【2027年度税制改正】NISAがさらに進化?売却枠の当年復活・損益通算拡大など金融庁の要望を徹底解説

本記事は、YouTube動画『金融庁がついに本気を出してきた。2027年度税制改正要望を徹底解説』の内容を基に構成しています。

金融庁が2026年8月末に公表した2027年度、令和9年度の税制改正要望で、個人投資家にとって注目度の高い内容が相次いで示されました。

中でも大きいのが、NISAで保有する商品を売却した場合、空いた非課税保有限度額を翌年ではなく「売却した年」に再利用できるようにするという要望です。

そのほかにも、つみたて投資枠の対象商品の拡大、銀行預金やデリバティブ取引を含めた損益通算の拡大、子育て世帯を対象とした生命保険料控除の恒久化など、家計や資産形成に直接関係する内容が盛り込まれています。

ただし、ここで重要なのは、これらは現時点ではあくまで金融庁から提出された「税制改正要望」だという点です。すでに制度変更が決定したわけではありません。

今回は、金融庁がどのような制度変更を求めているのか、そして実現した場合に私たちの資産運用がどう変わる可能性があるのかを詳しく見ていきます。

目次

金融庁の2027年度税制改正要望とは

今回公表された資料は、金融庁が「2027年度の税制では、この部分を変更してほしい」と政府に求める税制改正要望です。

税制改正は、金融庁が要望したからといって、そのまま決定するわけではありません。

今後、各省庁から提出された要望を基に、秋以降に財務省や与党の税制調査会などで議論が進められます。その後、年末に税制改正大綱がまとめられ、法案化されて国会で審議されるという流れになります。

