本記事は、YouTube動画『日経平均806円高でも全面高ではない?AI大型株に資金回帰、自動運転株が急落した理由』の内容を基に構成しています。
日経平均株価が5日ぶりに大きく反発しました。しかし、その数字だけを見て「日本株全体が上昇した」と考えると、この日の相場を正しく理解できないかもしれません。
日経平均は前日比806円46銭高となった一方、TOPIXはわずか0.03%高にとどまりました。さらに、東証33業種のうち多くの業種が下落しています。
つまり、この日の市場では幅広い銘柄が買われたのではなく、ソフトバンクグループをはじめとするAI関連の大型株に資金が集中していました。
その反対側で急落したのが、それまで上昇を続けていた自動運転関連株です。
今回の動画では、この大きな資金移動について、
「米国の金利」
「自動運転株」
「お金の行き先」
という3つの視点から解説しています。
日経平均は5日ぶりに反発、終値は806円46銭高
この日の日経平均株価は、前日比806円46銭高となり、5日ぶりに反発しました。上げ幅はこの週で最大となっています。
一見すると、日本株全体が大きく上昇したように見えます。
しかし、TOPIXの上昇率はわずか0.03%でした。
日経平均とTOPIXの動きにこれだけ差が出たことが、この日の相場を理解するうえで非常に重要です。
特に大きく上昇したのがソフトバンクグループでした。一方、自動運転関連として注目されていた銘柄ではストップ安になるものもありました。
動画では、この動きを「逃げ場に集まっていたお金が本流へ戻った」と表現しています。
つまり、それまで大型株から逃げてテーマ性の強い小型株へ向かっていた資金が、再びAI関連の大型株などへ戻ったという見方です。
理由1:米国の利上げ懸念が後退した
最初の背景として挙げられているのが、米国の金利です。
動画では、FRB関係者の発言によって、インフレ鈍化への期待が強まったと説明されています。
最近の経済データにはディスインフレ、つまり物価上昇の勢いが弱まっている兆候が見られ、この傾向が続けば金融政策にも影響する可能性があります。
米国市場では、このところ追加利上げが行われるのかどうかが大きな焦点になっていました。
しかし、利上げを急ぐ必要性が薄れているとの見方が強まり、米国の長期金利は4.80%から4.74%へ低下しました。
雇用は弱まりつつある
米国の経済指標も、利上げ懸念の後退を後押ししました。
新規失業保険申請件数は20万6000件となり、市場予想をやや上回りました。
一方、サービス業の景況感は55.4と比較的強い数字でしたが、雇用関連の項目は弱い状態が続いています。
つまり、
「景気そのものはそれほど悪くないが、雇用は少しずつ緩んでいる」
という状態です。
景気が急激に悪化しているわけではない一方で、インフレを再加速させるほど雇用市場が強いわけでもありません。
そのため、追加利上げを急ぐ必要性が薄れてきたというわけです。
金利低下はAI・グロース株に追い風
金利が低下すると、一般的に成長株には追い風になります。
株価を考える際には、その企業が将来生み出す利益を現在の価値に換算します。
このとき使われるのが「割引率」です。
金利が高くなると割引率も高くなり、遠い将来に得られる利益の現在価値は小さくなります。
逆に金利が下がると、将来の利益の現在価値が大きくなります。
そのため、利益の多くを将来の成長に期待されているAI関連株やグロース株ほど、金利低下の恩恵を受けやすくなります。
米国市場ではニューヨークダウが624ドル高となり、NASDAQ総合指数も1.40%上昇しました。
ただし、半導体株全体が一様に買われたわけではありません。
動画では、半導体そのものというよりも、AIソフトウェアやAIサービスに関連する銘柄へ資金が向かった点を指摘しています。
東京市場ではソフトバンクグループに買いが集中
米国市場でAI関連株への期待が強まった流れを、日本市場で最も強く受けたのがソフトバンクグループでした。
ソフトバンクグループの終値は5590円となり、11.78%上昇しました。
動画によると、この銘柄だけで日経平均を473円87銭押し上げています。
この日の日経平均の上昇幅の約59%を、ソフトバンクグループ1社が作った計算です。
動画ではこれを、
「クラス全体の合計点の約6割を、1人の生徒が取ったようなもの」
と例えています。
続いて日経平均を押し上げたのがアドバンテスト、ファーストリテイリングなどです。
