億円以上の自社株買いも予定しています。
伊藤忠商事の利益は資源価格だけでは決まらない
伊藤忠商事の強みは、総合商社でありながら、利益を資源事業だけに依存していないことです。
食料、繊維、住生活、情報・金融、ファミリーマートなど、消費者の日常生活に近い非資源事業から多くの利益を得ています。原油や鉄鉱石などの商品価格が下落しても、すべての利益が同時に失われる構造ではありません。
ただし、前期には有価証券関連の利益が大きく増えたため、表面的な純利益をすべて毎年繰り返せる本業の利益と考えるのは危険です。
会計上の利益より営業キャッシュフローを重視
動画が伊藤忠商事を第1位とした大きな理由は、営業キャッシュフローが1兆円を超える水準にあることです。
会計上の利益だけでなく、事業活動から実際に多くの現金が入っていることを示しています。配当や自社株買いを継続するためには、帳簿上の利益以上に現金を生み出す力が重要です。
強気のシナリオは、基礎収益を構成する事業が増益を続け、純利益9,500億円の計画に対する進捗率が上期で50%を超え、自社株買いも予定どおり進む展開です。
弱気のシナリオは、中国関連投資の減損、商品価格の下落、円高などが重なり、利益計画が大幅に下方修正される展開です。
信用倍率が高ければ、株価反発時に戻り売りが出る可能性があります。しかし、信用取引による需給の悪さが永遠に続くわけではありません。
事業から現金を生み、自社株買いによって発行済み株式数を減らし、配当を増やせる企業には、時間の経過とともに1株当たり価値を高める力があります。
伊藤忠商事を見る際には、原油価格だけではなく、基礎収益、営業キャッシュフロー、非資源事業の利益、自社株買いの進捗を確認する必要があります。
7銘柄の強み・弱み・機会・脅威
今回取り上げた7社は、いずれも異なる形の価格決定力を持っています。
任天堂には世界的な知的財産があります。キーエンスは工場の生産性改善、HOYAは医療と半導体材料、伊藤忠商事は非資源事業と生活者との接点、東京海上は保険引受能力、信越化学は素材分野、リクルートは人材マッチングに強みがあります。
また、景気変動の影響を受けながらも、現金を生み出す能力が高いことも共通点です。特に伊藤忠商事とキーエンスは、会計上の利益を裏付ける財務基盤と現金創出力を持っています。HOYAと信越化学には、大規模な資本還元を実施できる余地があります。
一方で、7社の多くは企業の質が市場で広く知られています。そのため、PERやPBRなどの評価倍率が高くなりやすく、金利上昇局面では事業が悪化していなくても株価が下落します。
さらに、任天堂、伊藤忠商事、東京海上、HOYAなどは、信用買い残の重さに注意が必要です。短期的に株価が反発しても、含み損を抱えていた投資家の売りが出るため、上値が抑えられる可能性があります。
暴落は優良企業を安く買う機会にもなる
市場全体が先物主導で売られると、決算内容とは無関係に優良企業まで巻き込まれます。
任天堂では悪い業績予想が株価に相当程度織り込まれ、HOYAでは一時的利益への警戒が進み、キーエンスでは高PERの修正が起きています。
悪材料が株価には織り込まれていても、企業の長期的な価値まで失われていないのであれば、時間を味方につけられる可能性があります。
ただし、「有名な優良企業が下がったから買う」という判断では不十分です。市場が織り込んでいる悪材料と、まだ織り込んでいないリスクを分けて考える必要があります。
今後警戒すべき主なリスク
今回の7銘柄に影響する主なリスクとして、日銀の追加利上げ、米国金利の高止まり、円高、中国景気の悪化、自然災害、関税、部材価格の上昇などが挙げられます。
さらに、最も見えにくいリスクは、企業業績の悪化ではなく、投資家の期待が高すぎることです。
良い決算を発表しても株価が上がらない場合、市場がすでに次の成長まで織り込んでいる可能性があります。企業が成長を続けていても、期待されたほどではなければ株価は下落します。
永久保有候補とは、株価が下がったら無条件で持ち続ける銘柄ではありません。競争優位性が維持され、利益率とキャッシュフローが保たれ、資本配分に問題がない限り、短期的な恐怖だけで売却しない銘柄です。
今後考えられる3つの相場シナリオ
金融政策通過後の正常化シナリオ
1つ目は、米国のインフレ率が鈍化し、日銀も追加利上げを急がず、市場のボラティリティーが低下する展開です。
この場合、先物やオプションによる保険需要が減り、調整を受けたHOYA、任天堂、リクルートなどへ資金が戻る可能性があります。
