本記事は、YouTube動画『急落が止まったゴールドの現状と金価格が反発するための条件』の内容を基に構成しています。
ゴールド価格は大幅な下落を経験した後、一定の価格帯で下げ止まる動きを見せています。しかし、下落が止まったからといって、すぐに本格的な上昇相場へ戻るとは限りません。
現在のゴールド市場では、米国の金利、インフレ見通し、金ETFの資金動向、中央銀行による購入など、複数の要因が複雑に絡み合っています。
動画では、ゴールド価格が本格的に反発するための条件として、次の3つが挙げられています。
1つ目は実質金利の低下、2つ目は金ETFへの資金流入、3つ目は中央銀行による金需要の継続です。
本記事では、急落後のゴールド市場で何が起きているのかを確認しながら、反発に必要な条件と今後考えられるシナリオを詳しく解説します。
ゴールド価格の急落を招いた実質金利の上昇
現在のゴールド市場を理解するうえで、最も重要な指標の1つが米国の実質金利です。
実質金利とは、名目金利からインフレ率を差し引いた金利を指します。例えば、債券の金利が5%で、物価上昇率が3%だった場合、実質的な利回りは2%となります。
ゴールドそのものには、株式の配当や債券の利息のような定期的な収益がありません。そのため、実質金利が上昇すると、投資家にとってはゴールドよりも利息を受け取れる債券の魅力が高まります。
動画によると、米国の10年物国債を基準とした実質金利は、2026年2月以降に急上昇し、7月時点では2.43%まで上昇しました。
それ以前は2%を下回る1.8%前後で推移していたため、利息を生まないゴールドにとっても、それほど大きな逆風にはなっていませんでした。しかし、実質金利が2%を大きく上回る水準まで上昇すると、投資家がゴールドから債券へ資金を移しやすくなります。
この実質金利の上昇と重なるように、ゴールド価格は2月につけた高値から約30%下落しました。金利が上昇するとゴールドが下落しやすいという、教科書的な関係が表れた形です。
原油価格の上昇がインフレ懸念を再燃させる
実質金利が上昇した背景には、原油価格の上昇があります。
原油価格が上がると、ガソリン価格だけでなく、物流費や製造コストも上昇します。特に国土が広く、自動車への依存度が高い米国では、原油価格の変動が家計や企業活動に広く影響します。
輸送コストが上がれば、食料品や日用品を含むさまざまな商品の価格にも上昇圧力がかかります。その結果、市場ではインフレが再び加速するのではないかという警戒感が強まります。
インフレ懸念が高まれば、米連邦準備制度理事会、いわゆるFRBは簡単に利下げできなくなります。それどころか、状況によっては追加利上げが必要になるとの見方も出てきます。
動画の時点では、次回のFOMCで政策金利が据え置かれる確率が62%、利上げが実施される確率が37%程度まで織り込まれていました。
さらに、その後のFOMCでは追加利上げを予想する割合が高まり、年末から翌年にかけて合計0.5%程度の利上げが行われるとの見通しも意識されていました。
政策金利の見通しが引き上げられると、長期金利や実質金利も上昇しやすくなります。これが現在のゴールド価格を押し下げる大きな要因となっています。
市場の長期的なインフレ予想は落ち着いている
一方で、実際のインフレ見通しが極端に悪化しているわけではありません。
動画では、2年先の予想インフレ率が7月時点で2.45%まで低下していることが紹介されています。FRBが目標としている2%に近い水準であり、市場が長期的な高インフレを予想している状況ではありません。
また、10年間の平均インフレ率予想を示す10年ブレークイーブン・インフレ率も、7月27日時点で2.21%となっていました。
ブレークイーブン・インフレ率とは、通常の米国債利回りと、物価連動国債であるTIPSの利回りとの差から算出される指標です。債券市場が将来のインフレ率をどの程度と見込んでいるのかを確認するために利用されます。
この指標が2%台前半にとどまっていることから、市場は今後10年間にわたってインフレが大幅に上昇し続けるとは考えていません。
そのため、原油価格が落ち着き、実際の物価指標でもインフレ鈍化が確認されれば、現在高まっている利上げ観測が後退する可能性があります。
利上げが見送られ、長期金利や実質金利が低下へ向かうことが、ゴールド価格反発の第1の条件となります。
金利とゴールド価格には逆相関の傾向がある
過去の値動きを見ても、米国の長期金利とゴールド価格には反対方向へ動く傾向があります。
2022年以降、FRBがインフレ抑制のために急速な利上げを進めた局面では、ゴールド価格は長期間にわたって伸び悩みました。
その後、2023年後半に利下げ観測が高まり、長期金利が低下し始めると、ゴールドは長く上値を抑えられていた価格帯を突破しました。さらに実際の利下げが始まると、地政学リスクの高まりも加わり、ゴールド価格は大きく上昇しました。
