本記事は、YouTube動画『第3次オイルショックが本格的に始まっている』の内容を基に構成しています。
原油価格が再び1バレル100ドル前後まで上昇し、世界経済では「第3次オイルショック」への警戒が強まっています。
今回の原油高は、単に中東情勢への不安から価格が一時的に上昇しているだけではありません。ホルムズ海峡を経由する原油輸送の停滞、サウジアラビアのパイプラインへの攻撃、各国の石油備蓄の減少など、供給体制そのものが不安定になっている点が大きな問題です。
その一方で、世界最大の原油輸入国である中国は、原油輸入を大幅に減らしながら経済活動を維持しています。動画では、この中国の動きが原油市場の需給を緩和し、結果として世界的な景気後退を抑える役割を果たしたと解説しています。
ただし、中国の原油備蓄量や行動の意図については推計や解釈を含みます。中国が世界経済を意図的に救った、あるいは原油市場を新たな武器として利用したと断定するのではなく、考えられるシナリオの1つとして見る必要があります。
過去のオイルショックが世界経済に与えた影響
原油価格の急騰が警戒される理由を理解するには、過去のオイルショックを振り返る必要があります。
1973年に始まった第1次オイルショックでは、中東の産油国が原油の供給を絞ったことなどにより、原油価格が短期間で約4倍に上昇しました。エネルギー価格の高騰は製造、輸送、発電など幅広い分野に波及し、世界的なインフレと景気悪化を引き起こしました。
1979年のイラン革命をきっかけとした第2次オイルショックでも、原油価格は大幅に上昇しました。動画では、この時期にS&P500が高値から27.1%下落したと説明しています。
原油はガソリンだけでなく、電力、航空、物流、化学製品、農業など、現代経済のさまざまな分野で利用されています。そのため、原油価格が上がると企業のコストが増え、最終的には商品やサービスの値上げとして家計にも影響します。
さらに、インフレが加速すれば中央銀行は利上げを迫られます。金利上昇によって企業の資金調達や住宅ローンの負担が重くなり、株式市場にも下落圧力がかかります。
2026年の原油高は過去と何が違うのか
動画では、2026年9月に原油価格が再び1バレル100ドルを超えたことを取り上げています。
2022年のロシアによるウクライナ侵攻時にも原油価格は一時120ドル前後まで上昇しましたが、その後は60ドル台まで下落しました。動画では、過去の原油高について、戦争への不安や一時的な需給逼迫が価格を押し上げた側面が強かったと説明しています。
これに対して今回は、原油を運ぶ経路や供給設備そのものが影響を受けています。
世界の原油・石油製品の重要な輸送ルートであるホルムズ海峡では、中東情勢の悪化によって輸送量が大幅に減少しました。2025年には1日平均約2,000万バレルの原油・石油製品が同海峡を通過しており、これは海上輸送される世界の石油の約25%に相当します。
ただし、動画内の「日量約2,000万バレルが遮断された」という表現は、海峡を通過していた全量と、実際に失われた供給量を同一視している可能性があります。迂回輸送や追跡されにくい航行も行われており、すべての供給が完全に止まったわけではありません。
それでも中東からの輸出が大幅に減ったことは事実であり、原油価格だけでなく、タンカー運賃や保険料、輸送期間にも影響が広がっています。
各国は戦略石油備蓄を放出
供給不足に対応するため、各国は緊急時に備えて保有していた戦略石油備蓄を市場に放出しました。
国際エネルギー機関(IEA)の加盟国は、2026年3月に合計4億バレルの石油を市場へ供給することを決定しました。IEA創設以来、最大規模の協調放出です。2022年のロシアによるウクライナ侵攻時に実施された放出を大きく上回ります。
動画では、サウジアラビアもホルムズ海峡を迂回する東西パイプラインを利用し、供給の穴を埋めたと説明しています。しかし、このパイプラインも攻撃を受けて一時停止するなど、不安定な状況が続きました。
戦略石油備蓄の放出は、短期的な供給不足を緩和する有効な手段です。ただし、備蓄には限りがあります。取り崩しを続ければ、次に大きな供給障害が起きた際の余力が小さくなります。
このため、備蓄放出だけでは根本的な解決にならず、あくまで代替供給網を整えるまでの時間を稼ぐ政策だと考える必要があります。
中国が原油輸入を大幅に減らした理由
世界各国が原油を確保しようとするなか、中国は反対に輸入を減らしました。
中国は世界最大の原油輸入国です。動画によると、2000年代初頭に日量約150万バレルだった原油輸入は、その後約20年で日量1,100万バレル規模まで拡大しました。
ところが2026年に入ると、中国の原油輸入量は急減しました。特に5月から6月には、紛争前の日量約1,200万バレルから800万バレル未満まで減ったと報じられています。輸入減少分の一部はブラジルなど別地域からの調達や国内備蓄によって補われ、残りは石油消費そのものの減少によって吸収されたとみられています。
日本の原油輸入量を上回る規模の需要が短期間で市場から消えれば、世界の需給は大きく緩みます。供給量が減少している局面で中国の買い付けまで従来どおり続いていれば、原油価格はさらに上昇していた可能性があります。
