日本株バブルは始まったのか?日経平均が上がり続ける理由と今後の3つのシナリオ

本記事は、YouTube動画『日本株バブル助走?日経が上がり続ける理由』の内容を基に構成しています。

日経平均株価は、7万2366円の最高値をつけた後、6万414円まで急落しました。高値からの下落率は11%を超え、多くの投資家が「日本株の上昇相場は終わったのではないか」と不安を感じた局面です。

しかし、その後の市場で起きたのは、日本株全体から資金が逃げ出す全面的な投げ売りではありませんでした。半導体やAI関連銘柄から、銀行、商社、内需株などへ資金が移動する、いわゆるセクターローテーションが進んだのです。

指数が大きく下がったとしても、日本企業で進む構造改革そのものが止まったわけではありません。むしろ今回の急落は、過熱した一部銘柄から次の主役となる業種へ資金を移すための、強制的な入れ替えだった可能性があります。

現在の日本株市場では、企業の資本効率改善、自社株買い、賃上げ、インフレ、金利正常化、個人投資家の積立資金など、過去とは異なる複数の変化が同時に起きています。

この記事では、日本株が上がり続けると考えられる理由と、逆に上昇相場が崩れる条件について、動画の内容に沿って詳しく解説します。

目次

現在の日本株は過去のバブル相場とは構造が異なる

現在の日本株を考えるうえで、最初に押さえておきたいのは、過去のバブル相場と同じように見てはいけないという点です。

1980年代後半の日本株は、土地価格が上がり続けることを前提に企業価値が膨らみ、企業利益よりも資産価格の上昇が株価を押し上げていました。

2000年代の上昇局面では、世界景気の拡大と円安を背景に、輸出企業が相場の中心となりました。

また、2013年以降の日本株上昇では、日本銀行による大規模な金融緩和や、海外投資家による日本株買いが大きな原動力となりました。

しかし、2026年の日本株相場は、これらの局面とは異なる特徴を持っています。

今回の相場の核心は、日本企業の内部に眠っていた現金、政策保有株、有休資産、低採算事業などが、株主価値を生み出す資本へ変換され始めていることです。

日本企業の評価基準が大きく変わり始めている

日本企業には長年、利益を上げても現金を社内に貯め込み、赤字でなければ低採算事業を残し、取引先との関係維持のために他社の株式を持ち続ける文化がありました。

こうした経営姿勢は、デフレ環境では一定の合理性がありました。

物価がほとんど上がらない時代には、現金の価値が大きく減りません。積極的に借金をして投資するよりも、経済危機に備えて現金を保有することが、安全な経営判断と考えられていたのです。

ところが、インフレ環境では状況が変わります。

物価が上昇すれば、現金を持っているだけで実質的な価値が低下します。さらに賃金、設備費、原材料費が上がるため、成長投資を先送りすること自体が企業の競争力低下につながります。

