本記事は、YouTube動画『【格差社会】英国でニートが100万人突破しまだ増える!世界は同じ道をたどろうとしている!』の内容を基に構成しています。
英国で、就労も就学もしていない若者、いわゆる「ニート」が100万人を超え、深刻な社会問題になっています。
英国のニート人口が100万人を突破したのは、世界金融危機後に失業率が急上昇していた時期以来とされています。さらに現在の増加傾向が続けば、2031年には120万人に達する可能性があるとの見方も示されています。
問題の背景にあるのは、若者本人の就労意欲だけではありません。未経験者向け求人の減少、企業による即戦力重視、社会保障制度、精神的・身体的な健康問題、そして新型コロナウイルスのパンデミックによる労働市場の変化など、複数の要因が重なっています。
さらに今後は、生成AIをはじめとする技術の普及によって、若者が担当してきた入門レベルの仕事が一段と減少する可能性もあります。
英国で起きている問題は、英国だけの特殊な現象ではありません。インドや日本を含め、世界各国が同じ方向へ進む可能性があります。
本記事では、英国でニートが100万人を超えた背景を整理するとともに、若者の雇用、社会保障、健康問題、AIによる仕事の変化、そして日本への影響について詳しく解説します。
そもそも「ニート」とは何を意味するのか
ニートは、英語の「Not in Education, Employment or Training」の頭文字を取った「NEET」に由来します。
日本語にすると、「教育を受けておらず、雇用されておらず、職業訓練にも参加していない状態」を意味します。
一般的には、就労も就学もせず、職業訓練も受けていない若者を表す言葉として使用されています。ただし、対象となる年齢や細かな定義は国によって異なります。
国際的には15歳から29歳程度までを対象にする場合がありますが、英国では主に16歳から24歳までの若者が対象とされています。
日本では「若年無業者」という言葉が使われます。これは、15歳から34歳までの非労働力人口のうち、家事も通学もしていない人を指すのが一般的です。
このように、英国と日本では対象年齢や統計上の条件が異なります。そのため、単純に人数だけを比べることには注意が必要です。それでも、若者の人口に占める割合や増加傾向を確認すれば、英国の問題が非常に深刻であることが分かります。
「ニート」という言葉は英国で生まれた
ニートという言葉が公的に使われ始めたのは英国です。
1999年に英国政府がまとめた報告書の中で使用されたことが、その始まりとされています。
もちろん、それ以前から世界各国には、学校を卒業した後も就職できない若者や、教育・雇用制度から外れてしまう若者が存在していました。しかし、こうした若者を社会政策上の独立した問題として早くから認識し、統計的に把握しようとした国の1つが英国だったのです。
言い換えれば、英国だけでニートが突然生まれたわけではありません。世界に共通する問題が英国で先行して表面化し、それを表す言葉として「NEET」が生まれたと考えられます。
そして現在、その英国で再びニートの増加が深刻になっています。
英国のニートが100万人を突破
動画によると、英国では1月から3月に行われた調査で、ニートに該当する若者が100万人を超えました。
ニート人口が100万人を上回ったのは、リーマンショック後に英国の失業率が急上昇していた時期以来だと説明されています。
英国の人口は約6900万人です。100万人という人数は、英国の総人口のおよそ1.5%に相当します。
しかし、総人口に占める割合だけでは問題の深刻さを十分に理解できません。対象となる若者に限定すると、ニートの割合は13.5%に達しているとされています。
これは、該当する年齢層の若者のおよそ7人から8人に1人が、就職、教育、職業訓練のいずれにも参加していない計算です。
一時的な失業や進路変更も含まれるため、全員が長期間にわたって社会から孤立しているわけではありません。それでも、多くの若者が労働市場や教育制度との接点を失っていることは明らかです。
2031年には120万人に達する可能性
現在の増加傾向が続いた場合、英国のニート人口は2031年までに120万人へ拡大する可能性があるとされています。
