本記事は、YouTube動画『金利上昇で何が起きる?銀行株・高配当株・債券・為替への影響と投資戦略』の内容を基に構成しています。
日本でも長く続いた「金利のない世界」が終わり、金利の動向がこれまで以上に投資家の資産運用へ影響する時代になっています。
金利が上昇すると住宅ローンの負担が増えるだけではありません。企業の資金調達コスト、株式市場の評価、債券価格、為替、さらにはコモディティ市場まで幅広い影響が及びます。
特に株式市場では、これまで人気を集めてきたグロース株に逆風となる一方、銀行株や高配当株、バリュー株などが相対的に注目されやすくなる可能性があります。
今回は、金利上昇によって経済や金融市場に何が起きるのか、さらに投資家はどのように資産を守りながら運用していけばよいのかを詳しく解説します。
なぜ投資家は「金利」を見る必要があるのか
投資を考えるうえで、金利は非常に重要な指標です。
株価や為替だけを見て投資判断をする人も少なくありませんが、金融市場の大きな流れを理解するには、まず金利を見る必要があります。
金利は、経済の「血液」ともいわれるお金の流れを大きく変えるためです。
日本では長期間にわたりデフレが続き、日本銀行はゼロ金利政策やマイナス金利政策など、極めて緩和的な金融政策を続けてきました。
そのため、日本の企業や家計、投資家は「金利がほとんどない世界」に慣れてしまっています。
しかし、物価上昇が続き、金融政策が正常化していけば、金利のある世界を前提に投資や生活を考えなければなりません。
金利が動けば、企業の業績だけでなく株式、債券、為替、不動産など多くの資産価格が変化します。
だからこそ、これからの投資では「金利が上がったら何が起きるのか」を理解しておくことが重要になります。
金利上昇は景気や物価を抑える方向に働く
中央銀行が政策金利を引き上げる代表的な理由の1つが、インフレや景気の過熱を抑えることです。
金利が上昇すると、企業や個人がお金を借りる際の負担が大きくなります。
企業であれば設備投資や新規事業への投資を控えやすくなり、個人であれば住宅や自動車など高額商品の購入をためらうようになります。
その結果、社会全体のお金の動きが鈍くなり、需要が低下します。
需要が弱くなれば、企業も簡単には価格を引き上げられなくなるため、インフレを抑える効果が期待できます。
つまり中央銀行は、金利を引き上げることで意図的に経済へブレーキをかけているわけです。
ただし、金利を上げれば必ず良い結果になるわけではありません。
景気が非常に強く、需要が過熱している状態を落ち着かせるための利上げであれば比較的健全です。
一方、景気がそれほど強くないにもかかわらず、供給制約などによるインフレを抑えるために利上げを行えば、景気をさらに悪化させる可能性があります。
利上げを見る際には、「なぜ金利が上昇しているのか」まで確認することが重要です。
家計では住宅ローン負担の増加に注意
金利上昇の影響を個人が最も実感しやすいものの1つが住宅ローンです。
特に変動金利型の住宅ローンを利用している場合、金利上昇によって利息負担が増える可能性があります。
新たに住宅ローンを組む場合も同様です。
金利が低かった時期と比べれば毎月の返済負担が増えるため、購入できる住宅価格の上限も下がりやすくなります。
一方、金利上昇には家計にとってプラスになる部分もあります。
銀行の普通預金や定期預金、個人向け国債などの金利も上昇する可能性があるからです。
これまでほとんど利息が付かなかった預貯金から、多少の利息収入を得られるようになります。
ただし、日本では政策金利が上昇しても預金金利が非常に高い水準になるとは限りません。
そのため、預金金利上昇によるメリットよりも、住宅ローンなど借り入れ金利上昇による負担のほうが大きくなる家庭もあります。
企業は資金調達コストが上昇する
企業活動にも金利上昇は大きな影響を与えます。
企業は事業を拡大するとき、銀行から融資を受けたり、社債を発行したりして資金を調達します。
金利が上昇すれば、その資金調達に必要な利息も増加します。
設備投資や新規事業についても、借入金利が高くなれば採算性が低下します。
