本記事は、YouTube動画『暴落しても信用買いが減らない危険な株3選』の内容を基に構成しています。
株価が大きく下落すると、「ここまで売られたのだから、売りたい人はほとんど売っただろう」と考えたくなります。しかし、株価の下落率が大きいことと、将来の売り圧力が減ったことは同じではありません。
動画では、キオクシアホールディングス、任天堂、三菱重工業の3銘柄を取り上げています。いずれも高値から大きく下落した一方、信用買い残が重く残り、直近では再び増加する動きが確認されています。
特に注意したいのが、株価が下がるなかで信用買い残が増え、信用売り残が減る状態です。安くなったと判断した投資家の信用買いが積み上がる一方、将来の買い戻しにつながる信用売りが減るため、株価が反発しても戻り売りに押されやすくなる可能性があります。
ただし、信用倍率が高いという理由だけで、株価が必ず下がるわけではありません。信用買い残と信用売り残の変化に加え、その残高を日々の売買高で吸収できるかどうかまで確認する必要があります。
信用買い残が多いとなぜ売り圧力になるのか
信用買いとは、証券会社から資金を借りて株式を購入する取引です。信用買いによって保有されている未決済の株数が「信用買い残」です。
信用買いは、最終的に反対売買によって返済される場合があります。買った株を市場で売却して決済するため、信用買い残は将来の売り圧力になり得ます。
一方、現金を用意して現物株へ切り替える「現引き」もあります。そのため、信用買い残のすべてが、そのまま将来の売り注文になるわけではありません。
また、週次で公表される信用残高だけでは、誰が、いくらで買ったのかまでは分かりません。個人投資家だけの残高とも限らず、すべての投資家が同じ期限で返済するわけでもありません。
制度信用取引には原則として6カ月以内の返済期限がありますが、一般信用取引の期限は証券会社や商品によって異なります。したがって、信用買い残から「特定の日に大量の売りが出る」と判断するのは行き過ぎです。
信用残高から読み取れるのは、主に次の3点です。
- 未決済の買いポジションがどの程度残っているか
- 株価下落中に信用買い残が増えているか、減っているか
- 信用買い残が普段の売買高に対してどの程度重いか
なお、動画で使用されている最新の週次信用残高は9月11日時点です。一方、株価は9月18日まで確認されています。したがって、9月18日までの反発によって信用買い残が減ったのか、さらに増えたのかは、次の信用残高が公表されるまで断定できません。
キオクシアは信用倍率が高い一方で流動性も高い
キオクシアホールディングスの9月18日の終値は5万4,570円でした。6月22日の年初来高値11万2,700円からは、約52%下落しています。
株価が半値近くまで下がったため、信用取引の整理も進んだように見えます。実際、信用買い残は8月28日の1,616万5,800株から、9月4日には1,350万6,700株まで大きく減少しました。
ところが、その後は再び増加に転じています。9月11日時点の信用買い残は1,394万3,000株となり、前週から43万6,300株増えました。
一方、信用売り残は101万4,400株から69万8,100株へ減少しています。この結果、信用倍率は13.31倍から19.97倍へ上昇しました。
下落局面で信用買いが積み直されている
重要なのは、信用倍率が19.97倍という数字だけではありません。一度は信用買い残の整理が進んだものの、株価が下がるなかで再び買い残が増え始めたことです。
9月11日の終値は5万430円で、同日は約7%下落しました。その後も9月16日には4万9,110円まで値下がりしています。
9月11日までに信用買いを増やした投資家の一部は、その直後から含み損を抱えた可能性があります。株価が反発すると、「ようやく買値付近まで戻った」と考えた投資家の返済売りが出やすくなります。
1日平均売買高の約0.45日分
ただし、キオクシアには大きな反対材料があります。それは売買高が非常に大きいことです。
9月11日までの1週間の売買高は約1億5,354万株で、1日平均では約3,071万株でした。信用買い残1,394万3,000株は、1日平均売買高の約0.45日分に相当します。
