本記事は、YouTube動画『キオクシア株が半値になった理由 足りないものはやがて余る』の内容を基に構成しています。
日本を代表する半導体メーカーの1つであるキオクシアの株価が、わずか1ヶ月ほどで半値近くまで下落しました。
一見すると、この値動きは非常に不思議に見えます。キオクシアが手がけるメモリ半導体は、AIブームを背景に世界的な不足が続いています。需要の増加によって販売価格も上昇し、会社の利益は過去最高水準に達しているとされています。
商品が足りず、価格が上がり、会社も大きな利益を出しているのであれば、株価も上昇し続けそうなものです。しかし、実際には株価が大幅に下落しました。
この背景には、現在の業績ではなく、数年後の供給過剰を先回りして織り込む株式市場特有の動きがあります。
動画では、キオクシアの株価下落を入り口として、「足りないものは、やがて余る」という商売の古い法則や、半導体業界で繰り返されるシリコンサイクルについて解説しています。
キオクシアの株価はなぜ急落したのか
キオクシアは、もともと東芝のメモリ事業を母体として誕生した会社です。データ保存に使われるNAND型フラッシュメモリを主力事業としており、世界でも上位に入る大手メーカーです。
AI関連の半導体というと、計算処理を担うGPUなどが注目されがちです。しかし、AIを動かすためには、計算する半導体だけでなく、膨大なデータを保存するためのメモリも必要です。
AIに学習させるデータも、AIが生成した文章や画像、映像も、最終的にはどこかに保存しなければなりません。AIデータセンターの増加に伴い、保存を担うメモリ半導体の需要も急速に拡大しました。
動画によると、メモリの契約価格は短期間で大幅に上昇し、キオクシアの利益も過去最高水準に達しました。株価も上場後に大きく上昇し、一時は年初から約10倍になるほどの急騰を見せたとされています。
ところが、その後の約1ヶ月で株価は半値近くまで下落しました。途中にはストップ安まで売り込まれる日もありました。
特許訴訟や信用取引による買い残の整理など、複数の下落要因が重なった可能性はあります。しかし、動画で最大の転換点として挙げられているのが、韓国の半導体大手SKハイニックスによる新工場建設の発表です。
SKハイニックスの新工場が市場に与えた衝撃
SKハイニックスは、巨額の資金を投じて新たなメモリ工場を建設する方針を発表しました。
ただし、この工場がすぐに稼働するわけではありません。建設が始まるのは先で、本格的に生産が始まるのは2029年ごろとされています。
つまり、工場が動き始めるまでには数年あります。それまではメモリ不足が続き、キオクシアも高い利益を維持できる可能性があります。
それにもかかわらず、新工場の計画が発表された直後から、キオクシアの株価は崩れ始めました。
この値動きを理解するうえで重要なのは、株価が現在の利益だけを評価しているわけではないという点です。株式市場は、数年後の利益や需給環境まで先回りして価格に反映します。
市場が警戒したのは、新工場1つによる生産量の増加だけではありません。高いメモリ価格を見た各メーカーが、一斉に増産競争へ動き始めた可能性です。
新工場の発表は、メモリ業界全体が再び設備投資競争へ向かう合図と受け取られました。
市場は「今がメモリ価格の天井であり、この先には供給過剰が待っている」というシナリオを織り込み始めたのです。
メモリ価格の上昇が需要を壊し始めている
動画では、SKグループ幹部による「現在の価格は異常な水準にあり、正常に戻す必要がある」という趣旨の発言も紹介されています。
売り手である半導体メーカーの経営者が、自社製品の価格を高すぎると表現するのは異例です。高いメモリ価格はメーカーに大きな利益をもたらす一方で、その価格上昇がお客の負担を増やし、最終製品の販売を悪化させるからです。
メモリ価格が上昇すれば、スマートフォンやパソコンの製造コストも高くなります。その結果、スマートフォンやパソコンの販売価格が上がり、消費者が購入を控える可能性があります。
動画では、世界のスマートフォン出荷台数が低い水準まで落ち込んだとの集計にも触れています。
スマートフォンやパソコンが売れなくなれば、それらに搭載されるメモリの注文も減ります。