企業が現金を貯め続けるだけでは、株主から評価されにくい時代へ移行しているのです。

東京証券取引所が企業改革を促している

東京証券取引所は2023年から、上場企業に対して「資本コストや株価を意識した経営」を求めています。

動画によると、2026年2月末時点では、プライム市場の93%、スタンダード市場の51%が、資本コストや株価を意識した経営への対応を開示しています。

また、プライム市場におけるPBR1倍未満の企業比率は、2022年7月の50%から、2026年3月には27%まで低下したとされています。

PBRとは、株価が企業の純資産の何倍まで評価されているかを示す指標です。

PBR1倍を下回る企業は、株式市場から、事業を続ける価値が解散価値より低いと評価されている状態とも解釈できます。

ただし、PBR1倍未満の企業が減ったからといって、日本株がすでに割高になったとは限りません。

重要なのは、市場が企業に求める内容が変わったことです。

以前は、解散価値より安く放置されている企業を買い、評価が見直されるまで待つだけでも利益を得られる可能性がありました。

しかし、これからは単に現金を持っているだけでは評価されません。

現金をどのように使うのか、低採算事業をどのように整理するのか、成長投資が将来の利益へつながるのかを、具体的に説明して実行できる企業へ資金が集まります。

日本株は全面高ではなく企業格差が広がる相場へ

現在の日本株市場は、すべての企業が一斉に上昇する単純な相場ではありません。

経営改革を実行できる企業と、開示だけで終わる企業との差が、急速に広がる相場です。

日経平均やTOPIXが上昇したとしても、すべての銘柄が同じように上がるとは限りません。

むしろ指数の上昇が続くほど、資本効率を改善できる企業と、従来型の経営を続ける企業との株価格差は広がる可能性があります。

これが、現在の日本株相場の重要な特徴です。

企業自身が自社株買いによって株価を支える時代

日本株が上がり続ける2つ目の理由は、企業自身が株式市場における巨大な買い手となっていることです。

特に注目されているのが、自社株買いです。

自社株買いとは、企業が市場から自社の株式を買い戻すことです。

発行済み株式数が減れば、企業全体の利益が変わらなくても、1株当たり利益であるEPSは上昇します。

また、配当総額を維持した場合には、1株当たり配当も増えやすくなります。

企業が自社株を買うという行動は、経営陣が余剰資金の使い道を明確にしたというシグナルにもなります。

動画では、2026年にオリックスが最大2500億円、三井不動産が最大400億円、日本取引所グループが最大200億円の自社株買いを発表した事例が紹介されています。

こうした大規模な株主還元策が、日本株市場の下値を支える要因となっています。

自社株買いは発表額だけで判断してはいけない

自社株買いを発表したからといって、必ず企業価値が上がるわけではありません。

株価が割高な状態で自社株を大量に買い戻したり、本来行うべき成長投資を削って自社株買いを実施したりすれば、長期的には企業価値を低下させる可能性があります。

東京証券取引所も、短期的な株主還元だけを増やすのではなく、まず成長投資の優先順位を示したうえで、余剰資金を還元するよう企業に求めています。

従来の日本企業は、設備投資、M&A、人材投資、配当、自社株買いを、それぞれ別々の判断として考える傾向がありました。

現在求められているのは、将来のキャッシュフローを出発点として、成長投資、M&A、人材投資、配当、自社株買いを1枚の設計図として示すことです。

この資本配分の設計図が明確になると、海外投資家も企業価値を計算しやすくなります。

日本企業はこれまで、利益を出しても、その利益がどこに使われるのか分からないという不信感から、低い評価倍率で放置される傾向がありました。

しかし、利益の使い道が明確になれば、同じ利益水準であっても市場が支払う評価倍率が上昇する可能性があります。

株価は、企業利益と評価倍率の掛け算で決まります。

企業利益が増加し、同時に評価倍率も上がる局面では、株価上昇が直線的ではなく、加速しやすくなります。

自社株買いで確認すべき3つの注意点

長期投資家が確認すべきなのは、自社株買いの発表金額だけではありません。

実際にどの程度取得が進んでいるのか、取得した株式を消却しているのか、成長投資と両立できているのかを確認する必要があります。

特に注意したいのは、次のような企業です。

  • 自社株買いの発表額は大きいものの、実際の取得が進んでいない企業
  • 自社株買いを行った後に、大量の新株発行を行う企業
  • 利益が減少しているにもかかわらず、借金によって株主還元を続ける企業