しかし、2026年2月以降は再び長期金利が上昇しています。米国の10年国債利回りが4.7%という高い水準を記録したことで、ゴールド価格には強い下押し圧力がかかりました。
それでも動画では、ゴールド価格が重要な節目で下げ止まっている点も指摘されています。
長期的に見れば、ゴールドは2022年ごろの水準から大きく上昇しています。現在の下落は大幅ではあるものの、長期上昇後の調整局面と見ることもできます。
ただし、本格的な上昇へ戻るためには、やはり長期金利と実質金利の低下が必要です。
金ETFからの資金流出が価格の重荷に
ゴールド価格反発の第2の条件は、金ETFへの資金流入です。
ETFとは、証券取引所に上場している投資信託です。金ETFを購入すれば、投資家は現物の金を直接保管することなく、ゴールド価格に連動した運用を行えます。
金ETFへの資金流入が増えれば、運用会社による金の購入需要が発生し、ゴールド価格の上昇要因になります。反対に、ETFから資金が流出すると、価格の下落圧力となります。
金利と金ETFへの資金流入には、基本的に逆の関係があります。
政策金利が低下すると、利息を生まないゴールドの相対的な魅力が高まり、ETFへ資金が入りやすくなります。一方、政策金利が上昇すると、投資家はゴールドよりも債券や預金などを選びやすくなります。
動画では、金ETFの資金動向が2026年2月を境に悪化したことが紹介されています。
5月には世界の金ETFから約20億ドルが流出しました。さらに6月には、流出額が約89億ドルへ拡大しています。
特に北米からの流出が大きく、6月だけで約55億ドル、上半期全体では約77億ドルが流出しました。世界的な金ETFからの資金流出の多くを、米国の投資家による売却が占めている状況です。
背景には、FRBの金融政策見通しが利下げから利上げ方向へ修正されたことや、原油高と地政学リスクによってインフレ懸念が強まったことがあります。
実質金利が上昇すれば、利息を生まないゴールドを保有する機会損失が大きくなります。その結果、投資家は金ETFを売却し、株式や債券などの別の資産へ資金を移します。
今後、金ETFへの資金流入が再びプラスへ転じるかどうかが、ゴールド価格の反発を判断する重要な材料となります。
ゴールド需要の中心は中央銀行から投資家へ変化
これまでゴールド価格の上昇要因として注目されてきたのが、世界の中央銀行による購入です。
ただし、動画で紹介されたデータによると、2025年の中央銀行による金購入量は863トンでした。2024年の1,092トンと比べると、購入量は約20%減少しています。
中央銀行の購入が減ったからといって、ゴールド需要全体が弱くなったわけではありません。
2025年の投資需要は前年比84%増加し、2,175トンを記録しました。金地金や金貨の需要も1,374トンとなり、12年ぶりの高水準に達しています。
つまり、ゴールド需要の中心は中央銀行だけではなく、個人や機関投資家による投資需要へと移りつつあります。
ただし、投資家の資金は中央銀行の準備資産と比べて短期的に動きやすいという特徴があります。
価格が上昇しているときには資金が集まりやすい一方、金利が上昇したり、ゴールド価格が下落したりすると、ETFから急速に資金が流出することがあります。
投資需要がゴールド価格を支える割合が高まったことで、以前よりも価格変動が大きくなりやすい点には注意が必要です。
中央銀行による金購入は今後も続くのか
ゴールド価格反発の第3の条件は、中央銀行による需要の継続です。
短期的な投資資金が金ETFから流出する一方、中央銀行は外貨準備の分散や通貨リスクへの備えとして、引き続き金を保有しています。
中央銀行による購入は、短期的な値上がりを狙ったものではありません。米ドルへの依存度を下げたり、経済制裁や通貨危機に備えたりするための長期的な資産配分として行われています。
動画では、2026年第1四半期に最も多く金を購入した中央銀行として、ポーランドが紹介されています。
ポーランドは第1四半期に31トンを購入し、4月にも14トンを追加購入しました。同国はロシアと地理的に近く、安全保障上の備えとして金準備を700トンまで増やす方針を掲げています。
現在の保有量は約580トンとされており、国家方針に沿って継続的に購入していると考えられます。
中国は米ドル依存を下げるため金を購入
中国も金を積極的に購入している国の1つです。
動画によると、中国は2026年5月に10トンの金を買い増しました。これにより、20カ月連続で購入量が売却量を上回る状態が続いています。
10トンという月間購入量は、2024年12月以来の大きさでした。
中国は短期的なゴールド価格ではなく、外貨準備の分散を目的として購入を続けていると考えられます。