つまり、2026年8月末時点では、まだ制度改正の「スタート地点」です。

一方で、税制改正要望を見ることで、金融庁が今後どの方向に制度を変えていきたいのかを先回りして知ることができます。

今回の要望で特に注目されるテーマは、NISA制度のさらなる柔軟化です。

NISAで売却した非課税枠を「その年」に復活させる案

今回の税制改正要望の中で、個人投資家にとって最も大きな変更になる可能性があるのが、NISAの非課税保有限度額の当年中の復活です。

現在の新NISAでは、生涯に利用できる非課税保有限度額が1,800万円となっています。

NISA口座で購入した商品を売却すると、その商品の取得金額、つまり簿価に相当する非課税枠は復活します。

しかし、現在の制度では、その枠を再利用できるのは翌年からです。

金融庁は今回、このルールを変更し、商品を売却した年のうちに非課税枠を復活させることを要望しています。

600万円分を売却した場合はどうなるのか

例えば、NISAの非課税保有限度額1,800万円をすべて使っている人が、その中から取得価格600万円分の商品を売却したとします。

現行制度では、その600万円分の非課税枠を再び利用できるようになるのは翌年です。

これに対して金融庁の要望が実現すれば、600万円分を売った年のうちに非課税保有限度額が復活することになります。

ただし、ここには重要な制限があります。

新NISAには年間投資枠があり、

つみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円、合計で年間360万円までとなっています。

そのため、600万円分の非課税枠が復活したからといって、その年に新たに600万円をNISAへ投資できるわけではありません。

年間投資枠の範囲内である最大360万円までという制限は残ります。

この違いは非常に重要です。

NISA商品の「引っ越し」がしやすくなる

では、非課税枠がその年に復活するようになると、何が便利になるのでしょうか。

動画では、大きなメリットとして「商品の引っ越し」が挙げられています。

NISAは10年、20年、場合によっては30年以上利用する可能性のある制度です。

これだけ長い期間があれば、現在よりも低コストで魅力的な投資信託やETFが登場する可能性は十分あります。

また、自分自身の状況も変わります。

投資を始めた当初と比べて収入が増えたり、家族構成が変わったり、資産額が大きくなったり、年齢を重ねたりすることで、適切な資産配分が変化することもあります。

そのときに「現在保有している商品を売却して、別の商品に変更したい」と考えるのは自然なことです。

今回の変更が実現すれば、こうしたNISA商品の乗り換えが現在よりも行いやすくなる可能性があります。

長期投資では信託報酬の差が大きくなる

動画では、コストの違いによる影響について具体例も紹介されています。

例として挙げられているのが、iFreeNEXT FANG+インデックスです。

動画によれば、信託報酬は年0.7755%で、2018年1月から2026年8月まで毎月5万円ずつ積み立てた場合、投資元本は、

5万円×104回=520万円

となります。

動画内の試算では、過去の月次リターンを利用すると、この520万円が約2,400万円まで成長したとされています。

ここで、仮に同じ値動きをする商品で信託報酬が年0.3%の商品が登場したとします。

信託報酬の差は年0.4755%です。

一見すると、それほど大きな差には見えません。

しかし動画内の計算では、同じ条件で積み立てた場合、

信託報酬0.7755%の商品では約2,410万円、信託報酬0.3%の商品では約2,480万円となり、約70万円の差になると説明されています。

なぜこれほど差が大きくなるのでしょうか。

信託報酬は、最初に投資した元本だけにかかるわけではないからです。

資産が1,000万円に増えれば1,000万円に対してコストがかかり、2,000万円になれば2,000万円に対してコストが発生します。

資産が成長するほど、小さなコスト差の影響が大きくなっていきます。

長期投資で信託報酬が重視される理由の1つがここにあります。

NISAの復活枠は「時価」ではなく「簿価」で計算される

今回の制度を理解するうえで、もう1つ非常に重要なのが「簿価」です。

NISAの1,800万円という非課税保有限度額は、現在の評価額ではなく、購入したときの取得価格で管理されています。

例えば、合計520万円をNISAで投資し、その資産が2,400万円まで値上がりしたとします。

2,400万円すべてを売却した場合、2,400万円分のNISA枠が復活するわけではありません。

復活するのは、もともと投資した520万円分です。

2,400万円は現在の時価ですが、NISA枠の管理に使われるのは520万円という簿価だからです。

反対に言えば、NISAで1,800万円を投資した資産が将来的に1億円まで増えたとしても、増加した部分について非課税枠を追加で消費するわけではありません。

取得価格1,800万円の範囲で購入していれば、その後に発生した値上がり益についてもNISAの非課税メリットを受けることができます。

半分だけ売却した場合はどうなるのか

先ほどの例で、520万円を投資して2,400万円になった資産のうち、半分の1,200万円分を売却したとします。

単純化すると、売却部分に対応する取得価格は約260万円です。

したがって、復活するNISAの非課税保有限度額も約260万円になります。

金融庁の要望が実現すれば、この260万円分の枠を売却した年のうちに再利用できる可能性があります。

より低コストの商品が登場した場合などに、売却した資金の一部を新しい商品へ移すという使い方がしやすくなります。

NISAの年間360万円という上限は残る

当年中に非課税枠が復活するようになったとしても、NISAの年間投資枠までなくなるわけではありません。

ここは誤解しやすいポイントです。

例えば、取得価格520万円の商品をすべて売却し、520万円分の非課税保有限度額が復活したとします。

それでも、その年に利用できる年間投資枠が360万円までであれば、520万円すべてを新しい商品へ投資することはできません。

最大360万円までとなり、残り160万円については翌年以降に投資する必要があります。

さらに、NISAを簿価ベースで1,800万円すべて使っている人が全商品を乗り換えようとした場合、年間360万円ずつ投資しても、

1,800万円÷360万円=5年

となるため、すべてを入れ替えるには最短でも5年間かかります。

金融庁が2029年を見据えて制度変更を検討する理由

動画では、金融庁の資料に記載された「2029年以降」という時期にも注目しています。

新NISAは2024年にスタートしました。

年間360万円ずつ最大額を投資した場合、

2024年で360万円、2025年で720万円、2026年で1,080万円、2027年で1,440万円、2028年で1,800万円となります。

つまり、新NISA開始直後から毎年上限まで投資している人が、生涯投資枠1,800万円を初めて使い切るのが2028年です。

そのため、売却した非課税枠を再利用したいという需要が本格的に発生するのは2029年以降になると考えられます。

動画では、金融庁が2026年の段階から制度変更を要望している背景として、投資家の予見可能性を高めることに加え、金融機関がシステム対応するための時間を確保する狙いがあると説明しています。

言い換えれば、金融庁はすでに2029年以降のNISA利用まで見据えて制度設計を考えているということです。

iDeCoではすでに商品をスイッチングできる

動画では、NISAとiDeCoの違いについても触れています。

iDeCoでは、口座内で保有している商品を売却し、別の商品へ買い替える「スイッチング」が可能です。

NISAの場合、仮に非課税枠の当年復活が実現しても、年間投資枠360万円という上限が残るため、1,800万円分の商品をすべて乗り換えようとすると最短でも5年かかります。

これに対してiDeCoでは、口座内の商品をまとめてスイッチングすることができます。

そのため動画では、今回の当年復活を「1歩前進」と評価したうえで、将来的にはNISAでもiDeCoのように、より自由に商品をスイッチングできる仕組みを期待したいとしています。