これは単なる人数の増加ではありません。働き始める機会を失う若者が増えれば、英国経済の生産力や税収、社会保障制度にも長期的な影響が及びます。
若いうちに仕事を経験できなかった人は、その後も安定した職業に就きにくくなる傾向があります。職歴がない期間が長くなればなるほど、企業側から採用されにくくなり、本人の自信や社会との接点も失われやすくなるからです。
その結果、短期的な失業が長期的な無業状態へ変わる可能性があります。この悪循環を放置すると、120万人という予測をさらに上回る事態も考えられます。
日本の若年無業者は約80万人
動画では、日本の状況についても触れられています。
日本では、ニートに近い概念として「若年無業者」という区分があります。15歳から34歳までのうち、仕事に就いておらず、家事や通学も行っていない人が対象です。
動画によると、2024年時点の日本の若年無業者は約80万人とされています。
日本の人口は約1億2300万人です。一方、英国は約6900万人でありながら、ニートが100万人を超えています。対象年齢と定義が異なるため厳密な比較はできませんが、英国で若者の無業問題が非常に大きくなっていることは理解できます。
ただし、日本が英国よりも安全だと楽観することはできません。
日本でも少子化によって若者の人数自体が減少している一方、学校卒業後に安定した仕事へ移行できない人や、心身の不調によって就労が困難になる人が存在します。今後、企業が新卒採用を抑えたり、AIによって若手向けの仕事を減らしたりすれば、日本でも同様の問題が拡大する可能性があります。
英国でニートが増加している理由
英国でニートが増えている背景には、単一の原因があるわけではありません。
未経験者向け求人の減少、企業の採用姿勢、社会保障制度、健康問題、パンデミックの影響などが複雑に絡み合っています。
「若者が働きたがらないから」と単純化してしまうと、問題の本質を見失うことになります。
未経験者向けの仕事が減少している
動画では、英国政府の報告書を基に、過去20年間で高いスキルを持つ人材への求人が増える一方、「エントリーレベル・ジョブ」が減少していると説明されています。
エントリーレベル・ジョブとは、経験の浅い人や新卒者でも応募できる入門レベルの仕事です。
若者は最初から豊富な職務経験を持っているわけではありません。最初の職場で基本的な業務を覚え、実務経験を積みながら、徐々に高度な仕事へ進んでいきます。
ところが、その入口となる仕事が減れば、若者は経験を積む機会そのものを失ってしまいます。
企業が即戦力を求めるようになった
企業側も厳しい競争にさらされています。人件費や教育費を抑えながら生産性を高める必要があるため、時間をかけて新人を育てるよりも、採用後すぐに成果を出せる人材を求める傾向が強まっています。
企業の視点から見れば、教育コストを負担せず、経験豊富な人材を採用した方が合理的に見えます。
しかし、すべての企業が即戦力だけを求めるようになると、若者が経験を得る場所がなくなります。経験がないから採用されず、採用されないから経験を積めないという循環に陥るのです。
これは、若者の能力や意欲だけでは解決できない構造的な問題です。
生産性向上が若者の入口を狭める矛盾
企業が生産性を重視すること自体は当然です。しかし、短期的な生産性だけを追求すると、人材を長期的に育てる仕組みが弱くなります。
ベテラン社員や専門知識を持つ人材への需要が高まる一方、未経験者向けの業務は外部委託、自動化、AIなどに置き換えられていきます。
その結果、企業は効率化できても、社会全体では次世代の労働力が育たなくなる可能性があります。
現在の英国では、この矛盾が若者のニート化という形で表れていると考えられます。
ユニバーサルクレジット制度との関係
英国のニート増加を考えるうえで、「ユニバーサルクレジット」と呼ばれる社会保障制度も重要です。
ユニバーサルクレジットとは、低所得者や失業者などに生活費や住宅費を支給する制度です。日本の生活保護や失業・低所得者支援を組み合わせたような仕組みとして説明されることがあります。
動画によると、英国ではユニバーサルクレジットの受給者が約840万人に達し、このうち16歳から24歳の若者は約77万人に上るとされています。
