銀行預金もタンス預金も目減りする「隠れた税金」の正体とは?MMTとインフレの仕組みを解説

本記事は、YouTube動画『銀行預金もタンス預金も逃げられない「隠れた税金」の正体』の内容を基に構成しています。

日本には、銀行口座に預けられたまま使われていない預金や、自宅で保管されているタンス預金、高齢者が長年保有している現金資産が大量に存在します。

通常、こうしたお金に税金を課すには、税務署が資産の所在を把握したり、新たな税制を導入したりする必要があるように思えます。しかし、税務調査も法改正も行わず、現金を持っているほぼすべての人から実質的に負担を取る方法があります。

その正体が「インフレ」です。

インフレによって物価が上昇すると、現金や預金の額面は変わらなくても、買える商品の量は減少します。動画では、このインフレを「隠れた税金」と捉え、その背景にある考え方として、MMTと呼ばれる現代貨幣理論を取り上げています。

MMTは一部で強く支持される一方、「危険な理論」「現実離れした考え方」と批判されることもあります。本記事では、MMTが何を主張しているのか、日本やアメリカの財政運営とどのような関係があるのか、そして私たちの預金や資産にどのような影響を与えるのかを順番に解説します。

目次

MMTとは何か

MMTは「Modern Monetary Theory」の略称で、日本語では「現代貨幣理論」と訳されます。

MMTの主張を大きくまとめると、次のようになります。

自国通貨を発行できる政府は、その通貨建ての借金について、お金が足りなくなって返済できなくなることはない。本当の財政的な限界は、資金不足ではなくインフレである、という考え方です。

一般的な家計の感覚では、収入以上のお金を使い続ければ、いずれ貯金が底をつき、借金を返せなくなります。そのため、国も税金を集め、その範囲内で支出しなければならないと考えがちです。

しかしMMTでは、通貨を発行できる政府と、通貨を使うだけの家計や企業を同じように考えるべきではないと主張します。

この違いを理解するため、動画では人口100人の小さな島を例に説明しています。

魚の島で考える通貨の仕組み

政府が紙幣を発行しても誰も使わない

小さな島に漁師や大工が暮らし、物々交換によって生活しているとします。

そこに新しく政府が誕生し、道路を建設したり、公共事業のために人を雇ったりしたいと考えました。しかし、この島にはまだ通貨がありません。

そこで政府は紙に「島円」と印刷し、独自の通貨として使おうとします。

政府が漁師のもとへ行き、「この島円と魚を交換してほしい」と頼んでも、漁師は簡単には受け入れません。島円は、その時点では政府が印刷しただけの紙切れにすぎないからです。

印刷をきれいにしたり、紙の質を高くしたりしても、それだけで通貨としての価値が生まれるわけではありません。

税金が紙切れを通貨に変える

政府が島円を通貨として定着させる方法は、税金を導入することです。

政府が「来年から島民全員に税金を課し、納税は島円でしか受け付けない」と宣言したとします。さらに、納税しなければ罰則があると決めます。

すると島民は、税金を納めるために島円を手に入れなければなりません。

島民が島円を得る方法としては、政府のために働く、政府に魚や資材を売る、島円を持っている人に商品やサービスを提供する、といった行動が考えられます。

それまで紙切れだと思われていた島円に、納税手段としての需要が生まれます。その結果、漁師も魚と島円を交換するようになり、島内で島円が流通し始めます。

動画では、通貨の価値を支えているのは金や銀だけではなく、政府が課す税金も重要な役割を担っていると説明しています。

政府支出と税金はどちらが先なのか

一般的には、政府は国民から税金を集め、その税収を使って道路や学校を造ると考えられています。

つまり、税金が先で、政府支出が後という順番です。

しかし、先ほどの島では、政府が先に島円を発行し、公共事業や物資の購入に使用しています。その後、島民から税金として島円を回収します。

順番は、政府支出が先で、税金が後です。

島円が1枚も流通していない段階では、島民は島円で税金を納めることができません。最初に政府が島円を使って民間へ供給しなければ、税として回収することも不可能です。

この考え方は、銀行の信用創造とも似ています。

一般的には、銀行は預金者から集めたお金を企業や個人へ貸し出しているように見えます。しかし実際の銀行業務では、融資を実行した時点で、借り手の口座に新たな預金が記録されます。