つみたて投資枠の対象商品も拡大へ

NISAについて、もう1つ金融庁が要望しているのが、つみたて投資枠の対象商品の拡大です。

現在、指定指数に連動しないETFについては、つみたて投資枠の対象とするための要件が十分に整備されていません。

そこで金融庁は、どのようなETFであればつみたて投資枠の対象にできるのか、制度上のルールを整備することを要望しています。

これによって、将来的にはアクティブETFなどがつみたて投資枠の対象になる可能性があります。

商品数が増えても重要なのは「中身」と「コスト」

ただし、動画では「対象商品が増えたから買えばいい」という話ではないと指摘しています。

重要なのは、そのETFや投資信託が何に投資しているのか、そしてコストがどの程度なのかを確認することです。

NISAには1,800万円という貴重な非課税保有限度額があります。

例えば100万円を投資して110万円になれば、利益10万円が非課税になります。

一方、100万円が200万円になれば、利益100万円が非課税です。

同じ100万円のNISA枠を使っても、値上がりした資産ほど非課税になる利益額は大きくなります。

そのため、長期的な資産成長を目的とする投資家の中には、債券ファンドよりも株式インデックスファンドなどを優先する人が多くなります。

ETFや投資信託の選択肢が増えること自体は歓迎できますが、「NISA対象だから良い商品」と判断するのではなく、投資対象や信託報酬などを確認することが重要です。

預金・デリバティブまで損益通算できるようになる可能性

NISA以外でも注目されるのが、「金融所得課税の一体化」です。

金融庁は今回、金融商品の損益通算の範囲をデリバティブ取引や預貯金まで広げることを要望しています。

現在は、株式や投資信託、デリバティブ、預貯金などで税制上の扱いが分かれています。

金融庁は、これらをより広い範囲でまとめて損益通算できるようにしたいと考えています。

銀行預金の利息と株の損失を相殺できる可能性

普通預金や定期預金の利息には、現在20.315%の税金がかかります。

基本的には、利息を受け取る時点で税金が差し引かれます。

例えば、銀行預金から年間5万円の利息を受け取ったとします。

単純計算では約1万円の税金がかかります。

同じ年に課税口座で保有する株式や投資信託で5万円の損失が発生していたとしても、現在は預金利息と株式などの損失をそのまま相殺することはできません。

家計全体で見れば、

5万円の利益-5万円の損失=0円

ですが、税制上は別々に扱われます。

金融庁は今回、預貯金についても損益通算の対象に広げることを要望しています。

かつての超低金利時代であれば預金利息そのものが非常に少なかったため、影響は限定的でした。

しかし預金金利が上昇すれば、受け取る利息も増えます。

そのため、将来的にはこの制度変更の恩恵を受ける人も増えてくる可能性があります。

FXや先物、オプションの損益通算も注目

金融庁が損益通算の対象拡大を求めている「デリバティブ」には、身近なものではFXや日経225先物、オプション、商品先物などがあります。

簡単に言えば、株価や為替などの値動きを利用して取引する金融商品の一種です。

例えば、株式で100万円の損失が発生したとします。

一方、株価暴落への備えとして保有していたオプションで100万円の利益が出たとします。

家計全体で見れば、

100万円の利益-100万円の損失=0円

です。

しかし現在は、株式と先物取引などでは損益通算の仕組みが分かれているため、単純に相殺することができません。

金融庁の要望が実現し、この2つを損益通算できるようになれば、先物やオプションなどを利用する投資家にとって大きな変更になります。

特にデリバティブ取引は利益も損失も大きくなりやすいため、損益通算の範囲が広がる意味は小さくありません。

ビットコインはどうなるのか

動画では、暗号資産についても触れています。

現物のビットコインはデリバティブではありません。

一方で、暗号資産を対象とした証拠金取引など、暗号資産デリバティブは存在します。

ただし、暗号資産については別の枠組みで税制改正の議論が進んでいるため、今回の金融庁資料におけるデリバティブについては、まずFX、先物、オプションなどをイメージすると分かりやすいと説明されています。

子育て世帯の生命保険料控除を恒久化する案

子育て世帯に関係する要望もあります。

金融庁が求めているのが、生命保険料控除制度の拡充措置の恒久化です。

23歳未満の扶養親族がいる場合、一般生命保険料控除について、所得税の控除上限が通常4万円のところ6万円となり、2万円上乗せされる措置があります。

動画によると、これは現在、2026年と2027年の時限措置となっています。

金融庁は、この拡充措置を恒久化することを求めています。

ここで注意したいのは、2万円分の税金がそのまま戻ってくるわけではないことです。

増えるのは「所得控除額」です。

例えば所得税率20%であれば、

2万円×20%=4,000円

となり、所得税の減税効果は概算で4,000円です。

所得税率30%であれば、およそ6,000円となります。

1年間だけを見ると非常に大きな金額ではありませんが、子どもがいる期間に毎年適用されるのであれば、家計にとって一定のメリットになる可能性があります。

話題になった「個人向け国債のNISA化」は今回見送り?

