本記事は、YouTube動画『世界的な長期金利上昇で何が起きる?債券投資と今後の投資戦略』の内容を基に構成しています。
世界各国で長期金利が上昇しています。動画では、この動きは一時的な変化ではなく、財政赤字や国債の増発、インフレ、中央銀行による国債購入の縮小などを背景とした構造的な変化である可能性が指摘されています。
金利上昇は、債券市場だけの問題ではありません。株式の理論価値や為替相場、金価格、原油価格など、幅広い金融市場に影響します。
特に注意したいのが、金利が上昇すると債券価格が下落するという関係です。国債は一般的に安全資産と呼ばれますが、途中で売却する場合や債券ETFを購入する場合には、金利変動によって大きな損失が発生する可能性があります。
世界各国で長期金利が上昇している
動画では、日本、米国、ドイツ、英国、オーストラリアなど、複数の国で30年国債の利回りが上昇している状況が紹介されています。
動画内の説明によると、日本の30年国債利回りは4%を超え、米国の30年国債利回りも5%を超える水準まで上昇しています。ドイツについても、長期国債の利回りが4%近くまで上昇しているとされています。
このように、長期金利の上昇は米国や日本だけで起きている現象ではありません。世界共通の問題になりつつあるというのが、動画の基本的な見方です。
金利上昇の背景には、単一の原因があるわけではありません。インフレ期待、財政赤字、国債の増発、中央銀行の金融政策、経済成長率など、複数の要因が重なっています。
長期金利が上昇する主な原因
インフレ期待の高まり
将来も物価上昇が続くと投資家が予想すれば、固定された利息を受け取る債券の魅力は低下します。
例えば、年間3%の利息を受け取れる債券を保有していても、物価が年間5%上昇すれば、実質的な購買力は低下します。そのため、投資家はインフレによる損失を補うために、より高い利回りを求めるようになります。
既存の債券価格が下がると、その債券の利回りは上昇します。これが、インフレ期待の高まりが長期金利を押し上げる基本的な仕組みです。
財政赤字と国債増発
動画で特に重要な要因として挙げられているのが、各国の財政赤字と国債発行額の増加です。
政府が防衛、社会保障、エネルギー対策、インフラ整備などの支出を増やす一方、税収だけでは必要な資金を賄えない場合、国債を発行して資金を調達します。
しかし、市場に供給される国債が増えれば、その国債を購入する投資家も必要になります。国債の供給が需要を上回れば、価格を下げ、利回りを上げなければ買い手を集めにくくなります。
アメリカ、日本、英国、フランスなどで財政への懸念が強まっていることが、世界的な長期金利上昇の重要な背景になっているというのが動画の説明です。
中央銀行による国債購入の縮小
量的緩和が行われていた時期には、中央銀行が大量の国債を購入していました。この大きな買い需要によって国債価格は支えられ、利回りは低い水準に抑えられていました。
しかし、中央銀行が国債購入を縮小したり、保有資産を減らしたりする量的引き締めに転じると、これまでのような買い需要を期待できなくなります。
銀行、保険会社、年金基金なども、無条件で国債の保有を増やすわけではありません。今後さらに金利が上昇すると予想すれば、現在の価格で国債を買うことを避ける可能性があります。
政府が国債発行を増やす一方、中央銀行や機関投資家の需要が弱くなれば、国債利回りには上昇圧力がかかります。
タームプレミアムの上昇
タームプレミアムとは、投資家が長期債を保有する際に要求する上乗せ金利のことです。
満期までの期間が長い債券ほど、将来のインフレや財政悪化、政策変更などの影響を受けやすくなります。投資家から見れば、30年間にわたって資金を固定するには、それに見合う利回りが必要です。
国の財政に対する不安が強まれば、投資家は「この利回りでは長期国債を買えない」と考えるようになります。その結果、長期債に求められる利回りが上昇します。
動画では、国債の供給増加とタームプレミアムの上昇が、今後の長期金利を考えるうえで特に重要な要因として挙げられています。
経済成長とAI投資