つまり、メモリ価格の高騰は、単に購入者の負担を増やすだけではありません。高すぎる価格によって需要そのものが減り、最終的にはメモリメーカー自身の売り上げを押し下げる可能性があります。
これは経済学でいう需要破壊に近い動きです。
価格が上がりすぎることで需要が縮小し、同時に高い利益を見た企業が増産へ動くため、供給は増えていきます。需要の減少と供給の増加が重なれば、いずれ価格は下落します。
「足りないものはやがて余る」は本当なのか
動画の中心となるテーマが、「足りないものは、やがて余る」という法則です。
商品が不足して価格が上昇すると、その商品を作れば大きな利益を得られるようになります。高い利益を見た既存企業は生産を増やし、新しい企業も市場へ参入します。
ただし、増産を決めた瞬間に供給量が増えるわけではありません。工場の建設や設備の導入、生産者の育成などには時間がかかります。
その時間差によって、現在の不足を見て始めた増産が、数ヶ月後や数年後にまとめて市場へ出てきます。その頃には需要のピークが過ぎていることもあり、今度は商品が余り始めます。
動画では、この仕組みを理解するための事例として、マスク、卵、コンテナ船が紹介されています。
マスクは約5ヶ月で不足から供給過剰へ
2020年の新型コロナウイルス流行時、世界中でマスクが不足し、価格が急騰しました。
マスクの需要が急増し、製造すれば利益を得られると判断した企業が次々に生産へ参入しました。動画によると、中国だけでも非常に多くの企業がマスク製造に参入したとされています。
マスクの製造ラインは比較的短期間で立ち上げられます。そのため、数週間から数ヶ月で大量のマスクが市場へ供給されるようになりました。
需要が落ち着く一方で供給が急増した結果、約5ヶ月ほどで価格は大きく下落し、多くの新規参入企業が撤退しました。
卵は約1年で最高値から供給過剰へ
米国では鳥インフルエンザの影響で鶏が減少し、卵の価格が過去最高水準まで上昇した時期がありました。
卵の価格が上がれば、生産者は採卵用の鶏を増やそうとします。しかし、ひよこを増やしても、すぐに卵を産み始めるわけではありません。
ひよこが成長して卵を産み始めるまでには、およそ半年程度かかります。
多くの生産者が同じ時期に鶏を増やした結果、約1年後には卵の供給量が増加しました。今度は卵が余り、価格が生産コストを下回るほど下落したと動画では説明されています。
コンテナ船は約2年半後に供給過剰となった
新型コロナウイルスの流行中、世界的な物流混乱によって海上運賃が急騰しました。
高い運賃によって船会社の利益が増えたため、各社は新しいコンテナ船を大量に発注しました。
しかし、大型船の建造には2年から3年かかります。
新しい船が完成して市場へ投入された頃には、コロナ禍による特別な物流需要はすでに落ち着いていました。その一方で船の数は増えたため、海上運賃はピーク時から大幅に下落しました。
余るまでの時間は「作るのにかかる時間」で決まる
マスクは約5ヶ月、卵は約1年、コンテナ船は約2年半で不足から供給過剰へ移りました。
この違いを生み出しているのが、生産能力を増やすまでに必要な時間です。
マスクの製造ラインは比較的短期間で整備できます。卵はひよこが成長するまで半年ほど必要です。大型船の建造には2年から3年かかります。
不足を見て生産を増やしても、実際の商品が市場に届くのは一定期間後です。そして、多くの生産者が同じ価格上昇を見て、同じ時期に増産を始めます。
その結果、供給能力が一斉に立ち上がり、必要以上の商品が市場に流れ込むことになります。
約100年前に発見された「豚サイクル」
この現象は新しいものではありません。
動画では、ドイツの経済学者が豚の価格変動を研究する中で見つけた「豚サイクル」が紹介されています。
豚肉の価格が上がると、農家は利益を得ようとして一斉に子豚を育て始めます。しかし、子豚が成長して出荷できるようになるまでには時間がかかります。
約1年後、多くの農家が育てた豚が一斉に市場へ出荷されると、今度は供給が需要を上回り、価格が暴落します。
価格が下がると農家は生産を減らします。その結果、しばらくすると豚肉が再び不足し、価格が上昇します。
この不足、増産、供給過剰、減産という流れが繰り返されることで、豚肉価格は周期的に上下します。