長期投資で見るべきなのは、一時的な株価対策ではなく、資本配分の質です。

賃上げとインフレが日本企業の利益成長を支える

日本株が上昇を続ける3つ目の理由は、賃金と物価の循環が日本経済に定着し始めていることです。

動画によると、2026年の春季労使交渉では、連合の最終集計における平均賃上げ率が5.01%となり、5%を超える賃上げが3年連続で続きました。

日本銀行も、基調的な物価上昇率が2026年度後半から2027年度にかけて、2%程度へ近づく可能性を示しているとされています。

ここで多くの投資家が疑問に感じるのは、人件費が上がれば企業利益が減るのではないかという点です。

確かに、商品の価格を引き上げられない企業にとって、賃上げは大きな負担になります。

しかし、労働力不足が続く日本では、賃上げを避けた企業ほど人材を失い、注文があっても生産やサービス提供ができない状態に陥る可能性があります。

そのため現在の賃上げは、単なるコストではなく、企業の供給能力を維持するための投資という側面を持っています。

名目成長が企業の売上と利益を押し上げる

賃金が上昇すると、家計の名目所得が増えます。

動画では、2026年1月から3月期の実質GDPが前期比0.5%、年率換算で1.8%成長し、個人消費も前期比0.3%増加したと説明されています。

非常に強い景気拡大ではないものの、金利が上昇する環境でも経済がプラス成長を維持していることは重要です。

デフレ時代の日本企業は、商品を値上げすると顧客が離れることを恐れ、原材料費や人件費の上昇を自社で吸収してきました。

しかし現在は、物流費、人件費、エネルギー費などの上昇を販売価格へ転嫁する企業が増えています。

価格を引き上げても販売数量が大きく落ちず、さらに賃上げによって家計消費が支えられれば、企業は売上高と利益の両方を伸ばせます。

これが名目成長の力です。

日本株を考えるうえでは、実質GDP成長率だけを見るのでは不十分です。

企業の売上、利益、税収、賃金は、基本的に名目値で計算されます。

名目GDPが拡大する世界では、企業の売上規模も自然に拡大しやすくなります。

長年のデフレによって止まっていた価格の時計が動き始めたことは、日本企業の利益上限を押し上げる可能性があります。

賃上げが逆風になる企業も存在する

賃上げとインフレが、すべての企業にとって追い風になるわけではありません。

価格決定力が弱く、人件費の上昇分を販売価格へ転嫁できない企業では、利益率が低下します。

特に警戒すべきなのは、売上高が伸びているにもかかわらず、営業利益率が2四半期以上連続して低下している企業です。

また、価格改定を行った後に販売数量が大きく減少している企業や、離職率が上昇し続けている企業にも注意が必要です。

賃金上昇は日本株全体には追い風となる可能性がありますが、価格決定力のない企業にとっては逆風です。

ここでも、企業間格差が広がることになります。

金利上昇は日本株の敵ではなく企業の選別装置

動画では、日本銀行が2026年6月に政策金利を1%へ引き上げ、約31年ぶりの水準になったと説明されています。

一般的に金利上昇は、株価にとって悪材料と考えられます。