その結果、「今は投資をやめておこう」と判断する企業が増える可能性があります。
企業の投資が減少すれば、経済全体の成長率を押し下げる要因になります。
特に借入金の多い企業ほど金利上昇の影響を受けやすいため、投資家は企業の売上高や利益だけでなく、負債の状況にも注目する必要があります。
金利上昇は銀行株に追い風となりやすい
一方、金利上昇によって大きな恩恵を受けやすい業種が金融機関です。
特に銀行は、金利上昇局面で注目されやすくなります。
銀行の基本的なビジネスモデルは、預金などによって比較的低い金利で資金を集め、その資金を企業や個人へより高い金利で貸し出すことです。
この貸出金利と預金金利の差が銀行の重要な収益源となります。
金利上昇局面では、預金金利よりも貸出金利のほうが上昇しやすければ、金利差が拡大します。
結果として銀行の本業の収益力が高まりやすくなります。
特にメガバンクは資金力が大きく、国内だけでなく海外事業や非金利収益を生み出す事業も展開しています。
金利上昇による利ざや改善に加えて複数の収益源を持っているため、金利上昇局面では投資対象として注目されやすくなります。
ただし、金利が上がれば上がるほど銀行に有利というわけではありません。
金利が過度に上昇すると借り入れ需要そのものが減少したり、企業の倒産が増えて信用コストが上昇したりする可能性があります。
重要なのは「適度な金利上昇」です。
グロース株は金利上昇に弱い理由
株式市場で金利上昇の影響を受けやすいのがグロース株です。
グロース株とは、現在の利益よりも将来の成長期待を高く評価されている企業の株式です。
特にIT企業や新興企業などでは、将来大きく利益が伸びることを前提として高い株価が付いているケースがあります。
金利が上昇すると、この「将来の利益」の現在価値が低く評価されやすくなります。
株式価値を計算するときには、将来得られる利益を現在の価値へ割り戻す「割引率」という考え方があります。
金利が上昇すると割引率も上昇しやすくなるため、遠い将来に得られる利益ほど現在価値が小さくなります。
その結果、高い成長期待によって高PERが付いているグロース株では、株価の評価が見直される「バリュエーション調整」が起こりやすくなります。
さらに、成長企業の中には事業拡大のために多額の借り入れを行っている企業もあります。
その場合、金利上昇による資金調達コスト増加も業績の重荷になります。
バリュー株や高配当株は相対的に有利になりやすい
グロース株とは反対に、金利上昇局面で相対的に注目されやすいのがバリュー株や高配当株です。
バリュー株は、企業の利益や資産などに対して株価が比較的割安と評価されている銘柄です。
すでに安定したキャッシュフローを生み出している企業が多く、遠い将来の成長期待だけで株価が形成されているわけではありません。
高配当株も同様です。
現在の事業から安定した利益を出し、投資家へ配当を支払える企業は、金利上昇局面でも比較的評価が安定しやすい傾向があります。
動画では、金融株に加えて資源、エネルギー、インフラ関連など、財務が健全で配当を出せる企業へ資金が向かう可能性があるとしています。
ただし、「高配当だから安全」と考えるのは危険です。
借入金が多い企業では、金利上昇による利息負担が増加します。
配当利回りだけを見るのではなく、企業の財務状態も確認する必要があります。
債券は金利上昇で価格が下落する
金利上昇と債券価格には非常に重要な関係があります。
基本的に、金利が上昇すると既存の債券価格は下落します。
例えば、低金利の時期に利回り1%の債券が発行されていたとします。
その後、金利が上昇し、新しく利回り3%の債券が発行されるようになれば、投資家は当然3%の債券を買いたいと考えます。
すると、すでに市場に出回っている利回り1%の債券は魅力が低下します。
その債券を売るためには価格を下げる必要があるため、金利上昇とともに既存債券の価格が下落することになります。
特に影響が大きいのが長期債です。
満期までの期間が長い債券ほど、金利変動による価格への影響が大きくなる傾向があります。
そのため、金利上昇局面では債券の残存期間を短くすることも1つの考え方になります。