経済が成長し、企業によるAIや設備への投資が拡大すれば、資金需要が増加します。成長率が高い経済では、一般的に金利も上昇しやすくなります。
景気拡大による金利上昇であれば、企業利益の増加を伴うため、株式市場がある程度耐えられる可能性があります。ただし、財政不安やインフレ悪化による金利上昇とは意味が異なります。
30年国債利回りに注目すべき理由
金融市場では米国10年国債利回りが注目されることが多いものの、動画では30年国債利回りも確認すべきだと説明されています。
30年国債の利回りには、長期的なインフレ期待、財政リスク、国債供給、実質金利、タームプレミアムなどが反映されます。
短期金利は中央銀行の政策金利に強く影響されます。一方、30年国債の利回りは、中央銀行の政策だけではなく、市場参加者が将来の経済や財政をどのように評価しているかを示します。
そのため、中央銀行が利下げを行ったとしても、財政不安や国債増発への懸念が残れば、10年や30年の国債利回りが十分に低下しない可能性があります。
「政策金利が下がれば長期金利も必ず下がる」とは限らない点に注意が必要です。
日本の金利上昇が海外市場に与える影響
日本の金利上昇は、日本国内だけの問題ではありません。
日本の銀行、保険会社、年金基金などは、米国債や欧州国債を含む多額の海外債券を保有しています。これまでは日本国内の金利が低かったため、為替ヘッジのコストを負担しても、海外債券に投資する理由がありました。
しかし、日本国債の利回りが上昇し、海外債券との利回り差が縮小すれば、為替リスクやヘッジコストを負担してまで海外債券を保有する魅力が低下します。
その結果、日本の機関投資家が海外債券を売却し、日本国債へ資金を戻す可能性があります。米国債や欧州国債の売却が増えれば、海外の債券価格が下落し、その国の長期金利がさらに上昇する要因になります。
また、海外資産を売却して日本円に戻す過程では、円買いが発生する可能性もあります。このように、日本の金利上昇は海外の債券市場や為替市場にも波及します。
欧州でも金利上昇圧力が続く可能性
動画では、欧州についても、インフレだけでなく財政支出の拡大が長期金利を押し上げる可能性があると説明されています。
欧州各国では、防衛、エネルギー、インフラなどへの支出が増えています。こうした政策を国債発行によって賄えば、国債の供給増加につながります。
英国でも、財政問題と高金利が同時に意識されています。ただし、インフレを抑えるために金利を上げすぎれば、景気や企業活動に悪影響を与えます。
中央銀行はインフレを抑えたい一方で、景気を必要以上に悪化させることも避けなければなりません。財政不安と景気減速が同時に進めば、金融政策の判断は一段と難しくなります。
世界的な金利上昇を生む4つの波
動画では、現在の金利上昇が4段階の波によって進んでいると整理されています。
第1の波は、中央銀行による利上げです。インフレを抑えるために政策金利が引き上げられ、短期金利を中心に市場金利が上昇します。
第2の波は、エネルギー価格、賃金、関税、供給制約などによるインフレです。企業のコストが増加し、物価上昇が長期化すれば、長期金利にも上昇圧力がかかります。
第3の波は、財政赤字と国債増発です。政府が国債を大量に発行すれば、投資家に買ってもらうため、より高い利回りが必要になります。
第4の波は、タームプレミアムの上昇です。投資家が国債の長期保有に対して、以前よりも高い利回りを要求する段階です。
動画では、第1と第2の波に続き、現在は第3と第4の波が本格化するかどうかが重要な局面であると指摘されています。
高金利が長期化した場合の株式市場への影響
金利が上昇すると、将来の利益を現在価値に換算するときの割引率も上昇します。その結果、株式の理論価値は低下しやすくなります。
特に影響を受けやすいのが、PERが高い成長株です。AI関連株、半導体株、ハイテク株、小型グロース株などは、将来の成長期待を先に株価へ織り込んでいるため、金利上昇に弱い傾向があります。
一方、金融、エネルギー、資源、バリュー、高配当、安定したキャッシュフローを持つ企業などは、高PERの成長株と比べれば相対的に耐えやすい可能性があります。