この数字からも、社会保障に支えられて生活する若者が非常に多いことが分かります。
社会保障が「働かない理由」になるのか
社会保障が充実すると働かない人が増えるという議論は、英国に限らず多くの国で繰り返されています。
一定の給付を受けられる場合、低賃金の仕事に就いて給付を失うより、働かずに給付を受け続けた方が生活上有利になる場合があります。特に家賃や物価が高い地域では、低賃金の仕事だけで生活を成り立たせることが難しく、就職する経済的な利点が小さくなることもあります。
一方で、社会保障を必要としている人の中には、病気、障害、精神的な不調、家庭の問題など、本人の意思だけでは解決できない事情を抱えている人もいます。
そのため、「給付があるから若者が働かない」と一律に結論づけることはできません。
社会保障は生活に困っている人を支えるために不可欠です。しかし、給付制度の設計によっては、就職への移行を難しくする場合があります。重要なのは、給付を削減するか維持するかという単純な二者択一ではなく、働き始めた後も急激に支援を失わない仕組みや、医療・職業訓練と連携した支援を整えることです。
スターマー政権による受給要件の見直し
動画では、スターマー政権が財政健全化と就労促進を目的として、ユニバーサルクレジットの受給要件を厳格化していることも紹介されています。
英国政府としては、社会保障への依存が長期化することを防ぎ、働くことが可能な人を労働市場へ戻したい考えです。
ただし、受給要件を厳しくするだけで、若者が適切な仕事に就けるとは限りません。
未経験者向け求人が不足し、心身の不調を抱える若者も多いなかで支給だけを減らせば、就職ではなく生活困窮につながる恐れがあります。給付制度の改革と同時に、治療、職業訓練、就職支援、企業側への採用促進策などを組み合わせる必要があります。
健康問題を理由とするニートが増えている
英国のニート増加において、より深刻な問題として指摘されているのが健康状態の悪化です。
動画によると、過去10年間で健康問題を理由としてニートになった人の割合は70%増加しました。また、ニート状態にある若者の10人に4人が精神疾患を抱えているとされています。
これは、英国のニート問題を単純な失業問題として扱えないことを示しています。
精神的な不調と無業状態の悪循環
精神的な不調があると、決まった時間に出勤すること、人間関係を築くこと、仕事上の責任を負うことが難しくなる場合があります。
その結果、学校や職場から離れ、ニート状態になることがあります。
一方、仕事や学校との接点を失うと、生活リズムが崩れ、社会的な孤立が進みます。将来への不安や自己評価の低下も生じやすくなり、精神的な不調がさらに悪化する可能性があります。
つまり、精神疾患がニート状態の原因になるだけでなく、ニート状態が精神疾患を悪化させるという双方向の関係が考えられます。
いったんこの循環に入ると、給付を減らしたり求人を紹介したりするだけでは解決が難しくなります。医療やカウンセリング、段階的な就労、生活支援などを組み合わせた長期的な対応が必要です。
コロナ禍がニート増加の転機になった
英国でニートが増え始めた大きなきっかけの1つが、新型コロナウイルスのパンデミックだったとみられています。
パンデミックの発生後、多くの企業が採用を停止・縮小し、事業環境が悪化した業界では人員削減も行われました。飲食、観光、小売、接客といった若者が最初の仕事として選びやすい業界ほど、大きな影響を受けました。
そのため、学校を卒業して労働市場へ入ろうとした若者が、最初の就職機会を失うことになりました。
パンデミック後も受給者が減らなかった理由
経済活動の正常化に伴い、失業率は徐々に改善しました。しかし、ユニバーサルクレジットの受給者は高水準にとどまり、増加傾向も続いていると説明されています。
背景には、パンデミック期間中に心身の不調を抱えた人が増えたことに加え、企業の採用方針が変化したことがあります。
企業は経済再開後、事業を効率的に立て直すため、未経験の若者よりも経験豊富な人材を優先して採用するようになりました。
企業側はスキルを持った人を求めています。しかし、働いた経験のない若者は、採用条件を満たすことができません。