預金を集めてから融資するという単純な順番ではなく、融資によって預金が生まれる側面があるのです。

動画では、MMTの政府支出に関する考え方を、信用創造の政府版として説明しています。

MMTにおける税金の役割

政府が自国通貨を発行できるのであれば、「税金を集める必要はないのではないか」という疑問が生じます。

MMTでは、税金の役割を単なる政府の財源とは考えません。税金には、主に通貨への需要を生み出すことと、市場に出回る通貨量を調整することの2つの役割があると説明します。

税金が自国通貨の需要を作る

政府が自国通貨での納税を義務付けることで、国民や企業はその通貨を必要とするようになります。

日本で税金を納めるには、原則として円を用意しなければなりません。企業が商品を販売し、労働者が賃金を受け取る背景には、生活費だけでなく納税のために円が必要であるという事情もあります。

税金は、自国通貨を社会全体に定着させる仕組みとして機能しているという見方です。

税金がインフレを抑える調整弁になる

政府が大量の島円を発行し、島内に供給したとします。しかし、島で取れる魚の量や、漁師、大工、船、住宅などの供給力は変わっていません。

お金だけが増え、商品やサービスの量が増えなければ、多くの島円が限られた魚を奪い合うことになります。その結果、魚の価格が上昇します。

これがインフレです。

このとき政府が増税し、島民から島円を回収すれば、市場に出回る通貨量は減少します。需要が抑えられれば、物価上昇にもブレーキがかかります。

したがってMMTの考え方では、税金は政府支出のための財源というよりも、景気や物価を調整するための手段となります。

自国通貨建ての国債で政府は破綻するのか

島の政府が島円建てで借金をしていた場合、その借金を返すための島円が不足することは、理論上ありません。

返済に必要な島円を発行できるからです。

ただし、島円を発行すればすべてが解決するわけではありません。通貨を発行しすぎれば、島円の価値が低下し、魚や住宅などの価格が上昇します。

政府は形式上の債務不履行を回避できても、インフレという別の問題に直面します。

紙幣や銀行預金は増やせますが、魚、エネルギー、住宅、労働力、工場、設備などの実物資源は無限には増やせません。

そのため、政府支出の本当の限界は通貨の量ではなく、その国が生産できる商品やサービスの量、つまり供給力にあるというのがMMTの重要な主張です。

日本とアメリカはMMTを採用しているのか

政府や中央銀行はMMTを公式には否定

アメリカや日本の政府、中央銀行は、MMTを正式な政策理論として採用しているわけではありません。

アメリカでは、経済学者のステファニー・ケルトン氏らを中心にMMTが注目され、大きな議論になりました。

一方、FRBのパウエル議長は、自国通貨で借金できる国は財政赤字を気にしなくてもよいという考え方に否定的な見解を示しています。

日本でも、政府や財務省、日銀がMMTに基づいて財政運営を行っているとは説明していません。過去には、当時の麻生太郎財務大臣が、日本を外国の経済理論の実験場にするつもりはないという趣旨の発言をしています。

世界の政府や中央銀行の主流派は、基本的にMMTと距離を置いています。

日本の財政はMMT的に見える側面がある

公式には否定されている一方、日本の財政状況を見ると、結果的にMMTに近い現象が起きているようにも見えます。

動画では、日本の国債残高が1000兆円を超え、GDPの2倍以上の規模になっていることが紹介されています。

さらに、日本国債の大きな割合を日銀が保有しています。政府が発行した国債を、中央銀行である日銀が大量に保有する構造です。

ただし、日銀による国債買い入れは、あくまでも金融政策の一環です。政府支出を直接支えるMMTの政策と、日銀が市場から国債を買う金融緩和は、本来同じものではありません。