ただし、これはあくまで相対的な比較です。景気後退によって企業利益そのものが減少すれば、割安株や高配当株であっても株価が下落する可能性があります。
為替は金利差だけでは判断できない
米国金利が高止まりすれば、一般的にはドルを支える要因になります。しかし、米国の財政赤字や政府債務への不安が強まれば、ドルに対する信認が低下し、ドル安要因になる可能性もあります。
一方、日本の金利が上昇すれば、日米金利差が縮小し、円高につながる可能性があります。
ただし、為替相場は金利差だけで決まるものではありません。財政への信認、インフレ率、経済成長率、中央銀行の政策、投資家のリスク選好なども影響します。
日米の金利そのものに加えて、金利差がどの方向へ動くのかを確認する必要があります。
金利上昇局面におけるゴールドと原油
一般的に、実質金利の上昇は金利を生まないゴールドにとって逆風です。債券で高い実質利回りを得られるなら、ゴールドを保有する機会費用が大きくなるためです。
しかし動画では、現在の局面は単純ではないと説明されています。
米国の財政不安、中央銀行による金購入、ドル資産からの分散、地政学的リスクなどは、ゴールドを支える要因になります。そのため、高金利であってもゴールドが底堅く推移する可能性があるという見方です。
原油価格についても注意が必要です。中東情勢や供給不安によって原油価格が上昇すれば、インフレが再加速する可能性があります。
インフレが強まれば長期金利が上昇し、株式のPERが低下しやすくなります。原油高は、物価、金利、企業利益を通じて金融市場全体に影響を与えます。
長期債への投資には慎重な判断が必要
動画では、現在の環境で長期債を積極的に購入することには慎重な立場が示されています。
1年から2年程度の短期債であれば、満期まで保有しやすく、償還後にその時点の金利で再投資できます。金利がさらに上昇しても、比較的短い期間で高い利回りの商品に乗り換えられます。
一方、10年、20年、30年といった長期債は、金利変動による価格への影響が大きくなります。現在の利回りが以前より魅力的に見えても、その後さらに金利が上昇すれば、債券価格は下落します。
どうしても長期債へ投資する場合は、一度に購入するのではなく、金利の動きを確認しながら段階的に購入する考え方が紹介されています。
ただし、これは動画内で示された見解です。実際の判断では、満期まで保有できるか、途中売却の可能性があるか、為替リスクを負うかなどを個別に検討する必要があります。
債券投資で重要なデュレーションとは
デュレーションは、債券価格が金利変動からどの程度影響を受けるかを示す指標です。
簡略化すると、デュレーションが8年の債券では、市場金利が1%上昇した場合、債券価格が約8%下落する可能性があります。反対に、市場金利が1%低下すれば、価格が約8%上昇する可能性があります。
実際の価格変動は、利回りの水準、クーポン、残存期間、コンベクシティなどの影響を受けるため、必ず正確に8%動くわけではありません。それでも、金利に対するおおよその価格感応度を理解する指標として有用です。
長期債は利息収入を得られる商品である一方、金利低下を見込む投資という側面も持っています。特に長期債ETFには満期がなく、保有する債券が継続的に入れ替えられるため、個別債券を満期まで保有する場合とは性質が異なります。
「国債だから価格も安定している」と考え、デュレーションを理解せずに長期債ETFへ大きな資金を投入することには注意が必要です。
良い金利上昇と悪い金利上昇の違い
金利上昇には、経済にとって比較的良い上昇と悪い上昇があります。
景気が拡大し、企業業績や賃金が改善し、実質的な経済成長率が高まった結果として金利が上昇するのが、いわゆる良い金利上昇です。企業利益が増えていれば、株式市場も一定の金利上昇に耐えられます。
一方、財政悪化、国債増発、インフレ、タームプレミアムの上昇によって長期金利が上がるのが、悪い金利上昇です。
企業の成長とは関係なく資金調達コストや割引率だけが上昇するため、株式市場や債券市場にとって厳しい環境になります。