重要なのは、生産者が現在の価格を見て判断する一方で、商品が市場へ出てくるのは一定期間後になることです。
多くの生産者が同じ高値を見て、同じ判断をし、ほぼ同じ時期に出荷するため、供給量は適正な水準で止まらず、過剰になりやすいのです。
高値を下げる最大の要因は高値そのもの
相場の世界には、「高値の薬は高値」という考え方があります。
価格が高くなれば、生産者は増産しようとします。また、購入者は価格が高すぎる商品を買わなくなったり、代替品へ切り替えたりします。
つまり、高い価格は供給を増やすと同時に、需要を減らします。
その結果、価格上昇そのものが将来の価格下落を引き起こします。
反対に、価格が下がりすぎると企業は生産を減らし、採算の悪い会社は市場から撤退します。供給が減る一方で、安い価格によって需要は回復するため、やがて価格は上昇します。
この循環は、半導体業界でも長年繰り返されてきました。
半導体業界で繰り返される「シリコンサイクル」
半導体工場は、建設を決めてから実際に製品を出荷できるようになるまで、一般的に数年かかります。
半導体価格が上昇して企業の利益が増えると、各メーカーは一斉に設備投資を始めます。
しかし、新しい工場が完成する頃には需要が減速している場合があります。複数の工場が同時期に稼働すると、半導体の供給量が急増し、価格が暴落します。
この好況と不況の繰り返しは、「シリコンサイクル」と呼ばれています。
特にメモリ半導体は、メーカーごとの製品差が比較的小さく、需給の変化が価格に強く反映されやすい製品です。
供給不足のときには価格が急騰しますが、供給過剰になると価格は急落します。
動画では、コロナ禍のパソコン需要によって半導体メーカーが増産した結果、2022年ごろからメモリ価格が大きく下落した例が紹介されています。
この局面ではキオクシアも赤字に陥り、メモリ業界全体が厳しい業績に直面しました。
過去を振り返ると、メモリ業界では好況期の設備投資が、その数年後の供給過剰と価格暴落を招く流れが繰り返されています。
今回、株式市場がキオクシア株を売ったのも、投資家がこの歴史を知っているためだと考えられます。
すべての商品が余るわけではない
「高くなれば増産され、やがて余る」という法則は、多くの商品に当てはまります。
しかし、世の中のすべての商品が供給過剰になるわけではありません。
動画では、供給不足が長期間続く例として、旅客機、サンフランシスコの住宅、日本のバターが挙げられています。
旅客機は簡単に増産できない
現在、世界では旅客機が不足しており、大手メーカーは長期間分の受注残を抱えているとされています。
旅客機が足りず、航空会社が購入を希望しているのであれば、新しいメーカーが参入して生産を増やせば大きな利益を得られそうです。
しかし、実際には新規参入がほとんど起きません。
旅客機の製造には、極めて高度な技術、安全認証、巨大な設備、長期間の実績が必要です。航空機用エンジンを製造できる会社も世界に限られています。
巨額の資金があっても、短期間で旅客機市場へ参入することは困難です。
高い価格や大量の注文があっても、供給側が簡単に反応できないため、供給不足が長期間続きます。
サンフランシスコの住宅は規制で増やせない
サンフランシスコでは、長年にわたって住宅不足と住宅価格の高騰が問題になっています。
住宅を高く売れるのであれば、新しい住宅を建設すればよいように思えます。しかし、建築規制や土地利用規制によって、大規模な住宅を簡単に建てることができません。
価格が上がっても供給を増やせないため、住宅不足は解消されにくくなります。
日本のバターには制度上の制約がある
日本では、時期によって店頭からバターが不足することがあります。
バターの価格が高くなっても、酪農家が自由に牛乳やバターの生産量を増やせるとは限りません。
生乳の生産や流通は制度によって管理されており、市場価格の上昇が生産者の増産判断へ直接つながりにくい構造があります。
このような市場では、価格が上昇しても供給がすぐに増えないため、不足が長期化する場合があります。
供給過剰になるための3つの条件
動画では、「足りないものが余る」ためには、主に3つの条件が必要だと説明しています。
1つ目は、高い価格の情報が生産者へ正しく届くことです。
