日本の長期金利が30年ぶりに3%へ|財政悪化で金利が上がる本当の理由と「財政破綻」との違い

本記事は、YouTube動画『【日本経済】長期金利が30年ぶりに3%に到達!今更聞けない財政悪化懸念と長期金利の関係!』の内容を基に構成しています。

日本の長期金利が大きく上昇しています。動画では、9月1日に日本の10年国債利回りが30年ぶりとなる3%をつけたとして、その背景にある財政政策と長期金利の関係について詳しく解説しています。

財政拡大によって金利が上昇すると聞くと、「日本が財政破綻する可能性が高まっているのではないか」と考える人もいるでしょう。

しかし、長期金利の上昇は必ずしも「国が借金を返せなくなるリスク」を意味するものではありません。

長期金利には、将来の日銀の政策金利に対する予想だけでなく、インフレや経済成長率の不確実性、投資家が要求するリスクプレミアムなど、さまざまな要因が影響します。

今回は、財政政策がなぜ長期金利を押し上げるのか、そして金利上昇と財政破綻がどのように違うのかを、動画の内容をもとに詳しく見ていきます。

目次

日本の10年国債利回りが30年ぶりに3%へ

動画では、9月1日に日本の10年国債利回りが30年ぶりに3%をつけたと説明されています。

ここ数年の日本では、長期間にわたった超低金利政策が転換し、金利のある世界へと徐々に戻りつつあります。

そのなかで注目されているのが、政府による積極的な財政政策です。

財政支出が拡大すれば、経済成長を押し上げる可能性がある一方で、インフレや国債発行の増加につながる可能性があります。

こうした期待や不安が国債市場に影響し、長期金利を押し上げる要因になるというのが今回の動画の大きなテーマです。

ただし、「財政拡大によって金利が上昇する」という話と、「日本が財政破綻する」という話は別のものとして考える必要があります。

そもそも短期金利と長期金利は何が違うのか

金利には、大きく分けて短期金利と長期金利があります。

短期金利については、基本的に日本銀行の金融政策によって方向性が決まります。

日銀が政策金利を引き上げれば短期金利は上昇し、政策金利を引き下げれば短期金利は低下しやすくなります。

一方、10年国債などに代表される長期金利は、必ずしも日銀が直接決めているわけではありません。

かつて黒田東彦総裁時代の日銀は、「イールドカーブ・コントロール」と呼ばれる政策を実施していました。

イールドカーブ・コントロールとは、日銀が国債を大量に売買することで、10年国債利回りなどの長期金利を一定の範囲内に誘導する政策です。

この時期には、日銀が事実上10年国債利回りの上限をコントロールしていました。

しかし、こうした政策は終了しており、現在の長期金利は市場参加者の予想や国債の需給などによって、以前よりも大きく変動するようになっています。

長期金利を決める2つの重要な要因

動画では、長期金利を決める要因を大きく2つに分けて説明しています。

1つ目が「将来の政策金利に対する市場の予想」です。

2つ目が「タームプレミアム」です。

この2つを理解することで、なぜ政府の財政政策が長期金利に影響するのかが分かりやすくなります。

将来の政策金利を市場がどう予想するか

長期金利を考えるうえで基本となる理論の1つが、「純粋期待仮説」です。

言葉だけを見ると難しく感じますが、考え方そのものは比較的単純です。

例えば、10年間固定金利でお金を借りる場合と、短期間の借り入れを繰り返しながら10年間お金を借り続ける場合を考えます。