動画では、現在の長期金利上昇には、悪い金利上昇の要素が多く含まれているとの見方が示されています。
最も警戒すべきスタグフレーション
動画で最悪のシナリオとして挙げられているのが、スタグフレーションです。
スタグフレーションとは、景気が悪化しているにもかかわらず、物価上昇が続く状態です。
通常の景気後退であれば、中央銀行は利下げによって経済を支えることができます。しかし、インフレ率が高いままでは、景気が悪化しても簡単には利下げできません。
長期金利が高止まりし、株式のPERが低下する一方、景気悪化によって企業利益も減少すれば、株式市場には二重の下落圧力がかかります。
さらに、金利上昇によって長期債価格も下落していれば、株式と債券の両方が弱くなる可能性があります。このような局面では、現金や短期国債など、価格変動の比較的小さい資産でしのぐ必要があるというのが動画の見方です。
現在の環境を前提とした投資の考え方
動画では、株式について、すべてを売却するのではなく、一定の保有を維持しながら高PER銘柄への偏りを避ける考え方が示されています。
米国株だけに集中せず、TOPIXや欧州株、新興国株などへ分散する選択肢も挙げられています。ただし、地域を分けるだけで十分な分散になるとは限らず、各市場の金利、為替、企業業績も確認する必要があります。
債券については、無理に長期債を買わず、投資する場合は短期債を中心に慎重に進める考え方です。10年債へ投資する場合も一括購入を避け、金利上昇に合わせて段階的に購入する方法が紹介されています。
20年債や30年債については、インフレのピークアウトや景気後退など、長期金利が低下しやすい条件が確認されてから検討するという立場です。
ゴールドは、株式や債券とは異なるリスク要因を持つ資産として、インフレ、財政不安、地政学的リスクなどに対する分散手段として保有する考え方が示されています。
もっとも、これらは動画出演者の相場観に基づく投資戦略であり、将来の成果を保証するものではありません。投資期間、損失許容度、資産状況によって適切な配分は異なります。
国債の安全性と投資商品の安全性は別
国債が安全資産と呼ばれるのは、主に発行国が満期に元本や利息を支払う信用力を持っているという意味です。
しかし、投資商品として価格が下がらないという意味ではありません。
個別国債を満期まで保有できれば、発行体が債務不履行にならない限り、原則として額面金額が償還されます。一方、途中で売却する場合は、その時点の市場金利によって価格が変動します。
債券ETFも市場価格が変動するため、購入価格を下回ることがあります。海外債券の場合は、これに為替変動や為替ヘッジコストも加わります。
信用面で安全性が高いことと、投資元本が常に安定していることは分けて考える必要があります。
まとめ
世界的な長期金利上昇の背景には、インフレだけでなく、財政赤字、国債増発、中央銀行による国債購入の縮小、タームプレミアムの上昇などがあります。
こうした要因が構造的なものであれば、インフレが多少落ち着いたとしても、長期金利が以前の低い水準へ簡単に戻るとは限りません。
高金利が長期化すれば、高PERの成長株には逆風となります。長期債も金利上昇によって大きく値下がりする可能性があるため、国債という理由だけで安全だと判断することはできません。
債券投資では、利回りだけでなく、残存期間、デュレーション、途中売却の可能性、為替リスク、ヘッジコストまで確認する必要があります。
動画では、債券へ投資する場合は短期債を中心にし、長期債についてはインフレや長期金利の動向を確認しながら慎重に判断する姿勢が示されています。
今後の重要なポイントは、中央銀行が政策金利を引き下げたとき、本当に10年や30年の国債利回りも低下するのかという点です。財政不安や国債の供給増加が続けば、利下げ後も長期金利が高止まりする可能性があります。
債券を安全資産として保有する場合でも、「誰が発行しているか」だけでなく、「どの年限を、どの価格で、どのような商品を通じて保有するのか」まで考えることが重要です。


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