それでも、日本は長期間にわたって大規模な財政赤字と金融緩和を続けながら、直ちに財政破綻することなく経済を運営してきました。

理論を先に採用したのではなく、長引く不況やデフレへの対応を続けた結果、外から見るとMMTの実験に近い状態になったという見方です。

日本国債の格下げと財務省の反論

動画では、2002年前後に日本国債の信用格付けが相次いで引き下げられた際の出来事も紹介されています。

当時、日本国債は一部の途上国より低い格付けだと指摘されました。これに対して財務省は、格付け会社に意見書を送りました。

その中では、日本やアメリカなどの先進国が発行する自国通貨建て国債について、デフォルトは考えにくいという趣旨の反論が示されています。

この主張は、自国通貨を発行できる政府は、自国通貨建ての債務で支払い不能にはなりにくいというMMTの説明と重なります。

表向きにはMMTを否定する一方、国債の信用力を説明する場面ではMMTに近い論理を用いている点が、動画で注目されています。

もっとも、自国通貨建て国債のデフォルトが起きにくいことと、財政赤字を無制限に増やしてよいことは同じではありません。

返済資金を用意できても、通貨価値の低下や物価上昇、金利上昇などの問題が発生する可能性があります。

アメリカのコロナ対策は巨大な財政実験だった

新型コロナウイルスの感染拡大時、アメリカでは経済活動が急停止しました。

政府は景気と国民生活を支えるため、現金給付や失業給付の拡充、大規模な企業支援を実施しました。平常時のように財源を細かく議論するよりも、まず支出を行うことが優先されました。

これは、政府支出が先に行われるというMMT的な状況に近いものでした。

その結果、アメリカ政府が直ちに財政破綻することはなく、経済は主要国の中でも比較的速い回復を見せました。

しかし、その後、アメリカでは約40年ぶりとなる高いインフレが発生し、消費者物価上昇率は一時9%を超えました。

MMTの否定派は、大規模な現金給付や財政支出によって需要が膨らみ、インフレを引き起こしたと批判しました。

一方、MMTの支持者は、政府が資金不足で破綻するのではなく、実物資源や供給力の不足によってインフレが限界になるという理論どおりの結果だったと主張しました。

両者は立場こそ違いますが、政府支出が増加する一方で商品の供給が追いつかなければ、物価が上がるという同じ現象を見ています。

もちろん、アメリカのインフレは現金給付だけが原因ではありません。工場の停止や物流網の混乱、半導体不足、エネルギー価格の上昇など、供給側の問題も大きく影響しました。