もし片方だけが明らかに有利であれば、多くの人が有利な方を選びます。

すると、その方向に資金が集中し、最終的には金利が調整されて両者の有利不利が小さくなっていきます。

そのため理論上、10年金利は「今後10年間の短期金利の平均的な予想」を反映すると考えることができます。

つまり、市場参加者が「日銀はこれから何度も利上げするのではないか」と考えれば、10年国債利回りにも上昇圧力がかかります。

逆に、将来大幅な利下げが行われると予想されれば、長期金利は低下しやすくなります。

政策金利だけでは長期金利を説明できない

ところが、実際の市場を見ると、将来の政策金利の予想だけでは長期金利の動きを完全には説明できません。

そこで登場するのが「タームプレミアム」です。

タームプレミアムとは、長期間にわたって債券を保有することに対して、投資家が追加で要求する利回りのことです。

10年間お金を貸す場合、数か月だけお金を貸す場合に比べて、将来何が起こるか分かりません。

その不確実性を引き受ける代わりに、投資家はより高い利回りを要求します。

この追加分がタームプレミアムです。

タームプレミアム=財政破綻リスクではない

タームプレミアムについては、「長期間保有するほど国がデフォルトする可能性があるため、高い金利が必要になる」と説明されることがあります。

デフォルトとは、国や企業が借金を返済できなくなることです。

確かに、デフォルトリスクが高まれば投資家は高い利回りを要求します。

例えば、返済される可能性が低い債券を利回り1%で買おうと考える投資家は少ないでしょう。

より大きなリスクを取るのであれば、その分高い利回りが必要になります。

しかし動画では、タームプレミアムを決める要因はデフォルトリスクだけではないと強調されています。

ここが非常に重要なポイントです。

インフレが高まるだけでも長期金利は上昇する

例えば、10年国債の利回りが3%だったとします。

投資家がこの国債を購入した後、今後の物価上昇率が4%以上になったらどうなるでしょうか。

名目上は3%の利息を受け取れても、物価が4%上昇していれば、実質的な購買力は減少します。

単純化すると、

3%の利回り − 4%のインフレ率 = 実質マイナス1%

となります。

つまり、国債そのものがデフォルトしなくても、インフレによって投資家が損をする可能性があります。

そのため投資家は、「物価が大きく上がる可能性があるなら、3%では国債を買いたくない。もっと高い利回りが必要だ」と考えるようになります。

結果として国債価格が下落し、国債利回りは上昇します。

財政出動が長期金利を押し上げる仕組み

ここで政府の財政政策との関係が見えてきます。

政府が大規模な財政出動を行えば、景気を押し上げる可能性があります。

企業の売上が増え、雇用が増え、賃金が上がる可能性もあります。

一方で、需要が拡大することでインフレ率が上昇する可能性もあります。

さらに財政支出の財源が明確でなければ、

「将来どれだけ国債が発行されるのか」

「インフレ率がどこまで上昇するのか」

「将来の金利がどこまで上がるのか」

といった不確実性も高まります。

投資家にとって将来の見通しが不透明になれば、より高い利回りを要求するようになります。

つまり、デフォルトリスクが高まらなくても、タームプレミアムの上昇によって長期金利は上昇するのです。

経済成長率の不確実性も金利に影響する

タームプレミアムは、インフレだけで決まるわけではありません。

経済成長率の不確実性にも影響を受けます。