信用買い残の絶対数は大きいものの、普段の売買量に対する負担は、今回取り上げた3銘柄のなかで最も小さくなっています。
キオクシアは信用倍率が高い一方、流動性も非常に高い銘柄です。大きな出来高を伴う上昇が続けば、信用買い残から出る売りを吸収しながら株価が上昇する余地があります。
今後は、次の週次データで信用買い残が再び1,400万株台を大きく超えるのか、それとも株価の反発とともに減少へ向かうのかが焦点となります。
さらに、TOPIXの浮動株比率見直しによる指数連動資金の需給も無視できません。動画では、10月上旬に新しい比率が公表され、10月末と11月末に段階的に反映される予定だと説明されています。
指数連動資金の需要が強まれば、信用買い残の重さを現物買いが吸収する可能性があります。一方、指数需要への期待だけで信用買いがさらに増えた場合、イベント通過後に売り圧力が残ることも考えられます。
任天堂は急落時に信用買い残が約17%増加
任天堂は、株価が下がるなかで信用買い残が増えた状況が、特に分かりやすく表れた銘柄です。
9月4日の終値は8,839円、9月11日は8,093円でした。わずか1週間で約8%下落しています。
ところが同じ期間に、信用買い残は804万1,400株から944万4,400株へ増加しました。増加幅は約140万株で、率にすると約17%です。
反対に、信用売り残は85万6,700株から75万7,600株へ減少しました。信用倍率は9.39倍から12.47倍へ上昇しています。
株価が約8%下落した一方、安くなったと判断した投資家の信用買いは約17%増え、信用売りは減りました。「これだけ下がったのだから売り圧力も減ったはずだ」という見方とは、逆方向に信用需給が動いたことになります。
一度減った買い残が再び膨らんだ
任天堂の信用買い残は、8月まで一貫して増えていたわけではありません。7月末には1,000万株を超えていた信用買い残が、8月28日には781万2,600株まで減少していました。
つまり、一度は信用取引の整理が進んでいました。しかし、9月に入って株価が急落すると、信用買い残は再び944万株まで積み上がりました。
これは、古い信用買いが整理されて需給が軽くなったというよりも、整理によって空いたところに新しい信用買いが入ってきた状態と考えられます。
新しい信用買いは取得価格が現在の株価に近いため、短期的な反発では利益確定売りに回る可能性があります。反対に株価がさらに下がれば、損失拡大によって返済を迫られることもあります。
信用買い残は平均売買高の約1日分
9月7日から11日までの5営業日の売買高は、合計約4,786万株でした。1日平均では約957万株です。
信用買い残944万4,400株は、1日平均売買高の約0.99日分に相当します。キオクシアの約0.45日分と比べると、日々の売買量に対する負担は明らかに大きくなっています。
同じ1,000万株前後の信用買い残でも、普段どの程度の株数が売買されているかによって、市場が残高を吸収するまでの負担は変わります。
任天堂には、Nintendo Switch 2の販売拡大など、信用買いを呼び込みやすい成長期待があります。動画では、次の大きな確認材料として11月5日の第2四半期決算を挙げています。
長期的な成長期待を理由に押し目を買うこと自体は不自然ではありません。しかし、期待が強いほど、信用取引で先回りする投資家も増えやすくなります。
決算や新作への期待が株価を押し上げる前に信用買い残だけが増え続けると、好材料が発表された時点で利益確定売りや、買値まで戻った投資家による売りが出る可能性があります。
反対に、決算まで株価が安定しながら信用買い残が減少すれば、同じ好材料でも需給面の負担は小さくなります。任天堂では決算内容だけでなく、決算へ向かう過程で944万株の信用買い残がどのように変化するかを見る必要があります。
三菱重工は売買高に対する信用買い残が最も重い
3銘柄のなかで、信用買い残を売買高との比率で見た場合に最も重いのが三菱重工業です。
8月28日の終値は4,025円、9月11日は3,705円で、この間に株価は約8%下落しました。
同じ期間に信用買い残は2,017万6,000株から2,339万7,800株へ増え、増加率は約16%となりました。