お金の量が増えた一方で、商品やサービスの供給が制限されたという点では、魚の島の例と共通しています。

日本にも物価と金利の請求書が届き始めた

日本は長年、物価がほとんど上がらないデフレや低インフレの状態にありました。

そのため、大規模な国債発行や金融緩和を続けても、強いインフレが起こらず、財政赤字の拡大が大きな問題として表面化しにくい時期が続きました。

しかし近年、日本でも食品、エネルギー、日用品、サービスなどの価格が上昇しています。長期金利も過去の超低金利期と比べて上昇しています。

国債を発行しても直ちに破綻しないとしても、それが無料であるとは限りません。

財政支出や金融緩和の影響は、債務不履行ではなく、物価上昇や金利上昇という形で現れる場合があります。

政府の利払い費が増加すれば、将来の予算にも影響します。家計にとっては、生活費の上昇や住宅ローン金利の上昇につながる可能性があります。

MMTの視点では、政府の財政を考える際に、借金の残高だけでなく、インフレ率、金利、生産能力、雇用、エネルギー供給などを見る必要があります。

MMTが成立する国には条件がある

MMTの「政府は破綻しない」という表現だけが広がると、重大な誤解を招きます。

この議論が成立するためには、いくつかの条件があります。

政府が自国通貨を発行していること、政府債務の大部分が自国通貨建てであること、為替相場が固定されず変動する仕組みであることなどです。

日本、アメリカ、イギリスなどは、比較的この条件に当てはまります。

こうした政府は、MMTの用語では「通貨の発行者」と呼ばれます。

一方、個人、家計、企業、地方自治体は、自分で通貨を発行できません。これらは「通貨の利用者」です。

通貨の発行者と利用者では、財政運営のルールが異なります。

国と家計を同じように考えてはいけない理由

私たち個人は、円を必要に応じて発行できません。収入や貯金の範囲を超えて支出を続ければ、借金が増え、最終的に返済できなくなる可能性があります。

企業も基本的には同じです。売上や融資で資金を調達し、支払いを行わなければなりません。

地方自治体も、国と同じ円を使っていますが、自分で円を発行する権限はありません。

そのため、国の財政と家計や地方自治体の財政を、単純に同じものとして扱うことはできません。

動画では、その具体例として北海道夕張市の財政破綻を取り上げています。

夕張市が財政破綻した理由

夕張市は、かつて炭鉱で栄えた自治体です。しかし炭鉱の閉山後、観光施設などへの投資を拡大し、巨額の赤字を抱えました。

赤字の一部が分かりにくい形で処理されていましたが、最終的に約350億円規模の財政問題が表面化し、2000年代に事実上の財政破綻状態となりました。

その後、市民の税負担や公共料金が上がり、行政サービスも縮小されました。施設の閉鎖や職員数の削減など、厳しい財政再建が行われています。

国の借金が1000兆円を超えても直ちに破綻していない一方、夕張市は約350億円の赤字で深刻な状況に陥りました。

この違いは、単なる規模の差ではありません。

日本政府は円を発行する仕組みを持っていますが、夕張市は円を発行できません。夕張市は通貨の発行者ではなく、家計や企業と同じ通貨の利用者だからです。

地方自治体は、税収や国からの交付金、地方債などを通じて資金を調達しなければなりません。自ら通貨を発行して債務を返済することはできません。

国と地方自治体は、どちらも公的機関ですが、通貨制度上は異なる存在です。

ギリシャは国なのになぜ財政危機に陥ったのか

「自国通貨を発行できる国は破綻しないのであれば、ギリシャはなぜ財政危機に陥ったのか」という疑問もあります。

ギリシャは国家ですが、使用している通貨はユーロです。

ユーロを発行できるのは、ギリシャ政府ではなく欧州中央銀行です。ギリシャ政府が独自の判断でユーロを発行することはできません。

そのため、ギリシャは通貨制度上、円を発行できない地方自治体と似た制約を抱えています。

動画では、ギリシャを「国の姿をした巨大な夕張」と表現しています。

財政危機の際、ギリシャは欧州連合や国際機関から支援を受ける代わりに、年金削減や増税、歳出削減などの厳しい緊縮策を受け入れました。

自国で通貨を発行できないため、資金不足を通貨発行で補うことができなかったのです。

アルゼンチンが自国通貨を持ちながらデフォルトした理由

アルゼンチンは自国通貨であるペソを発行できますが、過去に何度も債務問題やデフォルトを経験しています。

その理由の1つは、政府債務の多くが米ドルなどの外貨建てだったことです。

アルゼンチン政府はペソを発行できますが、ドルは発行できません。ドル建て債務を返済するには、輸出や外貨準備などを通じてドルを確保する必要があります。

ペソを大量に発行してドルを購入しようとすれば、ペソの価値が急落し、さらに深刻なインフレを招く可能性があります。

MMTの「破綻しない」という説明を正確に表現すると、自国通貨を発行する政府は、自国通貨建ての借金について、通貨不足を理由とする債務不履行には陥りにくい、ということです。