例えば、政府が大規模な投資政策を打ち出したとしても、その政策によって日本経済がどれだけ成長するのかは事前には分かりません。

大きな成果が出る可能性がある一方で、思ったような成長につながらない可能性もあります。

こうした不確実性が高まれば、投資家は長期債券を保有するリスクに対して追加の利回りを要求するようになります。

さらに、市場全体で投資家のリスク回避姿勢が強まるかどうかもタームプレミアムに影響します。

そのため、タームプレミアムは非常に複雑な要因によって変動します。

現在の金利上昇は「財政破綻」を織り込んでいるわけではない

動画の解説では、現在の日本の長期金利上昇について、国債のデフォルト率が高まっていることが主な原因ではないとしています。

現在の金利上昇は、

将来の日銀の利上げに対する市場の予想と、財政政策やインフレを巡る不確実性によるタームプレミアムの上昇

という2つの要因によって起きているという見方です。

つまり、

「金利が上がっている=日本が財政破綻すると市場が考えている」

という単純な関係ではありません。

一方で、だからといって財政政策に問題がないという意味でもありません。

財源の不透明な財政政策は金利を押し上げやすい

政府が財源を明確にしないまま大規模な財政支出を続ければ、投資家から見ると将来の不確実性が高まります。

国債発行額がどこまで増えるのか分からない。

インフレ率がどこまで上昇するのか分からない。

通貨価値にどのような影響が出るのかも分からない。

このような状況では、長期国債を保有する投資家はより高い利回りを要求します。

その結果、タームプレミアムの上昇を通して長期金利が上がりやすくなります。

動画では、財源が不透明な財政政策は避けた方がよく、それを続ける限り長期金利には上昇圧力がかかりやすいと指摘しています。

長期金利上昇は企業の借入コストを増やす

長期金利が上昇すると、企業活動にも影響します。

企業は設備投資や事業拡大を行うために、銀行借入や社債などを利用しています。

特に長期で資金を借りている企業の場合、借り換えのタイミングで市場金利が上昇していれば、新しい借入金利も高くなる可能性があります。

例えば、以前1%で借りていた資金を3%で借り換えなければならなくなれば、企業の利払い負担は大きくなります。

その結果、設備投資を控えたり、人件費やその他の支出を抑えたりする企業が増える可能性があります。

つまり、金利上昇には経済を引き締める作用があります。

政府の国債利払い負担も増加する

長期金利の上昇は企業だけでなく、政府にも影響します。

政府が発行している国債にも満期があります。

国債が満期を迎えると、新しい国債を発行して借り換えるケースが多くあります。

その時点で市場金利が高ければ、新しく発行する国債の利払い負担も増えていきます。

国債残高が大きい国ほど、金利上昇が続いた場合の影響も時間の経過とともに大きくなります。

さらに利払い費が増えることで追加の国債発行が必要になれば、国債供給の増加や通貨安、インフレなどにつながる可能性もあります。

財政政策成功のカギは「経済成長につながるか」

ただし、財政拡大によって金利が上がったとしても、それだけで政策が失敗とは言えません。

重要なのは、政府による投資によって将来の経済成長率が高まるかどうかです。

動画では、官民による370兆円規模の投資構想について触れています。

仮にこうした投資によって日本企業の生産性が向上し、新しい産業が成長し、経済全体の成長率が高まるのであれば、金利上昇による負担を経済成長によって吸収できる可能性があります。