実際に、借入金の多い企業や、不動産価格が上がり続けることだけを前提とした企業にとっては、金利上昇が大きな負担になります。

長期国債利回りが急激に上昇すれば、株式に許容される評価倍率も低下しやすくなります。

しかし、日本株全体で考えると、金利正常化にはプラスの側面もあります。

銀行や保険会社には金利上昇が追い風になる

銀行は、貸出金利と預金金利の差である利ざやから利益を得ています。

長期間続いたゼロ金利政策は、銀行の本来の収益力を弱めてきました。

金利が適度に上昇すれば、銀行の利ざやが改善し、銀行や証券会社など金融業の利益構造が改善します。

また、年金基金や保険会社は、国内債券でも一定の利回りを確保できるようになり、資産運用全体を組み替えやすくなります。

金利上昇は、企業経営の選別も進めます。

資金調達コストがほとんどゼロだった時代には、利益率の低い事業であっても長期間存続できました。

しかし、金利が上昇すれば、投下した資本に見合う利益を生まない事業は維持しにくくなります。

企業は低採算事業を売却し、成長分野へ資金や人材を移す必要があります。

短期的には痛みを伴いますが、長期的には日本企業の資本効率を高める可能性があります。

問題なのは金利水準より上昇速度

重要なのは、政策金利が何%になったかだけではなく、どのような速度で上昇するかです。

政策金利が1%から緩やかに上昇し、同時に賃金と企業利益も増えるのであれば、日本株市場は金利上昇を吸収できる可能性があります。

一方、原油高や円安によって物価だけが上昇し、日本銀行が短期間に何度も利上げを行えば、設備投資や住宅投資が急減する可能性があります。

動画では、ロイターの企業調査で、約半数の企業が金利上昇による悪影響を感じており、政策金利が1.5%を超える追加利上げに慎重な見方が多いと紹介されています。

日本株の強気見通しを撤回すべき条件は、単に政策金利が1.5%を超えることではありません。

実質賃金や企業利益が伸びないまま、政策金利だけが1.5%を超えて上昇することです。

名目成長率が金利上昇を上回っている限り、金融正常化は経済の健全化につながります。

しかし、金利上昇の速度が名目成長率を上回った瞬間、金利は企業の選別装置から、経済を壊す破壊装置へ変わる可能性があります。

海外投資家・個人投資家・年金資金が作る3層の需給

株価を最終的に動かすのは、材料そのものではなく、実際に株式を売買する資金です。

日本株の需給を理解するためには、海外投資家、個人投資家、年金や保険などの長期資金という3つの層に分けて考える必要があります。

海外投資家は先物と現物を使って機動的に動く

第1の層は、海外投資家です。

動画によると、財務省の対外・対内証券投資統計では、外国人投資家は6月21日から27日に日本の株式と投資ファンドを1兆8175億円売り越しました。

その後、7月5日から11日には7456億円の買い越しへ転じています。

短期間で売り越しと買い越しが大きく反転していることから、海外投資家は日本株を一方向に保有しているのではなく、先物と現物を使って機動的にポジションを変更していることが分かります。