中国は米国債の保有を減らす一方で、金の保有を増やしています。これは米ドルへの依存度を低下させ、準備資産を多様化する動きの一環です。
ゴールド価格が下落している局面でも買い増しを続けていることから、中国の需要は長期的な価格の下支えになる可能性があります。
トルコとロシアが金を売却する理由
すべての中央銀行が金を購入しているわけではありません。
動画では、トルコとロシアが金を売却している国として紹介されています。
トルコは2026年5月に3トン、年初からの累計では81トンを売却しました。ただし、これはゴールドの将来性に弱気になったためとは限りません。
トルコでは自国通貨リラの防衛や、外貨流動性の確保が必要となっています。そのため、価格が上昇していた金を売却し、通貨防衛などに利用していると考えられます。
ロシアも2026年5月に6トン、年初からの累計で34トンを売却しました。
ロシアはウクライナ侵攻を受けて経済制裁が続いており、外貨調達や財政支出への対応が必要です。戦費や財政悪化に対応するため、流動性の高い準備資産である金を現金化している可能性があります。
つまり、トルコやロシアが金を売却しているのは、ゴールドを重要視しなくなったからではありません。金が危機時に利用できる準備資産だからこそ、必要な場面で取り崩していると考えられます。
中央銀行全体の金重視は変わっていない
一部の国が売却しているものの、中央銀行全体で見れば、金を重視する流れは続いています。
動画で紹介された中央銀行向けの調査では、回答者の95%が、今後12カ月で世界の中央銀行が保有する金準備は増加すると予想していました。
残りの5%も「変わらない」と回答しており、減少すると予想した回答はありませんでした。
ただし、この調査結果は、すべての中央銀行が自国の保有量を必ず増やすという意味ではありません。
国によって経済状況や政策目的は異なるため、必要に応じて売却することもあります。それでも、世界全体として準備資産に占める金の重要性が高まる方向性は変わっていないと考えられます。
中央銀行の長期的な需要が継続すれば、金ETFから短期資金が流出する局面でも、ゴールド価格の下値を支える要因となります。
ゴールド価格の今後を3つのシナリオで考える
動画では、ゴールド価格の今後について、強気、基本、弱気の3つのシナリオが示されています。
強気シナリオ
強気シナリオでは、原油価格が下落し、インフレ鈍化が明確になります。
インフレ懸念が後退すれば、FRBによる追加利上げ観測も弱まります。長期金利と実質金利が低下し、金ETFへの資金流入が再開すれば、ゴールド価格は数カ月以内に反発する可能性があります。
この場合、現在の下値支持帯を起点として、比較的早い段階で上昇へ転じる展開が考えられます。
基本シナリオ
動画で最も可能性が高いとされているのが、緩やかな回復を想定する基本シナリオです。
インフレは徐々に鈍化するものの、FRBはすぐに利下げへ転換せず、慎重な姿勢を維持します。
追加利上げは見送られる一方、FRB当局者によるインフレ警戒発言は続く可能性があります。そのため、金利が急低下するのではなく、時間をかけて落ち着いていく展開です。
この場合、ゴールド価格はすぐに急騰するのではなく、年後半から年末にかけて緩やかに反発していく可能性があります。
弱気シナリオ
弱気シナリオでは、原油価格の再上昇や地政学リスクの長期化によって、インフレが再加速します。
FRBが市場の予想どおり追加利上げを実施すれば、米ドルと実質金利が上昇します。利息を生まないゴールドには、さらに強い逆風が吹くことになります。
この場合、ゴールドの反発時期は先送りされ、現在の下値支持帯を割り込んで、さらに低い価格帯で推移する可能性もあります。
今すぐ急反発する状況ではない
動画の基本的な見方は、ゴールドが今すぐ急反発する状況ではないというものです。
まず確認したいのは、FRBが追加利上げを見送ることです。その後、債券市場が金融引き締めの終了を織り込み、長期金利と実質金利が低下する必要があります。
さらに、米国を中心とした金ETFの資金流出が止まり、資金流入へ転じることも重要です。
これらの条件がそろえば、年後半から年末にかけてゴールド価格が徐々に反発する可能性があります。
一方、原油価格が再び上昇し、インフレが加速した場合は、反発が遅れるだけでなく、さらに価格が下落する可能性もあります。
現在のゴールド投資では時間分散が重要
動画では、現在のように不安定な相場で一度に大きな金額を投資するのではなく、定期的な買い付けと限定的なスポット購入を組み合わせる方法が紹介されています。
動画の発信者は、米国の金ETFであるGLDMを定期的に購入しています。さらに価格が大きく下落した場面では、月1回程度に限定してスポット購入を行っています。
直近では、6月25日にGLDMを120株、約9,548ドル分購入したと説明しています。日本円では約155万円に相当する金額です。