特に、企業業績が維持されているにもかかわらず、需給要因だけで下落した銘柄は、相場の正常化とともに見直されやすくなります。
企業間の選別が進むシナリオ
2つ目は、株価指数全体は横ばいで推移するものの、決算内容によって企業間の格差が拡大する展開です。
この場合、表面的な売上高や利益だけでなく、それぞれの企業で本当に重要な数字を確認する必要があります。
任天堂では本体販売台数より営業利益率、信越化学では半導体材料だけでなく塩化ビニルを含めた全社利益、東京海上では金利より自然災害損失、リクルートでは雇用者数より顧客1社当たり売上高が重要です。
同じ増収増益決算でも、利益の中身によって株価の反応は正反対になる可能性があります。
2段下げシナリオ
3つ目は、日米の金利がさらに上昇し、地政学リスクや商品価格の変動が重なり、海外投資家が先物を利用して保有リスクを大幅に減らす展開です。
この場合、企業業績が良好でも株価はさらに下落します。高PER銘柄では評価倍率が縮小し、信用買い残の多い銘柄では追証や投げ売りが重なる可能性があります。
そのため、企業の質が高いからといって、短期的な下落余地がなくなったとは限りません。
長期投資家は底値を1点で当てようとしない
長期投資家にとって重要なのは、底値を1点で当てようとしないことです。
将来の株価を正確に予測することはできません。1度の売買ですべての判断を終わらせるのではなく、金融政策イベントの前後、主要決算の発表後、信用需給が改善した時、市場全体がさらに下落した時など、複数の時点に判断を分ける考え方が有効です。
また、銘柄数を増やすだけでは十分な分散になりません。株価が動く理由そのものを分散する必要があります。
例えば、任天堂とキーエンスだけを保有すると、成長株と金利変動の影響に偏ります。伊藤忠商事や東京海上を組み合わせれば、非資源事業や保険事業という異なる利益源を加えられます。
HOYAと信越化学はともに半導体に関係していますが、HOYAには医療、信越化学には塩化ビニルという別の収益源があります。
7銘柄で継続的に確認したい数字
長期保有では、株価を毎日見ることよりも、保有の前提となる数字を決めておくことが重要です。
任天堂では営業利益率18%への回復と信用倍率、キーエンスでは売上高成長率8%と営業利益率50%前後、HOYAでは本業ベースの利益率30%と資本還元の進捗を確認します。
伊藤忠商事では純利益9,500億円の計画に対する進捗と営業キャッシュフロー、東京海上ではコンバインドレシオ95%と自然災害損失、信越化学では全社営業利益率20%と在庫動向、リクルートでは顧客単価15%の成長と求人事業の利益率37%前後が注目点です。
株価が下がったという理由だけで安心せず、株価が上がったという理由だけで企業を信頼しない姿勢が必要です。決算の数字と需給の数字が、同じ物語を示しているかを確認することが大切です。
まとめ
2026年7月17日のような市場急落時には、優良企業も先物売りやオプション取引によるヘッジの影響を受け、決算内容とは関係なく売られることがあります。
しかし、株価下落のすべてが一時的な需給要因とは限りません。業績悪化、利益率の低下、過大な市場期待、信用買い残の増加などが原因になっている場合もあります。
今回取り上げた7銘柄は、それぞれ異なる競争優位性を持っています。
リクルートホールディングスは人材マッチング、信越化学工業は半導体材料と生活環境基盤材料、東京海上ホールディングスは国内外の保険引受、任天堂は世界的IP、HOYAは医療と半導体、キーエンスは工場自動化と生産性改善、伊藤忠商事は非資源事業と強いキャッシュフローが魅力です。
ただし、「永久保有」とは、何が起きても目を閉じて持ち続けることではありません。何が起きたのかを数字で確認し、競争優位性、利益率、キャッシュフロー、資本配分といった保有の前提が壊れていない限り、市場の恐怖だけで手放さないという意味です。
反対に、保有の前提が崩れた場合には、かつて優良企業だったという過去の評価に固執してはいけません。
冷静な投資判断とは、常に強気でいることではありません。上昇シナリオと下落シナリオの両方を想定し、どの数字が出たら判断を変えるのかを、相場が荒れる前に決めておくことです。
なお、本記事は動画内容の紹介を目的としたものであり、特定銘柄への投資を推奨するものではありません。実際に投資を行う場合は、各社の最新の決算資料や適時開示を確認し、自身の判断と責任で行う必要があります。


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