個人投資家が陥りやすいのは、海外投資家が売り越したという数字だけを見て、外国人が日本株から撤退したと判断することです。

実際には、指数先物でリスクを落としながら、現物市場では銀行株や内需株を買っている場合があります。

反対に、現物株を買いながら先物を売り、相場全体の値動きを抑えることもあります。

現物だけ、あるいは先物だけの売買動向を見ても、海外投資家の全体像は分かりません。

NISAを使う個人の長期資金

第2の層は、NISAを利用する個人投資家の長期資金です。

動画では、2025年末時点のNISA口座数が約2800万口座、累計買付額が70兆円を超える規模になったと説明されています。

投資先の多くは海外株式型の投資信託ですが、日本株や国内株式型の投資信託にも、毎月継続的な資金が流入します。

NISAを通じた積立資金の特徴は、相場が下落したからといって、翌日にすべて売却される資金ではないことです。

積立設定された資金は、相場下落時に安い価格で多くの口数を購入します。

短期投資家にとっての暴落が、長期積立投資家にとっては自動的な買い増しになるのです。

GPIFや保険会社などの長期資金

第3の層は、年金基金や保険会社などの長期資金です。

動画では、GPIFを含む国内機関投資家が約293兆円を運用していると説明されています。

GPIFをはじめとする長期投資家が、円建て資産の比率を今後どのように見直すかは、日本株市場にとって大きな焦点です。

政府が国内投資の拡大を掲げたとしても、GPIFは年金加入者の利益を最優先に運用する必要があります。

そのため、政府の指示だけで国内株式を買うことはできません。

しかし、日本企業の収益性が改善し、円建て債券の利回りが上昇し、為替変動リスクが意識されるようになれば、国内資産の相対的な魅力は高まります。

時間軸の異なる資金が日本株の下値を支える

海外投資家、NISA資金、年金資金は、それぞれ異なる時間軸で動きます。

海外投資家は、日単位や週単位で売買します。

NISAを通じた個人資金は、月単位、年単位で積み上がります。

年金や保険などの資金は、数年単位で資産配分を変更します。

短期的に海外投資家が売ったとしても、その売りを個人の積立資金や長期資金が吸収する構造ができれば、日本株の下値は以前より強くなります。

ただし、海外投資家が円と日本株を同時に売却し、国内投資家も信用取引の追証によって投げ売りする局面では、下落速度が急激に加速します。

日本株の需給構造は以前より強くなっている可能性がありますが、決して無敵ではありません。

日経平均7万円台は天井ではなく過熱の警告だった可能性

2026年6月25日、日経平均株価は7万2366円まで上昇しました。

その後、7月17日には6万414円まで下落し、高値から11%を超える調整となりました。

さらに7月21日には、6万6232円まで3.26%反発しています。

値動きだけを見れば、相場が天井をつけた後の乱高下にも見えます。

しかし、下落の中身を見ると、日本株全体が売られた単純な日本売りではありませんでした。

下落を主導したのは、投資家の期待が極端に高まっていた半導体株やAI関連株でした。

好決算でも株価が下がる理由

好決算を発表したにもかかわらず、株価が下落する銘柄が増えた場合、それは必ずしも企業業績が悪化したことを意味しません。

市場の期待値が過熱していた可能性があります。

株価は、単に良い業績が発表されれば上昇するわけではありません。

市場予想を上回る業績が発表されたときに上昇します。

市場がすでに完璧な成長を株価へ織り込んでいる場合、良い決算であっても期待を上回ることができず、材料出尽くしとして売られます。

今回の調整で重要なのは、日経平均が下落したことではなく、日本株上昇の根拠そのものが崩れたかどうかです。

銀行の利ざや改善、企業の資本改革、賃上げ、NISA、自社株買いといった要因は、半導体株が下落したからといって消えるものではありません。

そのため今回の調整は、日本株上昇の前提が崩れたというよりも、AI・半導体関連に集中しすぎた資金が、ほかの業種へ再配分された可能性があります。

本当の相場転換を判断するポイント

本格的な弱気相場への転換を判断するためには、一部の人気銘柄が下落するだけでは不十分です。

悪材料が出た後、銀行、商社、建設、内需、防衛、電力など、幅広い業種が同時に下落するかどうかを確認する必要があります。

また、TOPIXの下落率が日経平均を上回り、反発局面でも値上がり銘柄数が増えない状態が続く場合には注意が必要です。

さらに、次のような動きが重なれば、構造的な上昇相場が終わる可能性が高まります。

  • 海外投資家による現物株の売り越しが4週間以上続く
  • 自社株買いの発表が減少する
  • 主要企業の利益予想が下方修正される
  • TOPIXの値下がり銘柄数が継続的に増加する
  • 反発局面でも上昇する業種が広がらない

一方、日経平均がすぐに最高値を更新しなくても、TOPIXが高値圏を維持し、値上がり銘柄数が増え、銀行株や内需株の利益予想が上方修正されるのであれば、強気相場の構造は維持されている可能性があります。