上位銘柄による押し上げ効果を合計すると、この日の日経平均全体の上昇幅を上回るほどでした。
つまり、それ以外の銘柄を合計するとマイナスだったということです。
AI関連でもすべての半導体株が上昇したわけではない
この日は「AI関連が買われた」とはいっても、半導体関連株が全面的に上昇したわけではありません。
AIへの投資先を持つ企業や、AI向け部品を供給する企業に買いが集中しました。
一方、半導体製造装置関連では東京エレクトロンがほぼ横ばいとなり、レーザーテックは下落しました。
つまり、「半導体」という大きなくくりで買われたのではなく、AIというテーマとの距離が近い企業が選別されていたことになります。
業種別では情報・通信業が大きく上昇しました。
一方で、下落した業種の方が多く、原油価格の下落などを背景として資源関連株にも売りが出ています。
三菱商事も下落しました。
この日の追い風は、市場全体に吹いていたのではありません。
AIや通信など、一部の大型株だけに強く吹いていたという状況です。
円高も日本株の重荷に
日本市場では為替の動きも重要でした。
ドル円は東京時間に156円前後で推移していましたが、その前には大きく円高方向へ動いていました。
背景には、日銀による追加利上げへの期待などがあります。
動画では、日本の長期金利が上昇し、市場では今後の日銀の利上げをかなり織り込んでいる状況が説明されています。
円高は、海外で稼ぐ日本の輸出企業にとって一般的に逆風になります。
そのため、輸送用機器は下落し、トヨタ自動車も1.25%安となりました。
これも、日経平均が大きく上昇したにもかかわらず、TOPIXがほとんど上がらなかった理由の1つです。
動画では、この日の市場を、
「AI大型株という一部の棚だけが売れた百貨店」
のような状態だと表現しています。
米雇用統計が次の焦点に
動画公開時点では、米国の雇用統計の発表も控えていました。
市場予想では雇用者数が5万5000人程度増えるとされ、失業率は4.1%が予想されていました。
ここで重要なのは、今回の株高の前提となった「米国の利上げ懸念後退」が、雇用統計の結果によって変わる可能性があることです。
雇用が予想以上に強ければ、FRBが金融引き締めを続けるという見方が再び強まる可能性があります。
反対に雇用が弱ければ、金利低下を通じてグロース株への追い風が続く可能性があります。
理由2:自動運転株で急激な逆回転が発生
この日のもう1つの大きな特徴が、自動運転関連株の急落です。
日経平均は、この日までの4営業日で2191円下落していました。
ところが、その下落相場の中で自動運転関連の小型株は逆に大きく上昇していました。
動画では、複数の自動運転関連銘柄について、この4日間で30%から70%を超える上昇を記録した例が紹介されています。
一方、同じ期間にAIや半導体の大型株は下落していました。
つまり、大型株から逃げた資金の一部が、自動運転というテーマ株へ集中していた可能性があります。
下げ相場の「逃げ場」となっていた自動運転株
自動運転株は、相場全体が弱いときに逆行高する場面がありました。
動画では日経平均と自動運転関連6社の値動きの相関を計算しており、その相関係数は-0.46だったとしています。
また、AI・半導体大型株との相関も-0.41でした。
相関係数がマイナスということは、一方が上がるともう一方が下がりやすい傾向があったことを意味します。
日経平均やAI大型株が下落する日に自動運転株が買われる。
反対に大型株が戻る日に、自動運転株が売られる。
今回、その逆回転が一気に発生しました。
なお、動画では、この相関について終値を基に独自計算した参考値であることも説明されています。
自動運転株はストップ安へ
それまで急騰していた自動運転関連銘柄の一部は、この日ストップ安となりました。
ある銘柄では終値が2870円となり、前日比700円安でした。
値幅制限いっぱいまで下落した形です。
日本株には1日に動ける株価の上限と下限が設定されています。
これが「値幅制限」です。
株価ごとに1日に上昇・下落できる金額が決められており、その下限まで売られることをストップ安といいます。
この銘柄は朝方には3790円まで上昇し、上場来高値を更新していました。
しかし、そこから終値まで920円下落しました。
つまり、朝には過熱的に買われていた銘柄が、わずか数時間後には値幅制限いっぱいまで売られたことになります。