外貨建て債務まで自由に返済できるという意味ではありません。

日本国債の大部分は円建てであり、日本は円を発行する仕組みを持っています。この点で、日本は夕張市、ギリシャ、アルゼンチンとは条件が異なります。

ただし、日本にもインフレや円安、金利上昇という別の制約があります。

政府の借金は誰かの資産でもある

ニュースでは「国の借金が1000兆円を超え、国民1人当たりに換算すると800万円以上になる」といった表現が使われることがあります。

この数字だけを見ると、国民全員が政府の借金を背負っているように感じられます。

しかし、政府の借金である国債は、民間側から見れば金融資産です。

国債は、銀行、保険会社、年金基金、投資家、日銀などが保有しています。政府が負債として計上する国債は、保有者にとっては資産として計上されます。

政府が赤字を増やして民間へ支出すれば、民間側には預金や国債などの金融資産が残ります。

単純化すれば、政府の赤字と民間の黒字は表裏一体の関係にあるという見方ができます。

もちろん、政府がどのような分野に支出したのか、誰の資産が増えたのか、将来の税負担がどうなるのかは別に検討する必要があります。

それでも、政府の借金だけを示し、その裏側にある民間の資産を無視すると、財政全体の姿を正しく理解しにくくなります。

日本で見るべきは破綻よりインフレ

日本が円建て国債について形式的なデフォルトを起こす可能性だけを考えても、財政問題の全体像は見えてきません。

動画では、日本について見るべき指標は「破綻メーター」ではなく「インフレメーター」だと説明しています。

政府は円を発行できるため、円建て債務の支払い資金を用意することは可能です。

しかし、通貨を発行して支出を増やせば、需要が増加します。その一方で、商品の供給や人手、エネルギー、住宅、設備が十分に増えなければ、物価が上昇します。

さらに円の供給増加や金利差などによって円安が進めば、輸入品の価格が上昇し、国内のインフレが強まる可能性もあります。

政府が債務不履行を回避しても、国民が物価上昇によって負担を受けるのであれば、問題が消えたわけではありません。

負担の現れ方が、増税やデフォルトではなく、購買力の低下になっているだけです。

インフレが「隠れた税金」と呼ばれる理由

インフレとは、物価が継続的に上昇し、通貨の購買力が低下する現象です。

物価が3%上昇した場合、100万円の預金残高が97万円になるわけではありません。銀行口座には引き続き100万円と表示されます。

しかし、前年に100万円で購入できた商品やサービスを買うために、翌年は103万円程度必要になる可能性があります。

預金の額面は変わらなくても、実質的な価値が低下しているのです。

税金であれば、所得税率や消費税率が示され、給与明細や領収書などで負担を確認できます。

一方、インフレによる負担は、預金残高から直接差し引かれません。生活費が少しずつ上がることで、気づかないうちに資産の購買力が失われます。

このため、インフレは「見えない税金」や「隠れた税金」と表現されます。

通常の増税には法律改正や国会での審議が必要です。しかしインフレは、税率を変更しなくても家計の実質的な購買力を減少させます。

特に現金や普通預金を多く持つ人ほど、その影響を受けやすくなります。

タンス預金からも実質的な負担を取れる

現金を自宅に保管している場合、税務署や金融機関がその存在を把握していないことがあります。

そのため、通常の資産課税では、すべてのタンス預金を正確に把握して課税することは困難です。

しかしインフレが起きれば、保管場所に関係なく円の購買力が低下します。

銀行口座にある100万円も、自宅の金庫にある100万円も、財布に入っている1万円札も、物価が上がれば同じように買えるものが減ります。

税務署が個別の資産を調査する必要はありません。円を持っている限り、原則として購買力低下の影響を受けます。

これが、動画の冒頭で示された「銀行に預けられていないタンス預金からも、眠っている現金資産からも負担を取る方法」の答えです。

ただし、インフレは政府が意図的に起こす場合だけでなく、原材料価格の上昇、円安、供給不足、戦争、災害、人手不足など、さまざまな原因によって発生します。

すべてのインフレを政府による課税と同一視することはできません。

それでも、結果として現金の実質価値を低下させるという点では、インフレが税金に似た働きをすることは確かです。

日本人はインフレへの備えが弱い可能性

日本では、長期間にわたり低インフレやデフレが続きました。

現金を保有していても、物価が大きく上昇しない時代には、購買力が急速に低下する心配は小さくなります。

むしろ、預金や現金を持ち続けることが、安全な資産管理として受け入れられてきました。

しかし、物価が継続的に上昇する環境では、現金中心の資産構成が必ずしも安全とはいえません。

元本の数字が減らなくても、実質的な価値が少しずつ低下するからです。

例えば、物価が毎年3%ずつ上昇した場合、100万円の購買力は10年後に現在の約74万円相当まで低下します。

計算上の残高は100万円のままでも、購入できる商品やサービスは約4分の3になる可能性があります。

長年デフレに慣れてきた日本人ほど、残高が減らないことを安全と考え、購買力の低下を見落としやすい点には注意が必要です。

インフレから資産を守る方法

動画では、インフレから資産を守るには、円という通貨だけで資産を持たず、株式や不動産など、通貨以外の形でも保有する必要があると説明しています。

株式は企業の所有権の一部であり、企業が値上げによって売上や利益を伸ばせれば、長期的にインフレへの耐性を持つ場合があります。

不動産も、建築費や土地価格、家賃などが物価とともに上昇する可能性があります。

金などの実物資産や、外貨建て資産も、円の価値が低下する局面で資産を守る手段として検討されます。

ただし、通貨以外の資産であれば必ずインフレに勝てるわけではありません。

株価は企業業績や金利の影響で下落することがあります。不動産には空室、修繕、金利、災害などのリスクがあります。金は利息や配当を生みません。外貨資産は為替変動によって損失が出る可能性があります。

重要なのは、現金をすべて投資に回すことではなく、生活資金を確保したうえで、複数の資産へ分散することです。

インフレ対策として資産運用を行う場合も、自分の年齢、収入、支出、投資期間、リスク許容度に合わせて判断する必要があります。

MMTの弱点は政治がブレーキを踏めるかどうか

動画の発信者は、MMTを全面的に支持しているわけではありません。

特に疑問を示しているのが、インフレ発生後に政府が適切なブレーキを踏めるのかという問題です。

MMTの理論では、政府支出によって需要が増えすぎ、インフレが発生した場合、増税や歳出削減によって市場から通貨を回収します。

理論上は整合的です。

しかし、実際の政治では、物価高によって国民生活が苦しくなっているときに、政府がさらに増税や給付削減を行うことは簡単ではありません。

「インフレを抑えるために増税します」と説明しても、有権者の理解を得られるとは限りません。

中央銀行による利上げでさえ、住宅ローンや企業の借入負担を増やすため、強い反発を受けることがあります。

増税や歳出削減を決めるのは、選挙で選ばれた政治家です。そのため、景気対策として支出を増やすアクセルは踏みやすい一方、増税や給付削減というブレーキは踏みにくい構造があります。