2つ目は、利益を得たい企業が自由に参入したり、既存企業が増産したりできることです。
3つ目は、時間はかかっても、最終的にその商品を増産できることです。
この3つがそろっている商品は、不足によって価格が上昇すると、いずれ生産量が増え、供給過剰になる可能性が高いと考えられます。
一方で、規制や価格統制によって価格の情報が生産者へ届かない場合、免許や技術の壁によって新規参入ができない場合、資源量などの物理的制約によって生産量を増やせない場合には、供給不足が長期間続く可能性があります。
メモリ半導体は供給過剰になりやすい条件がそろっている
動画では、メモリ半導体には供給過剰になるための3条件がすべてそろっていると説明しています。
メモリ半導体は規格化された製品であり、同じ種類であればメーカーごとの差が比較的小さいという特徴があります。
世界市場で取引されているため、価格上昇はすべてのメーカーに伝わります。高い利益を確認した企業は、増産や工場建設を判断できます。
工場建設には巨額の資金と高度な技術が必要ですが、資金と技術があれば数年後には生産能力を増やせます。
さらに、近年は政府支援を受けた中国メーカーも半導体市場へ参入しています。
既存メーカーだけでなく、新しい競争相手も生産能力を拡大すれば、将来の供給量はさらに増える可能性があります。
そのため、メモリ価格の高騰が永遠に続くとは考えにくいというのが動画の見方です。
「今回は違う」という反論もある
一方で、今回のAIブームは過去の半導体サイクルとは違うという意見もあります。
AI需要は一時的な流行ではなく、社会や産業の構造そのものを変える長期的な成長要因だという考え方です。
AIデータセンターや生成AIサービスが増え続ければ、メモリの需要も長期的に増加します。新しい工場が完成して供給量が増えても、AI需要がそれ以上の速度で伸びれば、供給過剰にはならない可能性があります。
また、現在のメモリ業界は大手企業への集約が進んでいます。
メーカーが少数になったことで、各社が過去のような無秩序な増産競争を避け、供給量を調整できるようになったとの見方もあります。
この考えに従えば、過去のような激しいシリコンサイクルは弱まり、メモリ価格の高値が長く続く可能性があります。
動画でも、この反論には一定の合理性があると認めています。
しかし、「今回は違う」という言葉は、過去の好況期にも繰り返し使われてきました。
業界再編によってシリコンサイクルは終わったと考えられた直後に、メモリ業界が歴史的な赤字へ陥ったこともあります。
過去の経験から見ると、「今回は違う」という見方が広がる時期は、好況の終盤や相場の天井付近である可能性にも注意が必要です。
需要ではなく供給を見る「キャピタルサイクル」
投資の世界には、「キャピタルサイクル」という考え方があります。
この考え方では、将来の需要を正確に予測しようとするのではなく、企業の設備投資や供給能力の変化に注目します。
AI市場が今後どれほど成長するのか、データセンターが何台建設されるのか、メモリ需要がどれほど増えるのかを正確に当てるのは困難です。
専門家であっても、数年後の需要を正確に予測することはできません。
一方で、供給側の動きは比較的確認しやすい情報です。
工場の建設計画、設備投資額、着工時期、稼働予定、参入企業の数などは、企業の発表や決算資料から把握できます。
需要は不確実な予測ですが、すでに発表された工場建設は、実現可能性の高い将来の供給として数えることができます。
SKハイニックスの新工場が2029年ごろに稼働するのであれば、その時期にメモリの供給能力が増える可能性は高まります。
さらに他社も設備投資を増やせば、数年後に大量の生産能力が同時に立ち上がることになります。
キャピタルサイクルの視点では、需要予測を追い続けるよりも、各社がどれほど資金を投入し、どれほど供給能力を増やそうとしているのかを見る方が重要です。
株価は現在の利益ではなく「賞味期限」を評価する
キオクシアの現在の事業環境だけを見れば、メモリは不足し、価格は高く、利益も伸びています。
しかし、株価は現在の商品価格や利益だけを評価しているわけではありません。
市場は、現在の高い利益がいつまで続くのかを考えています。