債券では「ラダー型運用」という方法もある
金利変動リスクを分散する方法として、動画ではラダー型運用も紹介されています。
ラダー型運用とは、満期の異なる債券へ分散して投資する方法です。
例えば短期、中期、長期など満期時期の異なる債券を保有し、満期になった資金をその時点の金利で再投資します。
金利が変化しても、すべての資金を同じ金利・同じ満期へ集中させないため、金利変動リスクを分散できます。
また、金利上昇局面では変動金利型の商品を利用する方法もあります。
日本では変動金利型の個人向け国債などが代表例です。
ただし、債券運用は満期や金利変動を考慮する必要があるため、初心者にとってはやや複雑な投資方法でもあります。
為替は「どちらの国がどれだけ金利を動かすか」が重要
為替相場では、単純に「日本が利上げしたから円高になる」と考えることはできません。
重要なのは国と国との金利差です。
例えば日本が利上げする一方、米国が利下げすれば日米金利差が縮小します。
この場合、一般的には円高・ドル安方向へ動きやすくなります。
しかし、日本と米国が同時に同程度の利上げを行えば、日米金利差はそれほど縮小しません。
その場合、円安傾向が続く可能性もあります。
つまり為替を見るときには、日本銀行の政策だけを見るのではなく、FRBなど海外中央銀行の金融政策も同時に確認する必要があります。
金利上昇はゴールドやコモディティに逆風なのか
ゴールドなどのコモディティは、基本的には利息を生みません。
金利が上昇すると国債など安全性が比較的高く、利息を受け取れる資産の魅力が高まります。
そのため、理論上はゴールドなど利息を生まない資産には資金が向かいにくくなります。
ただし、ここには例外があります。
金利上昇の原因がインフレである場合です。
原油や金属などのコモディティはインフレ局面で価格が上昇することがあります。
そのため、「金利上昇=コモディティ下落」と単純に判断するのではなく、なぜ金利が上昇しているのかを確認する必要があります。
金利上昇局面では投資先のセクターを見直す
では、金利が上昇する環境ではどのように投資戦略を組み立てればよいのでしょうか。
動画では、まず株式市場で「物色セクターのシフト」が起きる可能性を指摘しています。
代表的なのが金融株です。
日本株であればメガバンクや大手保険会社などが候補になります。
また、高配当株やバリュー株など、現在の利益やキャッシュフローが安定している企業にも資金が向かいやすくなります。
資源、エネルギーなどの企業も候補として挙げられています。
一方、PERが非常に高いグロース株や、多額の借り入れによって成長を続けている企業については、ポートフォリオ内の比率を見直すという考え方もあります。
すべて売却するという意味ではなく、特定の高PERグロース株へ資金が集中しすぎていないか確認することが重要です。
高配当株でも「有利子負債」を確認する
金利上昇局面で高配当株が注目されるとしても、単純に配当利回りだけで銘柄を選ぶべきではありません。
特に確認したいのが有利子負債です。
借入金が非常に多い企業では、金利上昇によって利息負担が増えます。
利益が圧迫されれば、将来的に配当を維持できなくなる可能性もあります。
そのため、
・安定したキャッシュフローがある
・財務状態が健全である
・借入依存度が高すぎない
・現在の配当だけでなく増配余地がある
といった点を見ることが重要になります。
単に高い配当を受け取るだけではなく、企業の利益成長によって将来の増配も期待できる「配当成長株」を選ぶことができれば、インフレにも比較的対応しやすいポートフォリオを構築できる可能性があります。
REITは金利上昇局面で注意が必要
高い分配金利回りで人気があるREITですが、金利上昇局面では注意が必要です。
REITは不動産を取得するために借り入れを利用することが多いため、金利上昇によって資金調達コストが増えます。
さらに、国債利回りが上昇するとREITの分配金利回りの魅力が相対的に低下します。
つまり、
「借入金利の上昇」
と
「安全資産の利回り上昇」
という2つの逆風を受ける可能性があります。