経済が回復して求人が増えても、その求人と若者の能力が一致しなければ失業問題は解消しません。英国では、この「雇用のミスマッチ」がニートの増加を長期化させていると考えられます。
英国政府が若者向けの職業訓練を強化
英国政府も、若者のニート増加を放置しているわけではありません。
企業が求める技能と若者が持つ技能の差を埋めるため、若者向けの職業訓練を拡充する方針が打ち出されています。
動画では、リーブス財務相が2025年11月の予算演説で、イングランドに住む18歳から21歳の若者を対象とした職業訓練制度を導入し、3年間で8億2000万ポンド、日本円で約1700億円の予算を投じる方針を示したと説明されています。
職業訓練が必要とされる理由
職業訓練の目的は、若者に企業が必要とする実践的な技能を身につけてもらい、就職へつなげることです。
働いた経験がない若者を、そのまま経験者向けの求人に応募させても、採用される可能性は高くありません。そこで、職業訓練を通じて基本的な技能や職場での習慣を身につけてもらい、企業の採用条件に近づけようとしているのです。
訓練が機能すれば、若者は最初の職歴を得やすくなり、企業側も必要な人材を確保できます。
ただし、訓練内容と実際の求人が結びついていなければ効果は限定的です。資格を取得しても、その分野の仕事がなければ就職にはつながりません。
したがって、政府が訓練制度を用意するだけでなく、企業との連携、就業体験、採用後の支援まで含めた仕組みを構築できるかが重要になります。
AIの普及で若者の失業はさらに増えるのか
動画で特に懸念されているのが、AIによる雇用への影響です。
英国政府の報告書では、健康問題、社会保障、求人構造などが取り上げられているものの、AIによる失業の影響は十分に織り込まれていない可能性があると指摘されています。
現在、企業は生産性向上や人件費削減のためにAIを導入し始めています。AIを活用することで少ない人数でも業務を処理できるようになれば、新規採用を抑制する企業が増える可能性があります。
その影響を最初に受けやすいのが、若者や未経験者です。
AIが代替しやすいのは入門レベルの業務
これまで若者は、資料作成、データ入力、電話対応、顧客サポート、簡単な調査、定型的な事務処理などを通じて、仕事の基本を学んできました。
ところが、こうした定型的な業務はAIや自動化システムが比較的代替しやすい分野です。
経験豊富な社員がAIを使えば、以前は新人に任せていた仕事を短時間で処理できます。その場合、企業は新人を採用する必要がなくなります。
これは大きな問題です。入門レベルの仕事がなくなれば、若者は経験を積めません。しかし、経験がなければ、AIでは代替しにくい高度な仕事にも進めません。
AIは既存社員の生産性を高める一方、これから労働市場へ入ろうとする人の入口を狭める可能性があるのです。
AIによる好景気でも雇用が増えない可能性
AI関連企業の成長や設備投資によって、株式市場や一部産業が活況になる可能性はあります。しかし、経済や企業収益が成長したとしても、若者の雇用が同じように増えるとは限りません。
AIによる成長は、従来よりも少ない人数で大きな利益を生み出す可能性があるからです。
企業業績や株価が上昇する一方で、新規採用は増えないという状況も考えられます。その場合、AI企業の株式や高度な専門技能を持つ人は恩恵を受けますが、資産や技能を持たない若者は成長から取り残されます。
これが、AI時代における新たな格差の拡大につながる可能性があります。
インドでも若者の失業が深刻化
若者の雇用問題は英国だけで起きているわけではありません。
動画では、インドでも若年層の失業率が高まり、若者の政治や社会に対する不満が強まっていることが紹介されています。
インドの場合、大学進学者が増加する一方、大卒者が希望するホワイトカラーの仕事が十分に増えていないという問題があります。
学歴を取得すれば安定した仕事に就けると期待して大学へ進学しても、希望する職種の求人が少なければ、卒業後も就職できません。
学歴と仕事のミスマッチ
大卒者が増えること自体は、社会の教育水準を高めるという意味で好ましい変化です。しかし、産業構造や雇用がそれに対応していなければ、学歴と仕事の間にミスマッチが発生します。
高等教育を受けた若者は、それに見合う給与や社会的地位を期待します。一方で、実際に増えている仕事が低賃金の職種に偏っていれば、就職をためらう人も出てきます。