中国が輸入を減らせた大きな理由として挙げられているのが、長年積み上げてきた原油備蓄です。
中国の原油備蓄は正確な規模が分からない
動画では、中国の原油備蓄を約14億バレルと紹介しています。
ただし、中国政府は備蓄量の全容を定期的に公表していません。そのため、14億バレルという数字は中国政府の公式発表ではなく、輸入量、国内生産量、精製量、輸出量、地上タンクの衛星画像などから算出された推計値です。米国エネルギー情報局も、中国が在庫データを公表していないため、公式統計と第三者データを組み合わせて推計しています。
推計には幅があり、ロイターが報じた数字では約11億7,000万バレル、別の分析では約14億バレルとされています。したがって、14億バレルを確定した数字として扱うのは適切ではありません。
それでも、中国が世界最大級の原油在庫を持ち、今回の供給危機に対する大きな緩衝材として利用した可能性は高いとみられます。
中国では電気自動車の普及や産業の電化が進んでいるため、輸入減少分をすべて備蓄で補ったわけでもありません。石油への依存度を少しずつ下げてきたことも、危機への耐性につながっています。
中国は制裁対象国から割安な原油を調達
動画では、中国が原油備蓄を増やせた背景として、ロシアやイランからの割安な原油調達を挙げています。
米国の制裁対象となったロシアやイランは、通常の国際市場で原油を販売しにくくなりました。そこで中国は、人民元による決済や、船舶の所有・航路を分かりにくくしたタンカーネットワークなどを利用し、両国から原油を買い付けてきたとされています。
売り手側は買い手を選びにくいため、市場価格よりも安い価格を受け入れざるを得ません。その結果、中国は割安な原油を調達しながら、国内在庫を増やすことができました。
動画では、この仕組みを「ドル体制の外側に作られた原油備蓄」と表現しています。
ペトロダラー体制とは何か
中国の動きを理解するうえで重要になるのが、石油取引と米ドルの関係です。
1970年代以降、国際的な石油取引の多くは米ドルで行われてきました。原油を必要とする国は、まず自国通貨を米ドルに交換し、そのドルで原油代金を支払います。
世界中で原油が必要とされる限り、米ドルへの需要も生まれ続けます。この関係は一般に「ペトロダラー体制」と呼ばれ、米ドルの基軸通貨としての地位を支えてきた要因の1つです。
ただし、米国とサウジアラビアの単一の正式契約によって、世界の石油がすべてドル決済になったという単純な構図ではありません。米国の金融市場の規模、ドルの流動性、貿易金融、為替ヘッジのしやすさなど、複数の要因が現在の体制を支えています。
中国が人民元決済を増やしているとしても、それだけでドル体制が直ちに終わるわけではありません。世界の取引通貨や準備通貨が入れ替わるとすれば、数十年単位の長い変化になると考えられます。
中国は需要側から原油市場を動かせるのか
1973年の第1次オイルショックでは、産油国が供給を絞ることによって世界経済に大きな影響を与えました。これは、供給側から原油を「武器化」した例といえます。
一方、中国は世界最大の輸入国として、買い付け量を増減させることで需給に影響を与えられます。
動画では、これを「需要側からの石油兵器」と表現しています。中国が輸入を減らせば国際市場の需要が減り、逆に備蓄を積み増すため大量に買えば価格上昇要因になります。
もっとも、今回の輸入削減が地政学的な影響力を示すために計画されたものだったのか、価格上昇への対応や国内需要の減少によるものだったのかは断定できません。
中国にとって世界的な景気後退を防ぐことには経済合理性があります。中国は世界の製造業で大きな割合を占めており、海外需要が落ち込めば輸出産業も打撃を受けるためです。
つまり、中国が原油輸入を減らして世界の需給を緩和したとしても、それは善意というより、自国経済を守る行動が結果として世界経済の下支えにもなったと考える方が自然です。
中国国債の利回り低下は信頼上昇を意味するのか
動画では、原油危機後に米国、英国、ドイツ、日本などの長期国債利回りが上昇する一方、中国の10年国債利回りが低下した点に注目しています。
国債は買われると価格が上がり、利回りが低下します。そのため、中国国債の利回り低下を「資金が中国を新たな避難先として選び始めた可能性」と解釈しています。
ただし、国債利回りは国への信頼だけで決まるわけではありません。
景気見通し、インフレ率、中央銀行の金融政策、国内の資金需要、銀行規制、資本移動規制なども影響します。中国国債の利回り低下には、国内景気の弱さや金融緩和への期待が反映されている可能性もあります。
したがって、「中国国債が買われたから、米国に代わる安全資産になった」とまでは断定できません。主要国と中国の金利が異なる方向に動いたという事実と、その理由についての解釈は分けて考える必要があります。
積立投資だけでなく経済を読み解く力を身につける
動画の中盤では、積立投資と「非連続な変化」についても解説しています。