一方、信用売り残は123万400株から72万3,100株へ大幅に減少しています。その結果、信用倍率は16.40倍から32.36倍まで上昇しました。
任天堂と同じように、株価が下がるほど信用買いが増えています。さらに三菱重工では、将来の買い戻し需要になり得る信用売り残も大きく減っています。
信用倍率が上昇する理由には、信用買い残が増える場合と、信用売り残が減る場合があります。三菱重工では、その両方が同時に起きました。したがって、32.36倍という高い倍率は、単に分母となる信用売り残が減っただけではありません。
1日平均売買高の約1.77日分
9月11日までの1週間の売買高は約6,619万株で、1日平均では約1,324万株でした。
信用買い残2,339万7,800株は、1日平均売買高の約1.77日分に相当します。
3銘柄を比較すると、キオクシアが約0.45日分、任天堂が約0.99日分、三菱重工が約1.77日分です。三菱重工は、普段の売買量に対する信用買い残の負担が最も大きくなっています。
株価は年初来高値から9月18日の3,879円まで約26%下落していますが、信用買い残は8月末から9月11日にかけて増加しています。高値から約4分の1下がったからといって、信用取引の整理が完了したとはいえません。
業績の強さと短期的な需給は別問題
三菱重工には、業績面の支えがあります。動画によると、第1四半期の受注高は2兆224億円、事業利益は196億円となりました。通期では受注高7兆円、売上収益5兆4,000億円、事業利益5,400億円を見込んでいます。
また、9月2日にはNECとの防衛分野における戦略的提携も発表されました。
こうした材料があるため、株価が下落しても「長期的には強い」と考える投資家の信用買いが入りやすくなります。
しかし、企業の成長性と短期的な株価需給は別問題です。業績が強くても、信用買い残が膨らんだ価格帯では、株価が反発するたびに返済売りが出ることがあります。
三菱重工では、すでに知られている好業績が新たな現物買いを呼び込み、2,339万株を超える信用買い残から出る売りを吸収できるかが重要です。
株価が戻っても信用買い残が減らなければ、上昇がさらに新しい信用買いを呼び込んでいる可能性があります。反対に、株価が戻りながら信用買い残が減るのであれば、同じ上昇でも需給の中身は大きく異なります。
3銘柄の信用需給を比較
3銘柄はいずれも株価下落後に信用買い残が再び増えていますが、需給面の負担は同じではありません。
キオクシアの信用倍率は19.97倍ですが、信用買い残は1日平均売買高の約0.45日分です。任天堂は信用倍率12.47倍で約0.99日分、三菱重工は信用倍率32.36倍で約1.77日分となっています。
信用倍率だけを見るとキオクシアの需給もかなり重く見えますが、日々の売買高を考慮すると、信用買い残を吸収できる余地は比較的大きいと考えられます。
一方、三菱重工は信用倍率が最も高いだけでなく、売買高に対する信用買い残の比率も最も大きくなっています。
さらに、最新のデータでは3銘柄すべてで信用売り残が減少しています。信用売りが多ければ、株価上昇時の買い戻しが上昇を加速させる場合があります。しかし今回は、信用買い残が重くなる一方で、買い戻しの原動力となり得る信用売り残が減る方向へ動いています。
ただし、信用売り残は証券会社の信用取引における売り建て残高です。海外機関投資家などが株式を借りて行う空売りを含め、空売り全体を表しているわけではありません。
信用売り残が減ったからといって、すべての空売りが減った、あるいは踏み上げの可能性がなくなったと断定することはできません。信用倍率は将来の株価を当てる数字ではなく、信用取引のポジションが買いと売りのどちらへ偏っているかを測る指標として利用するのが適切です。
株価と信用買い残の4つの組み合わせ
信用需給を分析するときは、株価と信用買い残の変化を4つの組み合わせに分けると分かりやすくなります。
株価が下がり、信用買い残も減る
損失を抱えた投資家の返済売りなどによって、ポジションの整理が進んでいる状態です。株価には下落圧力がかかりますが、将来の売り圧力は軽くなる方向へ向かっています。