仕事がまったくないというより、若者が希望する仕事と企業が提供できる仕事が一致していない状態です。
この点は英国で起きている技能のミスマッチと共通しています。
コールセンター業務がAIに置き換わる懸念
インドは、英語を話せる労働力と比較的低い人件費を背景に、世界のコールセンターや事務処理業務を受託してきました。
しかし、顧客からの問い合わせ対応や定型的な事務作業は、生成AIが得意とする分野でもあります。
AIによる音声対応やチャットサポートが普及すれば、これまでインドの若者を大量に雇用してきたコールセンターの仕事が減る可能性があります。
大学を卒業しても希望する仕事が少ないうえ、若者の受け皿となってきたサービス業までAIに置き換われば、インドの若年失業はさらに深刻になる恐れがあります。
英国とインドは世界の未来を先取りしている可能性
英国とインドでは、経済構造、人口、所得水準、社会保障制度が大きく異なります。
それでも、若者の雇用という面では共通する問題が見られます。
企業が経験者や高度な技能を持つ人材を優先し、未経験者向けの仕事が減少していることです。さらに、学歴を取得しても希望する仕事に就けず、AIが入門レベルの業務を代替し始めています。
英国やインドは、これから多くの国で本格化する問題を先取りしている可能性があります。
企業が生産性を追求することは避けられません。AI導入を一律に止めることも現実的ではありません。
その一方で、企業が新人を育てなくなり、若者が仕事を経験する機会を失えば、長期的には社会を支える人材が不足します。
目先の効率化と将来の人材育成をどのように両立させるかが、各国に共通する重要な課題になります。
日本も決して他人事ではない
日本では少子高齢化と人手不足が続いているため、「若者なら仕事には困らない」と考えられがちです。
しかし、人手不足が起きている業界と、若者が希望する仕事が一致しているとは限りません。
介護、建設、物流、宿泊、飲食などで深刻な人手不足が続く一方、若者が希望する事務職やホワイトカラー職では、AIと自動化によって採用人数が減る可能性があります。
社会全体では人手が足りないのに、若者は希望する仕事に就けないという矛盾が生じる可能性があるのです。
新卒採用が抑制される可能性
動画では、日本でも企業が新卒採用を抑制する動きが指摘され始めていると説明されています。
日本企業は長年、新卒者を一括採用し、社内で育成する仕組みを維持してきました。この制度は、職務経験のない若者に仕事への入口を提供する役割を果たしています。
しかし、AIの導入や人件費の上昇によって企業が採用人数を絞るようになれば、日本でも若者の入口が狭くなります。
特に、事務、営業支援、資料作成、顧客対応など、これまで若手社員が担当してきた業務が自動化されれば、企業は従来と同じ人数の新卒者を採用する必要がなくなります。
日本では新卒時に安定した仕事へ入れなかった場合、その後の職業経歴に長く影響することがあります。そのため、新卒採用の縮小は単年度の雇用問題ではなく、若者の将来所得や結婚、住宅取得、子育てにも影響する可能性があります。
ニートの増加が社会にもたらす長期的な影響
ニートの増加は、若者本人とその家族だけの問題ではありません。
働く人が減れば、所得税や社会保険料を負担する人も減少します。その一方で、生活支援、医療、住宅支援などに必要な公的支出は増加します。
少子高齢化が進む国では、若い世代が高齢者を支える必要があります。その若者の就業率が低下すれば、年金、医療、介護を含む社会保障制度の維持は一段と難しくなります。
所得格差と資産格差が広がる
若い時期に安定した職歴を築けるかどうかは、生涯所得に大きく影響します。
就職が遅れれば、賃金が上がる時期も遅くなります。貯蓄や投資を始める時期も遅れ、住宅や金融資産を取得する機会も減少します。
一方、AIを使いこなす高度人材やAI関連企業の株式を保有する人は、技術革新による利益を受けられる可能性があります。
こうして、働く機会を失う人と、AIによって所得や資産を増やす人の差が拡大していきます。
格差は単なる年収の違いではありません。職歴、技能、資産、住環境、健康、教育機会など、複数の分野にまたがって固定化される恐れがあります。