MMTの問題は、経済理論としての整合性だけでなく、政治制度の中で適切に運用できるかどうかにあります。

政府がインフレの兆候を正確に把握し、適切な時期に支出を抑えられるとは限りません。対応が遅れれば、インフレが加速する危険性があります。

MMTは信仰ではなく経済を見るレンズ

MMTには、熱心な支持者と強い批判者がいます。

しかし動画では、MMTを全面的に信じるか、完全に否定するかという二者択一ではなく、経済を見るための「レンズ」として利用する考え方が示されています。

MMTの視点を持つと、政府の借金に関するニュースの見え方が変わります。

政府の借金は、単なる家計の借金とは異なります。政府の負債である国債は、民間の資産でもあります。国が自国通貨建てで借金している場合、返済資金がなくなる可能性よりも、インフレや金利、為替、供給力の問題が重要になります。

一方で、個人や企業、地方自治体は通貨を発行できないため、国と同じ理屈で支出することはできません。

MMTを知ることで、国の財政と家計の財政を分けて考えられるようになります。

国の財政を家計簿とまったく同じように考えるのも誤りですが、家計が政府のように無制限に借金できると考えるのも危険です。

両者は、同じ円を使っていても、通貨制度上の立場が異なります。

国の財政と個人の資産管理はつながっている

国債や財政赤字の話は、一般の生活とは関係がないように思えるかもしれません。

しかし、政府がどのように支出し、中央銀行がどのような金融政策を行うかは、物価、金利、為替、賃金、株価、不動産価格などに影響します。

政府が大規模な支出を行い、需要が供給力を上回れば、インフレが発生する可能性があります。

インフレになれば、現金や預金の実質価値が低下します。住宅ローン金利や企業の借入金利が上昇する可能性もあります。

一方で、企業の売上や資産価格、賃金が物価上昇とともに増えることもあります。

そのため、国の財政問題は、最終的に私たちが資産をどのような形で保有するかという問題につながります。

国が破綻するかどうかだけではなく、自分の資産の購買力が維持されるかどうかを見ることが重要です。

まとめ

MMTは、自国通貨を発行できる政府は、自国通貨建ての債務について、資金不足を理由に破綻することはないと考える理論です。

政府支出の本当の限界は、通貨の発行額ではなく、商品、サービス、労働力、設備、エネルギーなどの供給力にあります。

政府が供給力を超えて支出を増やせば、通貨不足による破綻ではなく、インフレという形で問題が現れます。

ただし、この理論が当てはまるのは、自国通貨を発行し、債務の大部分が自国通貨建てである政府です。

円を発行できない個人、企業、地方自治体は、政府とは異なる財政ルールで動きます。ユーロを独自に発行できないギリシャや、外貨建て債務を多く抱えたアルゼンチンも、日本やアメリカとは条件が異なります。

日本は円建て国債を発行し、日銀を通じて自国通貨を供給できるため、単純な資金不足によるデフォルトの可能性だけを見るのは適切ではありません。

一方で、国債発行や金融緩和に負担がないわけではありません。その影響は、物価上昇、円安、金利上昇などの形で国民生活に現れる可能性があります。

特にインフレは、銀行預金だけでなく、自宅に保管されたタンス預金の購買力も低下させます。税務署が現金の所在を把握しなくても、円を持っている限り、その実質価値は目減りします。

これが、インフレが「隠れた税金」と呼ばれる理由です。

長年デフレに慣れてきた日本では、預金残高が減らないことを安全と考えがちです。しかし、物価上昇が続く環境では、額面ではなく購買力を見る必要があります。

生活に必要な現金を確保しつつ、株式、不動産、外貨、実物資産などへ適切に分散することが、インフレへの備えになります。

MMTを全面的に信じる必要はありません。しかし、国の財政を家計と同じように考えることの問題点や、政府債務の限界がインフレとして現れる可能性を理解するためのレンズとしては、有用な考え方だといえるでしょう。

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