そのため、金利上昇局面では分配金利回りだけを見てREITへ投資するのではなく、財務状態や借入条件なども慎重に確認する必要があります。
外国資産では円高リスクにも注意する
日本の金利上昇によって円高が進んだ場合、海外資産を保有している投資家にも影響があります。
例えば米国株がドルベースで値上がりしていても、同時に円高が大きく進めば、日本円へ換算した資産価値は減少する可能性があります。
海外資産へ投資するときには株価だけではなく、為替変動もリターンを左右します。
対策としては、為替ヘッジ付きの商品を利用したり、一度に投資せず積立によって購入タイミングを分散したりする方法があります。
「良い利上げ」と「悪い利上げ」を区別する
金利上昇局面を考えるうえで重要なのが、利上げの背景です。
動画では、大きく2種類に分けて考えています。
1つは、景気が非常に強く、需要が過熱しているため経済を落ち着かせる目的で行われる利上げです。
企業収益や景気が強い状態で行われるため、比較的「良い利上げ」と考えることができます。
もう1つは、景気がそれほど強くないにもかかわらず、供給制約などによるインフレを抑えるために行われる利上げです。
こちらでは景気が弱い中で金融引き締めが行われる可能性があるため、株式市場にとってより厳しい環境になることがあります。
同じ0.25%の利上げでも、その背景によって市場への影響は大きく異なるわけです。
2022年の急速な利上げから学べること
動画では、2022年の世界的なインフレと金融引き締めにも触れています。
2022年にはインフレが急速に進行し、FRBをはじめとする主要中央銀行が相次いで金融引き締めを進めました。
急速な金利上昇によって株式や債券など幅広い金融資産が影響を受け、市場は大きく不安定になりました。
この経験から分かるのは、金融政策が市場へ与える影響の大きさです。
投資家にとって重要なのは、「中央銀行がうまく対応してくれるだろう」と考えるだけではなく、金利環境の変化に合わせて自分のポートフォリオを調整できる準備をしておくことです。
金利上昇時こそ分散投資が重要になる
金利上昇局面だからといって、銀行株だけを買えばよいわけではありません。
動画でも、単一の資産へ集中するのではなく、複数の資産を組み合わせることの重要性が指摘されています。
例えば株式では金融株や高配当株を組み入れつつ、債券では短期債や変動金利型の商品を利用し、一定の現金も残しておくという考え方です。
自分が許容できるリスクに合わせて資産を組み合わせることが大切です。
金利上昇によって有利になる資産もあれば、不利になる資産もあります。
その関係を理解しておけば、単に市場の下落を恐れるだけでなく、環境変化を利用した投資戦略も考えられるようになります。
まとめ
金利は経済や金融市場全体のお金の流れを左右する重要な要素です。
金利が上昇すると、住宅ローンや企業の借入負担が増え、設備投資や消費が抑制されやすくなります。
株式市場では、将来の成長期待によって高い評価を受けているグロース株に逆風となる一方、銀行株、高配当株、バリュー株などが相対的に注目されやすくなります。
債券では既存債券の価格下落に注意が必要で、特に残存期間の長い債券ほど金利変動の影響を受けやすくなります。
為替については日本の金利だけを見るのではなく、米国など海外との金利差を確認することが重要です。
さらに、同じ利上げでも景気過熱を抑えるための利上げなのか、インフレへの対応としてやむを得ず行われる利上げなのかによって、市場への影響は異なります。
長く低金利が続いた日本では、今後「金利がある世界」を前提に投資を考える必要性が高まります。
重要なのは、金利上昇を単純に悪材料と考えることではありません。
どの資産に逆風が吹き、どの資産に追い風が吹くのかを理解し、金融株、高配当株、短期債、現金などを適切に組み合わせることが重要です。
市場環境が変化してから慌てて対応するのではなく、金利の動きを確認しながら自分の資産配分を見直していくことが、これからの投資ではますます重要になるでしょう。


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