社会や政治に対する不満が高まる
仕事を得られず、将来への展望を持てない若者が増えると、既存の政治や社会制度に対する不満も強まります。
経済が成長している、株価が上昇していると報道されても、自分の生活が改善しなければ、若者はその成長を実感できません。
一部の企業や投資家だけがAIの恩恵を受け、若者が雇用を失う状況になれば、社会の分断はさらに深まる可能性があります。
英国やインドで見られる若者の不満は、今後ほかの国でも政治的な変化を生む要因になり得ます。
AI時代に必要となる対策
AIによる効率化を止めるだけでは、問題の解決にはなりません。
必要なのは、AIを導入しながら、若者が経験を積める仕組みを残すことです。
企業には、短期的な即戦力採用だけでなく、未経験者を育成する役割が求められます。政府も職業訓練を実施するだけでなく、訓練後に実際の雇用へつながる制度を整える必要があります。
また、精神的な不調を抱える若者には、いきなり週5日のフルタイム勤務を求めるのではなく、短時間勤務や段階的な職場復帰など、状態に応じた支援が必要です。
社会保障についても、受給要件を厳しくするだけではなく、働き始めた後も一定期間は支援を受けられるようにするなど、就職によって生活が不安定にならない設計が求められます。
教育機関にも変化が必要です。知識を教えるだけでなく、AIを活用する能力、対人コミュニケーション、判断力、問題解決力など、機械に代替されにくい能力を育てることが重要になります。
AIが生み出す未来は本当に明るいのか
AIには、生産性を高め、人手不足を解消し、新しい産業や仕事を生み出す可能性があります。
その一方で、技術革新による利益が社会全体へ均等に行き渡るとは限りません。
特に注意すべきなのは、若者が仕事を覚えるための入口が失われることです。ベテラン社員がAIを使って効率化するだけでは、次の世代を担う人材は育ちません。
AIによって新しい職業が生まれるとしても、その仕事に就くためには高度な技能が必要になる可能性があります。すでに教育や雇用から外れている若者が、十分な支援なしに新しい職業へ移行することは簡単ではありません。
AIの未来が明るいものになるかどうかは、技術そのものだけで決まるわけではありません。
AIが生み出した利益をどのように分配し、失われる仕事から新しい仕事へ人々をどう移行させるかによって、社会の姿は大きく変わります。
適切な制度を作れなければ、AIは豊かさを生み出すと同時に、若者の失業と格差を拡大する可能性があります。
まとめ
英国では、就労、就学、職業訓練のいずれにも参加していない若者、いわゆるニートが100万人を超えました。若年人口に占める割合は13.5%に達し、現在の傾向が続けば2031年には120万人まで増える可能性が指摘されています。
背景には、未経験者向け求人の減少、企業の即戦力重視、ユニバーサルクレジットを中心とする社会保障制度、心身の健康問題、コロナ禍による採用環境の悪化などがあります。
英国政府は若者向けの職業訓練を強化し、雇用のミスマッチを解消しようとしています。しかし、今後はAIの普及によって、若者が最初に担当する入門レベルの仕事がさらに減る可能性があります。
同様の問題はインドでも見られます。大卒者が増える一方で希望するホワイトカラー職は不足し、若者の受け皿だったコールセンター業務にもAIによる代替が迫っています。
日本も例外ではありません。人手不足が続いていても、若者が希望する事務職やホワイトカラー職がAIによって減れば、英国と同じような雇用のミスマッチが拡大する恐れがあります。
英国のニート100万人突破は、単なる海外の失業問題ではありません。企業が生産性と即戦力を重視し、AIが未経験者向け業務を代替していく時代に、世界各国が直面する可能性のある未来を示しています。
AIによる成長を社会全体の豊かさへつなげるには、若者の職業訓練、企業による人材育成、健康支援、柔軟な働き方、そして就労を妨げない社会保障制度を一体的に整える必要があります。
英国で進むニートの増加を注視することは、日本が同じ道をたどらないためにも重要だといえるでしょう。


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