2026年には、個人向け国債をNISAの対象にしてはどうかという議論も話題になりました。

動画では、8月25日時点でも個人向け国債のNISA対象化についてさまざまな意見や提案があることが政府側から示されていたと説明しています。

しかし、今回の金融庁の税制改正要望では、個人向け国債のNISA対象化は明確には盛り込まれていませんでした。

資料の中には国債に関する税制を検討する項目自体はあるものの、今回のNISA関連要望の中心には入っていないということです。

したがって、個人向け国債のNISA対象化については、少なくとも今回の税制改正要望では大きく前進したとは言いにくい状況です。

「プラチナNISA」も今回の要望には登場せず

もう1つ以前から話題になっていたのが「プラチナNISA」です。

これは65歳以上の高齢者などを対象に、現在のNISAでは対象外となっている毎月分配型投資信託なども利用可能にする構想として議論されてきたものです。

しかし動画によれば、今回の金融庁の要望書にはプラチナNISAに関する記載は見当たりませんでした。

動画では、老後に毎月一定額の現金が必要なのであれば、毎月分配型投資信託をNISAへ追加する方法だけでなく、低コストのインデックスファンドなどを保有しながら必要な金額だけ定期売却する方法もあると指摘しています。

さらに、今回要望されている非課税枠の当年復活が実現すれば、資産を取り崩したあとに、残したい資産を別の商品へ移すことも現在より行いやすくなります。

毎月分配型商品を増やすより、既存の低コスト商品をより自由に使える制度にする方がシンプルではないかというのが動画で示された考え方です。

新NISAは「買う制度」から「使う制度」へ進化する可能性

今回の金融庁の税制改正要望を俯瞰すると、NISA制度の方向性に変化が見えてきます。

2024年に新NISAが始まり、生涯1,800万円という大きな非課税保有限度額が設けられました。

その後、対象商品の範囲が見直され、債券中心の投資信託にも道が広がっています。

今回さらにETFの対象拡大が検討され、売却した非課税保有限度額を当年中に復活させるという要望まで出てきました。

これまでNISAでは「1,800万円の非課税枠をどう埋めるか」に注目が集まりがちでした。

しかし今後は、

資産が増えたあとにどう使うのか、老後にどう取り崩すのか、ライフステージに合わせてどう組み換えるのか、より低コストの商品が登場したときにどう乗り換えるのか、

といった「出口」や「資産管理」の部分が重要になってきます。

金融庁も、NISAを単に投資商品を買うための制度ではなく、長期間にわたって資産形成や資産管理に利用できる制度へ発展させようとしているように見えます。

まとめ

今回の2027年度税制改正要望で特に注目されるのは、NISAで売却した商品の取得価格分に相当する非課税保有限度額を、翌年ではなく売却した年のうちに復活させるという案です。

実現すれば、将来さらに低コストの商品が登場した場合や、自分の年齢、家族構成、資産額、投資方針などが変わった場合に、NISA内の商品を現在より柔軟に乗り換えやすくなります。

ただし、年間投資枠360万円という制限は残るため、1,800万円を一度に別の商品へ移すことはできません。この点は注意が必要です。

また、つみたて投資枠の対象ETF拡大、銀行預金やデリバティブまで含めた損益通算の拡大、子育て世帯向け生命保険料控除の恒久化なども今回の重要な要望です。

一方、個人向け国債のNISA対象化や、65歳以上などを対象とした「プラチナNISA」については、今回の要望書では中心的な項目として盛り込まれていませんでした。

そして最も重要なのは、今回発表された内容は「決定事項」ではなく、金融庁から出された税制改正要望だということです。

今後、税制改正大綱や法案の内容によって、実際に導入される制度は変わる可能性があります。

それでも、今回の要望を見る限り、NISAは「非課税枠を使って投資する制度」から、資産を売却したり、組み換えたり、老後に取り崩したりするところまで含めた、より柔軟な資産形成制度へ進化しようとしていることが分かります。

2024年から始まった新NISAは、まだ完成形ではないのかもしれません。今後どこまで制度が柔軟になっていくのか、税制改正の議論を引き続き注視しておく必要がありそうです。

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