見るべきなのは、指数の数字だけではなく、相場上昇の広がりです。

日本株を押し上げる5つの連鎖

ここからは、複数の経済データを組み合わせることで見えてくる、日本株を押し上げる5つの連鎖を解説します。

インフレが企業の現金保有を減らす

日本企業が保有する巨額の現金は、デフレ時代には安全資産でした。

しかし、物価が毎年2%上昇する世界では、使わない現金の実質価値は年々低下します。

そのため経営者は、成長投資、M&A、賃上げ、配当、自社株買いなど、いずれかの形で資金を動かす圧力を受けます。

インフレは株価の敵と見られがちですが、適度なインフレは、企業の資本配分を変える触媒にもなります。

金利上昇が政策保有株の売却を促す

金利が上昇すると、企業が保有する資産にも、より高い収益率が求められます。

取引先との関係維持だけを理由に持ち続けている政策保有株は、資本効率の面から説明しにくくなります。

政策保有株が市場で売却されれば、短期的には株価への売り圧力になります。

しかし、その売却資金が成長投資や自社株買いへ回れば、長期的には企業価値の向上につながります。

市場は、政策保有株を売却した日の需給悪化だけに注目し、その資金がどのように再利用されるかを見落とすことがあります。

人手不足が省人化投資を強制する

人口減少は、日本株の弱点として語られることが多いテーマです。

しかし、人手不足が深刻になるほど、企業はロボット、AI、物流自動化、無人店舗、業務ソフトなどへ投資せざるを得なくなります。

こうした投資需要は、景気が良いから発生するのではありません。

人が足りないために必要になる構造的な需要です。

日本の人口減少は消費市場を縮小させる一方、省人化設備や業務効率化サービスを提供する企業にとっては、長期的な需要を生み出します。

円高は日本株全体に悪いとは限らない

円高になると、輸出企業の海外利益を円換算した金額は減少します。

そのため、円高は日本株全体に悪影響を与えると考えられがちです。

しかし、円高は輸入物価を下げ、原材料を海外から購入する内需企業の利益率を改善します。

家計の実質購買力も回復しやすくなります。

現在の日本株市場では、銀行、通信、サービス、小売り、建設、ITなど、非輸出企業の存在感も高まっています。

緩やかな円高は、相場の主役を輸出株から内需株へ移す可能性がありますが、日本株指数全体を必ず壊すとは限りません。

国債利回り上昇が日本資産の再評価につながる

金利がほとんどない国の通貨や金融資産は、海外投資家にとって長期保有する理由が弱くなります。

日本の金利が正常化し、同時に企業利益と賃金が増えるのであれば、円建て資産は長期投資の対象として再評価される可能性があります。

ただし、国債利回りが上がれば必ず良いわけではありません。

経済成長とともに金利が上昇しているのか、財政不安や信用不安によって金利が急騰しているのかを区別する必要があります。

日本株の強み・弱み・機会・脅威

現在の日本株市場を、強み、弱み、機会、脅威の4つに分けて整理します。

日本株の強み

日本株の最大の強みは、企業利益が増えているだけでなく、企業の資本配分そのものが変化していることです。

プライム市場の多くの企業が資本コストを意識した経営方針を開示し、PBR1倍未満企業の比率も大きく低下しています。

自社株買い、増配、政策保有株の売却、事業再編が同時に進み、企業自身が株価評価改善の主体となっています。

また、5%を超える賃上げが3年連続で続き、名目成長が定着しつつある点も、日本株にとって重要な強みです。

日本株の弱み

一方、日本株には弱みもあります。

日経平均は、半導体株や値がさ株など、一部の大型銘柄の値動きに大きく左右されます。

指数平均だけを見ていると、日本企業全体の実態よりも上にも下にも振れやすくなります。

また、中小企業では価格転嫁が十分に進まず、人件費や金利の上昇が利益を圧迫しています。

プライム市場では企業改革が進む一方、スタンダード市場では資本コストを意識した経営の開示率が51%にとどまっており、改革スピードには大きな差があります。

日本株の機会

日本株の機会は、国内に眠る現預金が投資へ移る可能性です。

企業の余剰資金、家計のNISA資金、年金資金、政策保有株の売却資金などが、国内の成長企業へ向かう余地があります。

AI、半導体、電力、防衛、インフラ更新、省人化、観光、医療など、政府と民間の投資が重なる分野では、数年単位の需要が期待できます。

動画では、政府が2040年度までに合計370兆円を超える重点投資構想を掲げていると説明されています。

計画が実際に実行される分野では、企業の受注が長期化する可能性があります。

日本株の脅威

最大の脅威は、金利、原油高、円安が同時進行することです。

原油価格が上昇し、円安によって輸入物価が高まり、日本銀行が急いで利上げを行う場合、企業利益と家計消費が同時に圧迫されます。

さらに米国AI株の調整、中国景気の減速、中東情勢の悪化、日本の財政不安などが重なれば、海外投資家が日本株、円、日本国債を同時に売却する可能性があります。

日本企業の改革が進んでいたとしても、海外市場や為替、エネルギー価格の悪化から完全に逃れることはできません。