毎月一定額を積み立てる方法は、購入時期を分散し、長期的な資産形成を安定させる有効な仕組みです。その一方で、積立額や運用期間が同じであれば、資産が増える速度には一定の限界があります。
動画では、積立投資を「人生を守る仕組み」と位置付けたうえで、金融や経済を自分で読み解く力を身につけることが、資産形成における変化のきっかけになると主張しています。
例えば「原油価格が100ドルを超えた」というニュースからは、次のようなつながりを考えられます。
原油価格が上昇すると、日本の輸入代金が増えます。原油の多くはドルで決済されるため、円を売ってドルを買う需要が増え、円安圧力になる可能性があります。
円安になれば円換算した原油価格はさらに上がり、電力、航空、運輸、化学など燃料を多く使う業種の負担が増えます。一方、資源を扱う総合商社やエネルギー関連企業には、原油価格の上昇が追い風になる場合があります。
物価上昇が続けば、日銀の金融政策や長期金利にも影響します。その結果、住宅ローン金利や企業の借入金利まで上昇する可能性があります。
このように、1つのニュースから為替、物価、企業業績、金利、家計への影響を順番に考えることが、動画内で紹介されている「連想ゲーム」です。
ただし、連想したシナリオが必ず実現するわけではありません。実際の投資では、複数の可能性を考え、数字や一次情報によって仮説を確認する必要があります。
S&P500やオルカンへの影響
S&P500や全世界株式、いわゆるオルカンを積み立てている投資家にとっても、原油市場の変化は無関係ではありません。
原油高がインフレを再加速させれば、米国の政策金利が高い状態で維持される可能性があります。金利上昇は企業の資金調達コストを増やし、特に将来利益への期待で評価される成長株には逆風となります。
一方、エネルギー企業や資源国の株式には追い風になる可能性があります。オルカンには中国を含む新興国も組み込まれていますが、時価総額に占める米国株の割合が大きいため、単純に「中国が伸びるならオルカンを買えばよい」と判断できるわけではありません。
動画でも、今回の出来事だけでドルの時代が終わるとは述べていません。重要なのは、米国とドルを中心とした秩序が永遠に変わらないという前提だけに依存しないことです。
日本の個人投資家と家計への影響
日本は原油や天然ガスなど、エネルギー資源の多くを海外から輸入しています。そのため、原油価格の上昇と円安が同時に進むと、家計や企業は二重の負担を受けます。
影響が表れやすいのは、ガソリン代、電気代、ガス代、航空運賃、物流費、プラスチック製品、食品価格などです。輸送費や包装資材の価格が上がれば、エネルギーを直接使わない商品の価格にも波及します。
投資面では、原油価格だけを見るのではなく、どの国が原油を買っているのか、どのルートで運ばれているのか、どの通貨で決済されているのかを確認する必要があります。
同じ原油高でも、原因が一時的な地政学リスクなのか、長期間続く供給不足なのかによって、企業業績や株価への影響は異なります。
今後の局面に備えるための3つの視点
動画では、個人投資家が今回の変化に備える方法として、3つの視点を挙げています。
1つ目は、分散を銘柄数だけで考えず、通貨と地域の分散まで含めて考えることです。ただし、分散先を増やせば必ず安全になるわけではありません。各資産がどのようなリスクに影響されるのかを確認する必要があります。
2つ目は、原油価格と同時に、買い手、決済通貨、輸送ルートを確認することです。価格だけでは分からない国際的な資金と資源の流れを把握しやすくなります。
3つ目は、急いで大きなポジションを取らないことです。原油価格や国債利回りは、外交交渉や軍事情勢によって短期間に大きく変動します。将来の秩序転換を予測できたとしても、投資のタイミングまで正確に当てられるとは限りません。
どのようなシナリオになっても致命的な損失を負わないよう、投資額とリスクを管理することが重要です。
まとめ
今回の原油高は、単なる一時的な価格上昇ではなく、ホルムズ海峡の輸送障害、代替パイプラインへの攻撃、戦略石油備蓄の減少といった供給構造上の問題を伴っています。
そのなかで、中国は長年積み上げてきた原油備蓄や調達先の分散、国内経済の電化を活用し、原油輸入を大きく減らしました。世界最大の輸入国が需要を減らしたことで、国際的な原油価格のさらなる上昇が抑えられた可能性があります。
一方、中国が意図的に原油市場を動かしたという見方、中国国債が新たな安全資産になったという見方、今回がドル体制の転換点になるという見方には、いずれも推測が含まれます。
ペトロダラーを通らない取引が拡大しているとしても、米ドルの基軸通貨としての地位が直ちに失われるわけではありません。ただし、石油、通貨、国債をめぐる従来の構造が少しずつ変化している可能性には注意が必要です。
個人投資家に求められるのは、短期的なニュースを見て慌てて売買することではありません。原油価格の背後にある供給量、輸送経路、買い手、決済通貨まで確認し、複数のシナリオを想定しながら資産配分とポジションサイズを管理することが重要です。


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