株価が下がり、信用買い残が増える
今回の任天堂や三菱重工で目立った形です。安値を拾う信用買いが増え、新たな将来の売り圧力を作っている可能性があります。
その後さらに株価が下がれば含み損が拡大し、反発すれば買値付近で返済売りが出やすくなります。
株価が上がり、信用買い残が減る
需給改善として最も分かりやすい状態です。株価が反発するなかで信用取引の返済売りを消化し、同時に残高も軽くなっているためです。
株価が上がり、信用買い残も増える
上昇相場が新しいレバレッジ資金を呼び込んでいる状態です。上昇自体は強く見えますが、次の下落時には増加した信用買い残が売り圧力へ変わる可能性があります。
この4つを区別することで、「株価が上がったから需給も改善した」「大きく下がったから投げ売りは終わった」といった、価格だけに基づく判断を避けやすくなります。
信用需給の改善を判断する4つのポイント
株価が横ばいでも信用買い残が減っているか
株価が大きく崩れていないにもかかわらず、信用買い残が数週間続けて減少している場合は、ポジション整理が進んでいる可能性があります。
投げ売りによって株価が下がるのではなく、利益確定や現引きなどを含めて残高が減っているのであれば、需給面では改善と考えやすくなります。
信用倍率が低下した理由を確認する
信用倍率が低下しても、信用売り残だけが急増している場合は、今度は将来の買い戻しによる踏み上げの可能性が高まります。
今回確認したいのは、信用買い残そのものが減少し、それに伴って信用倍率も改善する状態です。
反発時に出来高が増えているか
株価が大きく反発しても、出来高が少なければ、上の価格帯に残っている信用買いを十分に吸収できていない可能性があります。
反対に、通常を大きく上回る出来高で戻り売りを消化し、その後に公表される週次信用買い残も減っていれば、需給改善の説得力は高まります。
安値を更新するたびに信用買いが増えていないか
株価が以前の安値を下回るたびに信用買い残が増える場合、底値を当てようとする資金が積み上がっている状態です。
この動きが何週間も続くと、異なる価格帯に含み損を抱えた信用買いが階段状に残ります。その結果、株価が反発するたびに、それぞれの価格帯から返済売りが出やすくなります。
短期的な需給を見るうえでは、「高値から何%下がったか」だけでなく、安値を更新する過程で信用買い残が増えたのか、減ったのかを見ることが重要です。
まとめ
キオクシア、任天堂、三菱重工はいずれも株価が大きく下落しましたが、その後の信用需給は軽くなったとは限りません。3銘柄に共通しているのは、株価が下落するなかで信用買い残が再び増え、信用売り残が減少していることです。
ただし、信用買い残の負担は銘柄ごとに異なります。キオクシアは信用倍率こそ高いものの、売買高が非常に大きく、信用買い残は1日平均売買高の約0.45日分です。任天堂は約0.99日分、三菱重工は約1.77日分となっており、売買高に対する負担は三菱重工が最も大きくなっています。
高値からの下落率は、過去に株価がどれだけ下がったかを示します。信用買い残の増減は、その下落過程でどのようなポジションが積み上がったかを示します。そして売買高は、残ったポジションを市場がどの程度の速さで消化できるかを示します。
今後の反発局面では、株価だけでなく信用買い残の変化を確認する必要があります。株価が戻りながら信用買い残が減れば、売り圧力を吸収しながら上昇している可能性があります。反対に、株価が反発しても信用買い残が増え続ける場合、価格は戻っていても需給の重さは残ります。
「大きく下がったから安い」と「信用需給が軽くなった」は別の判断です。暴落後の銘柄を分析するときは、下落率、信用残高、売買高を分けて確認することで、単に安く見える株と、実際に需給が改善した株を区別しやすくなります。
なお、本記事は動画の内容を整理したものであり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。信用残高は公表までに時間差があり、その後の株価や残高の変化によって分析結果も変わる点に注意が必要です。


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