経済成長が高まれば、企業収益や個人所得も増えやすくなります。

その結果、政府の税収も増加します。

政府の利払い負担が増えたとしても、それ以上に税収が増えれば財政への負担を和らげることができます。

成長しなければ金利上昇の負担だけが残る

反対に、大規模な財政支出を行っても経済成長率が高まらなければ問題です。

政府の借金は増え、金利も上昇し、利払い負担も増える一方で、税収は思ったほど増えません。

さらにインフレ率が上昇すれば、家計は物価高という形で負担を受けます。

つまり政府の投資政策を評価する際には、「いくら使うのか」だけではなく、「その投資が将来どれだけの成長を生み出すのか」を見る必要があります。

動画では、政府が掲げる17分野への投資が実際にどのような成果につながるのかが重要になるとしています。

政府主導の大型投資は世界的な流れ

積極的な財政政策は日本だけで起きているわけではありません。

動画では、政府主導で大規模な投資を行う動きは世界的なトレンドになっていると説明しています。

特に新型コロナウイルスのパンデミック以降、各国政府は巨額の財政支出を行いました。

さらにウクライナ戦争以降は、安全保障への関心が高まり、防衛費を拡大する国も増えています。

AIや半導体などを中心とするテクノロジー分野でも国家間の競争が激しくなっています。

そのため政府と民間企業が共同で巨額の投資を行うケースが増えています。

こうした世界的な財政拡大は、経済成長を押し上げる一方で、インフレや国債発行の増加を通じて長期金利を押し上げる要因にもなります。

選挙と財政拡大という民主主義の問題

動画では、財政拡大が進む背景として政治的な要因にも触れています。

財政支出を抑える政策よりも、給付や投資、減税などを行う政策の方が有権者から支持されやすい場合があります。

そのため各国政府は、選挙を意識して積極的な財政政策を選択しやすくなっています。

経済や安全保障のために財政支出が必要になっている面がある一方、「財政を拡大しなければ選挙に勝ちにくい」という民主主義特有の問題も存在します。

多くの国で財政拡大傾向が続けば、世界的に国債供給が増え、タームプレミアムが上昇しやすい環境になる可能性があります。

その意味でも、世界的に「長期金利が以前より高くなりやすい時代」に入っている可能性があります。

フランスでも長期金利が歴史的な水準へ

動画の後半では、フランスの国債利回りについても触れています。

フランスでは長期国債利回りが歴史的な高水準まで上昇しており、30年国債利回りも2008年以来の高い水準になっていると説明されています。

金融市場では日本やアメリカの金利動向に注目が集まりがちですが、国債市場は世界的につながっています。

フランスやユーロ圏で国債利回りが上昇すれば、世界の債券投資家の資金配分が変化し、結果的に日本やアメリカの金利にも影響を与える可能性があります。

そのため、日本の長期金利を見る際にも、国内の金融政策や財政政策だけではなく、世界の国債市場を見る必要があります。

日銀の利上げが続けば10年国債利回りはさらに上がるのか

今後の日本の長期金利を考えるうえでは、日銀の金融政策も重要です。

動画では、市場の一部で日銀の利上げペースが速まるのではないかという見方があり、将来的な政策金利の水準について2.5%程度まで上昇する可能性を想定する議論もあると紹介されています。

仮に将来の政策金利が大幅に上昇すると市場が予想すれば、その期待は10年国債利回りにも反映されます。

そのため、「10年国債利回りが4%を超える可能性はあるのか」といった議論も出てきます。

ただし、長期金利は現在の政策金利だけで決まるものではありません。

将来の利上げ予想に加え、インフレ見通し、経済成長率、国債の需給、財政政策、タームプレミアムなどを総合して決まります。

長期金利を見るときは「財政破綻かどうか」だけで考えない

今回の動画で最も重要なポイントは、「長期金利上昇=財政破綻リスク上昇」という単純な図式ではないという点です。

長期金利は大きく、

将来の短期金利に対する市場予想

タームプレミアム

によって決まります。

さらにタームプレミアムは、デフォルトリスクだけではなく、インフレの不確実性、経済成長率の不確実性、国債供給、投資家心理などによっても変動します。

そのため、政府が積極財政を行えば、財政破綻の可能性が高まっていなくても長期金利が上昇することは十分にあり得ます。

まとめ

日本の10年国債利回りが30年ぶりとなる3%まで上昇した背景には、単純な「財政破綻懸念」だけでは説明できない複雑なメカニズムがあります。

長期金利は、将来の日銀の政策金利に対する予想と、長期間債券を保有するリスクに対して投資家が要求する「タームプレミアム」によって大きく左右されます。

政府が積極的な財政政策を行えば、経済成長への期待が高まる一方、インフレや国債発行額などの不確実性も高まります。

その結果、国債がデフォルトする可能性が高まっていなくても、投資家がより高い利回りを要求し、長期金利が上昇することがあります。

一方、長期金利の上昇が続けば、企業の借入コストや政府の国債利払い費も増加します。

そのため積極財政が成功するかどうかは、最終的に政府や民間による投資が日本の経済成長率をどれだけ引き上げられるかにかかっています。

投資によって生産性や税収が大きく伸びれば、金利上昇による負担を吸収できる可能性があります。

反対に成長につながらなければ、金利上昇やインフレによる負担だけが残る可能性があります。

今後の日本経済を見るうえでは、「長期金利が何%になったか」という数字だけでなく、その金利上昇が日銀の利上げ期待によるものなのか、インフレ期待によるものなのか、あるいは財政政策に対するタームプレミアムの上昇によるものなのかを分けて考えることが重要になりそうです。

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