ただし、これは毎月の定期購入とは別の追加投資です。スポット購入を何度も繰り返すのではなく、一定の間隔を空けながら実施しています。
ゴールドは大幅に下落したとはいえ、2024年以降の短期間で大きく上昇しました。長期的な上昇相場の途中で、さらに調整が続く可能性もあります。
そのため、価格が下がったからといって焦って大量購入するのではなく、時間を分散しながら少しずつ購入する考え方が重要です。
米国ETFと国内ETFの違い
ゴールドへ投資する方法としては、米国ETFだけでなく、東京証券取引所に上場している国内ETFもあります。
動画では、447Aと448Aという国内ETFが紹介されています。両者の主な違いは、為替ヘッジの有無です。
国内ETFは日本円で購入できるため、米ドルを直接保有したり、米ドルから米国ETFを購入したりする必要がありません。
外貨を使って金融商品を売買すると、為替差益の計算や税務処理が必要になる場合があります。こうした手続きを複雑に感じる人にとっては、日本円で直接購入できる国内ETFが選択肢になります。
一方、米国ETFのGLDMは、比較的低い運用コストでゴールドへ投資できる商品です。
どちらが適しているかは、為替ヘッジの必要性、運用コスト、利用している証券会社、税務処理への対応などによって異なります。
「ゴルナス」は本当に分散投資になるのか
動画の後半では、ゴールドとNASDAQ100を組み合わせた、いわゆる「ゴルナス」と呼ばれる商品についても解説されています。
この商品は、先物取引を利用してNASDAQ100とゴールドの両方へ投資します。
例えば100万円を投資した場合、NASDAQ100に100万円、ゴールドに100万円の合計200万円相当の値動きを目指す仕組みです。
通常のバランスファンドとは異なり、実質的に元本の200%相当を運用するため、価格変動も大きくなります。
メリットは、NASDAQ100の成長性とゴールドの分散効果を1つの商品で狙えることです。
しかし、NASDAQ100とゴールドが同時に下落する局面では、大きな損失が発生する可能性があります。
金利上昇局面では両方が下がる可能性がある
一般的に、ゴールドと米国株の相関は低いとされています。しかし、相関が低いからといって、必ず反対方向へ動くわけではありません。
米国株が下落したときにゴールドが上昇するとは限らず、両方が下落したり、一方が横ばいになったりすることもあります。
特に実質金利が上昇する局面では、ゴールドとNASDAQ100の両方に逆風が吹く可能性があります。
ゴールドは利息を生まないため、実質金利の上昇に弱い資産です。一方、NASDAQ100に多く含まれる成長株は、将来利益の現在価値が金利上昇によって低下するため、長期金利の上昇に弱い傾向があります。
つまり、金利上昇局面では分散効果が働かず、ゴールドとNASDAQ100が同時に下落することがあります。
ゴールドとNASDAQ100を別々に保有する考え方
動画の発信者は、ゴルナスについて「混ぜるな危険」と評価し、自身では購入していないと説明しています。
理由は、ゴールドとNASDAQ100を別々に保有したほうが、それぞれの相場環境に応じて売買しやすいからです。
ゴールドだけが大きく下がっているのであれば、ゴールドを追加購入できます。反対にNASDAQ100の下落幅が大きければ、NASDAQ100を優先して購入できます。
両方が1つの商品に組み込まれていると、それぞれの価格状況に応じた追加購入や利益確定が難しくなります。
また、先物を利用して200%相当の投資を行うため、現物資産を保有する場合よりも値動きが大きくなる可能性があります。
一方、NASDAQ100とゴールドを長期的に保有したいものの、自分で配分を調整するのが難しい人にとっては、選択肢になり得ます。
購入する場合は、一般的な分散型投資信託とは異なり、実質的にレバレッジを利用している商品であることを理解しておく必要があります。
ゴールドの反発を判断するために確認したい指標
今後、ゴールド価格の反発を判断する際には、価格だけを見るのではなく、実質金利や資金フローを確認することが重要です。
まず、米国の10年物実質金利が低下しているかを確認します。次に、原油価格や消費者物価指数などを見て、インフレが落ち着いているかを確認します。
さらに、FRBの金融政策が追加利上げから据え置きへ変化しているか、金ETFへの資金流入が再開しているかも重要です。
中央銀行については、中国やポーランドをはじめとする主要国が購入を続けているかを確認します。
これらの指標が同じ方向へ動き始めれば、ゴールド価格が本格的な反発局面へ入る可能性が高まります。
まとめ
急落後のゴールド価格が本格的に反発するためには、実


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