今後の日本株を考える3つのシナリオ

日本株の今後については、強気、中立、弱気の3つのシナリオで考えることができます。

強気シナリオ

強気シナリオでは、賃上げ率が4%から5%程度で続き、基調的な物価上昇率は2%前後に収まります。

日本銀行は経済状況を確認しながら、政策金利を段階的に引き上げます。

企業利益は名目成長と価格転嫁によって増加し、自社株買いと増配も続きます。

相場上昇は半導体株だけに集中せず、銀行、建設、電力、防衛、サービス、省人化関連などへ広がります。

この場合、日経平均は調整を挟みながら高値更新を繰り返し、主役を交代させる長期上昇相場になる可能性があります。

中立シナリオ

中立シナリオでは、日本企業の構造改革は続くものの、米国株の調整や原油高によって、企業利益予想が伸び悩みます。

日経平均は6万円台から7万円台の間で大きく上下し、指数全体は横ばいになります。

ただし、業績が良く、増配や自社株買いを続け、資本配分に優れた企業だけは上昇します。

この環境では、指数の方向性を当てようとするよりも、決算ごとに利益率、受注残、営業キャッシュフロー、資本配分を確認することが重要です。

弱気シナリオ

弱気シナリオでは、実質賃金が再びマイナスとなり、個人消費が落ち込みます。

インフレを抑えるために政策金利が急速に上昇し、企業の借入負担も増えます。

海外投資家による現物株の売り越しが続き、信用買い残が高水準のまま株価が下落すれば、追証による投げ売りが連鎖する可能性があります。

企業が自社株買いを縮小し、利益予想の下方修正が広がれば、日本株は高値から20%を超える調整に入る可能性があります。

長期投資家が確認すべき企業の数字

長期投資家にとって大切なのは、強気だから一度にすべての資金を投入することでも、暴落を恐れて全額を現金にすることでもありません。

相場が上昇するほど、投資対象を金融、内需、成長投資関連、高配当株などに分散し、1つのテーマへの集中を抑える必要があります。

企業決算では、売上高だけでなく、次の数字を確認することが重要です。

  • 営業利益率が改善しているか
  • 営業キャッシュフローが増えているか
  • 自社株買いが実際に進んでいるか
  • 政策保有株が減少しているか
  • 設備投資額に見合った利益成長が起きているか
  • 値上げ後も販売数量が維持されているか
  • 人件費上昇を価格転嫁できているか

業績の表面だけでなく、企業が得た利益をどこへ振り向けているかを見る必要があります。

日本株への強気判断を見直す条件

投資を始める前に、強気判断を撤回する条件を決めておくことも大切です。

動画では、次のような条件が重なった場合には、強気の前提を見直す必要があると説明されています。

  • 海外投資家の現物株売り越しが4週間以上続く
  • TOPIXの値下がり銘柄数が継続的に7割を超える
  • 主要企業の利益予想が2四半期連続で下方修正される
  • 実質賃金が再び大幅なマイナスへ沈む
  • 政策金利が名目成長率を上回る速度で上昇する
  • 自社株買いや増配の発表が急速に減少する
  • 幅広い業種で営業利益率が低下する

こうした条件が複数重なった場合には、日本株上昇の構造そのものが変化している可能性があります。

反対に、指数が急落しても、企業利益が維持され、自社株買いが続き、賃金と名目GDPが伸び、上昇する業種が広がっているのであれば、下落は構造変化の終わりではなく、過熱を冷ます調整にとどまる可能性があります。

まとめ

日本株が今後も上がり続ける最大の理由は、日本が突然、高成長国家へ変わるからではありません。

企業、家計、年金基金、東京証券取引所、日本銀行などが、30年間止まっていた資金の流れを少しずつ変え始めているからです。

日本企業は、現金を貯め込む経営から、成長投資、自社株買い、増配、事業再編などを通じて資本を動かす経営へ移行しつつあります。

賃上げと物価上昇によって名目経済が成長し、銀行や保険会社には金利正常化による利益改善の可能性が生まれています。

また、NISAを利用する個人投資家や、年金・保険会社などの長期資金が、日本株市場の下値を支える構造も形成されつつあります。

一方で、すべての日本企業が同じように成長するわけではありません。

価格転嫁ができない企業、借入金が多い企業、低採算事業を整理できない企業、発表だけで改革を実行しない企業は、今後厳しい評価を受ける可能性があります。

これからの日本株市場は、指数が一方向に上がるだけの相場ではなく、主役を入れ替えながら上昇する選別相場になると考えられます。

日経平均の表面的な上げ下げだけを見るのではなく、その裏側で誰が売り、誰が買い、企業が利益を何に使っているのかを確認することが重要です。

強気の未来を期待しながらも、弱気相場へ転換する条件をあらかじめ決め、冷静に日本株の変化を追い続ける必要があります。

なお、本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄や金融商品の購入を推奨するものではありません。投資判断は、ご自身の責任で行ってください。

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