別の自動運転関連銘柄でも高値から安値まで約27.9%動くなど、極めて激しい値動きとなりました。
なぜ自動運転株はここまで買われていたのか
自動運転株が注目された背景には、いくつかの企業発表があります。
動画では、運転支援からレベル4の自動運転まで対応する技術基盤に関する協業や、トヨタ自動車が高度運転支援システムの導入方針を示したことなどが紹介されています。
トヨタは2028年以降、市街地でも手放し運転ができる水準を目指す方針だとされています。
こうしたニュースをきっかけとして、自動運転というテーマに一気に投資家の注目が集まりました。
その結果、短期間で株価が数倍になる銘柄まで現れています。
急落の原因は悪材料ではなく利益確定売り
重要なのは、この日の自動運転株の急落について、大きな悪材料が出たわけではない点です。
動画では企業側の適時開示も確認されていますが、株価急落につながるような重大な悪材料は確認されていません。
市場では、短期間にあまりにも急激な上昇が続いたため、週末を前に利益確定売りが膨らんだとの見方が紹介されています。
つまり、
「悪材料が出たから売られた」
というより、
「上がりすぎたため、その反動で売られた」
という側面が強かったと考えられます。
ただし、自動運転というテーマそのものが終わったのか、それとも単なる調整なのかは、この時点では判断できません。
動画でも、今後の値動きを確認する必要があるとしています。
「逃げ場」から「本流」へ資金が戻った
今回の値動きを理解するキーワードが「逃げ場から本流へ」です。
大型株が売られていた局面では、投資家の資金が自動運転などの小型テーマ株へ向かっていました。
しかし米国の金利上昇懸念が弱まり、AI関連大型株が再び買える環境になると、それまで逃げ場として使われていた自動運転株から資金が抜けました。
動画では、この状態を、
「満員の非常口から人が一斉に本館へ戻るときの混雑」
に例えています。
資金が一斉に移動すると、資金が抜ける側の値動きは非常に激しくなります。
これが自動運転株の急落につながったという見方です。
理由3:自動運転株から出たお金はどこへ向かったのか
自動運転株が売られたからといって、その資金が株式市場そのものから消えたわけではありません。
この日のグロース市場は上昇しました。
グロース250指数は2.67%高となり、日経平均の上昇率を上回りました。
グロース市場では上昇銘柄数が下落銘柄数を大きく上回っています。
つまり、「小型成長株が全部売られた」のではありません。
自動運転というテーマから別の成長株へ資金が移ったのです。
上場直後の小型株へ資金が流入
動画では、自動運転株を売却した個人投資家の資金の一部が、上場してから日が浅い企業などへ向かった可能性が紹介されています。
上場したばかりの企業には、1つ特徴があります。
過去の高値で株を購入し、含み損を抱えている投資家が比較的少ないことです。
株価が上昇したときに「やれやれ売り」が出にくいため、投資資金が集中すると株価が大きく上昇する場合があります。
実際、この日はグロース市場で複数の銘柄がストップ高となりました。
AI関連や創薬関連など、別のテーマにも資金が広がっています。
動画ではこれを、
「同じ教室の中で座る席が変わっただけ」
と表現しています。
株式市場から資金が逃げたのではなく、投資家が持つ銘柄を入れ替えたということです。
AIソフトウェア株にも資金が回帰
大型株だけでなく、AIやソフトウェア関連株にも買いが入りました。
動画ではマネーフォワードが8.72%上昇したことなどが紹介されています。
米国のソフトウェア企業の好決算を受け、日本のソフトウェア株にも買いが波及した形です。
また、暗号資産関連株や物流ロボット関連株などにも資金が向かいました。
金利上昇への警戒感が薄れると、投資家はリスクを取りやすくなります。
その結果、自動運転株から出た資金が、
AI大型株
上場直後の小型株
ソフトウェア株
暗号資産関連株
その他の成長株
などへ分散したと考えられます。
円高メリット株も買われた
円高によって恩恵を受ける企業にも買いが入りました。
動画では業務スーパーを展開する神戸物産が4.55%上昇したことが紹介されています。
海外から商品を輸入する企業にとっては、円高になるほど海外からの仕入れ価格を抑えやすくなります。
一方、自動車など輸出企業には円高が逆風になります。
同じ円高でも、企業によって業績への影響は正反対になるということです。