メモリ価格の高騰によって各社が工場建設や設備投資へ動き始めたのであれば、現在の利益には賞味期限があるかもしれません。
株式市場は、その賞味期限を数年先まで見通そうとします。
そのため、実際にメモリが余り始める前から、半導体メーカーの株価が下落することがあります。
キオクシア株の下落は、現在の業績悪化を反映したものではなく、数年後の供給過剰と利益減少を先回りして織り込んだ可能性があります。
市場は、2029年ごろに完成する新工場を、すでに現在の株価へ反映し始めているということです。
今後考えられる2つのシナリオ
動画では、今後のメモリ市場について大きく2つのシナリオが示されています。
1つ目は、過去のシリコンサイクルと同じように、新工場が稼働する数年後からメモリが供給過剰になるシナリオです。
現在の高い価格を見て各社が設備投資を拡大し、数年後に生産能力が一斉に増えます。その頃にAI需要の伸びが鈍化していれば、供給が需要を上回り、メモリ価格は大きく下落する可能性があります。
2つ目は、AI需要が構造的に拡大し続け、新たに増えた供給をすべて吸収するシナリオです。
この場合、各メーカーが工場を建設しても、AIデータセンターや関連サービスの成長によって需要が増え続けるため、供給過剰にはなりません。メモリ価格の高値やメーカーの高収益が、想定以上に長く続く可能性があります。
どちらのシナリオになるかは、現時点では断定できません。
ただし、動画の見立てでは、需要の伸びはいずれ鈍化する一方、一度建設された工場や設備は簡単には消えないとしています。
需要が鈍化した時点で大量の生産設備が残っていれば、供給過剰は避けにくくなります。
供給過剰が訪れる時期が遅くなるほど、その間に追加される生産能力も増えるため、調整局面の規模が大きくなる可能性もあります。
決算で見るべきは利益ではなく設備投資
動画では、キオクシアの決算を見る際に注目すべき点についても触れています。
現在のメモリ価格や需要環境を考えれば、過去の業績が好調であることはある程度予想できます。
重要なのは、売上高や利益が市場予想を上回ったかどうかだけではありません。
SKハイニックスなどの競合企業による増産計画に対抗して、キオクシアも設備投資を拡大するのかどうかです。
キオクシアだけでなく、主要メーカーが一斉に工場建設や設備増強へ向かえば、将来の供給過剰リスクは高まります。
高い価格と利益を見て各社が我慢できずに設備投資競争へ突入した場合、それは豚サイクルやシリコンサイクルが再び始まった合図になるかもしれません。
決算を見る際には、直近の利益だけでなく、設備投資額、生産能力の増強計画、新工場の稼働時期、経営陣の供給見通しに注目する必要があります。
まとめ
キオクシアの株価が、メモリ不足と過去最高水準の利益にもかかわらず大幅に下落した背景には、株式市場が数年後の供給過剰を先回りしている可能性があります。
商品の不足によって価格が上昇すると、企業は利益を求めて増産や新規参入へ動きます。しかし、生産能力が実際に増えるまでには時間がかかります。
マスクは数ヶ月、卵は約1年、コンテナ船は約2年から3年で供給が増え、価格が下落しました。余るまでの時間は、その商品を作るために必要な時間によって左右されます。
半導体工場にも建設から稼働まで数年が必要です。現在のメモリ価格を見て各社が増産を始めれば、その生産能力は数年後にまとめて市場へ出てきます。
AI需要が増え続け、新しい供給を吸収する可能性はあります。しかし、需要の伸びが鈍化したとき、それまでに建設された工場は残り続けます。
キオクシア株の今後を考えるうえでは、足元の利益だけでなく、競合企業を含めた設備投資や生産能力の増加を見ることが重要です。
現在のメモリ市場が過去とは異なる新しい成長局面に入ったのか、それとも今回もシリコンサイクルが繰り返されるのかは、まだ確定していません。
少なくとも、株価が評価しているのは現在の好業績だけではありません。市場は、現在の利益がいつまで続くのかという「賞味期限」に値段をつけています。
メモリが本当に余るかどうか以上に重要なのは、いつ供給能力が増え、各社がどの程度の設備投資競争へ向かうのかを確認することです。


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