売買代金は減っていない、「お金の向き」が変わった
この日の東証プライム市場の売買代金は7兆5800億円でした。
動画では、
「お金の量は減っていない。向きが変わっただけ」
と説明しています。
この考え方は株式市場を見るうえで重要です。
株価が急落している銘柄があると、「市場から資金が逃げている」と考えがちです。
しかし実際には、その資金が別の銘柄へ移動しているだけという場合があります。
今回の場合、自動運転株からAI大型株や別のグロース株へ資金が移ったと見ることができます。
アジア市場も上昇
米国金利の低下は日本株だけではなく、アジア市場全体にもプラスとなりました。
韓国の株価指数は1.64%高、台湾市場も1.51%高、香港市場も1.99%高となりました。
金利低下によって投資家がリスク資産を買いやすくなったことが、アジア株全体の上昇につながったと考えられます。
「日経平均806円高=全面高」ではない
この日の相場で最も注意したいのが、日経平均の数字だけでは市場全体を判断できないことです。
日経平均は806円以上上昇しました。
しかし、東証33業種では下落した業種の方が多く、TOPIXはほぼ横ばいでした。
さらに、JPX日経インデックス400も前日比で下落しています。
なぜこれほど差が生まれたのでしょうか。
理由は指数の作り方です。
日経平均とTOPIXでは計算方法が違う
日経平均は225銘柄から構成されています。
特徴は、株価の高い企業ほど指数への影響が大きくなりやすいことです。
そのため、ソフトバンクグループのような日経平均への寄与度が大きい企業が急騰すると、他の多くの銘柄が下落していても日経平均が大きく上昇することがあります。
実際、この日はソフトバンクグループ1社だけで、日経平均の上昇幅の約6割を作りました。
一方のTOPIXは、企業の時価総額を基準として構成される指数です。
そのため、1社だけが指数全体の大部分を動かすような状況は起こりにくくなっています。
動画では、
「1部屋だけ照明を最大にして、家全体が明るいと言っているようなもの」
と例えています。
日経平均が大幅高だったこと自体は事実です。
しかし、それが日本株全体の全面高を意味するわけではありません。
株式市場を見るときは指数の「中身」を確認する
初心者ほど、ニュースで報じられる日経平均の上げ下げだけを見て市場全体の状態を判断してしまいがちです。
しかし今回のように、指数を構成するごく一部の銘柄が大きく上昇するだけで、日経平均全体が大幅高になることがあります。
そのため相場を見る際には、
日経平均
TOPIX
値上がり・値下がり銘柄数
業種別指数
売買代金
日経平均への寄与度
などを合わせて確認することが重要です。
日経平均が上がっているのに自分の保有株が下がっているからといって、不思議なことが起きているわけではありません。
単純に「指数を押し上げている銘柄」と「自分が持っている銘柄」が違う可能性があります。
まとめ
この日の東京株式市場では、日経平均が5日ぶりに大きく反発しました。
しかし、その上昇は市場全体に広がったものではなく、ソフトバンクグループを中心としたAI関連大型株への資金集中による部分が大きいものでした。
背景にあったのは、米国で利上げ懸念が後退し、長期金利が低下したことです。金利低下は将来の成長期待が大きいAI株やグロース株にとって追い風になります。
一方、それまで下落相場の「逃げ場」として急騰していた自動運転関連株では、一転して激しい利益確定売りが発生しました。ストップ安になる銘柄も現れています。
ただし、自動運転株から抜けた資金が市場から消えたわけではありません。
AI大型株や上場直後のグロース株、ソフトウェア株などへ資金が移動しました。
この日の相場を一言で表すなら、
「市場からお金が逃げた日ではなく、お金の行き先が大きく変わった日」
だったといえます。
そして、もう1つ重要なのが「日経平均が上昇したからといって、日本株全体が上昇しているとは限らない」という点です。
日経平均806円高という大きな数字の裏では、多くの業種が下落し、自動運転関連株ではストップ安も発生していました。
株式市場を見るときには指数の数字だけではなく、「どの銘柄が指数を動かしているのか」「どの業種からどの業種へ資金が移動しているのか」まで確認することで、相場の実態が見えやすくなります。


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