1ドル163円の円安はなぜ止まらない?「円を使う用事」と「円を持つ理由」から読み解く日本経済

本記事は、YouTube動画『1ドル163円、円安の正体を極端にシンプルに解説』の内容を基に構成しています。

円相場は1ドル163円前後まで下落し、およそ40年ぶりの円安水準にあると動画では説明されています。政府はこの春、過去最大となる11兆円超の為替介入を実施しましたが、約2カ月後には円相場が介入前よりも安い水準へ戻ってしまいました。

なぜ、これほど大規模な円買い介入を行っても円安を止められなかったのでしょうか。

動画では、現在の円安を説明する理由は極端に単純化すると、次の2つしかないと指摘しています。

  • 世界に円を使う用事が少なくなったこと
  • 円を持っていても大きなメリットがないこと

金利差、投機筋、日本売りといった言葉は、すべてこの2つの理由を細かく説明したものにすぎないという見方です。

本記事では、動画の時間の流れに沿いながら、円安が進む構造、円安によって得をする人と損をする人、今後起こり得る急激な円高、そして日本株との関係まで詳しく解説します。

目次

円安を「円が売られた」と説明しても本質は分からない

円安が進むと、専門家からは「日米の金利差が意識された」「投機筋が円を売った」「日本売りが進んだ」といった説明が出てきます。

しかし動画では、こうした説明の多くは相場が動いた後につけられた理由にすぎないと指摘しています。

実際、同じ時期でも為替の専門家による予想は、1ドル165円から152円まで大きく分かれることがあります。本気で分析していても、予想に13円もの差が出る世界です。

一方で、相場が動いた後の解説はほとんど外れません。円安になれば「金利差が意識された」、円高になれば「金利差の縮小が意識された」と説明できるためです。

さらに、よく使われる「今日は円が売られた」という表現にも注意が必要です。

誰かが円を売った場合、その円を買った人が必ず存在します。外国為替取引は売り手と買い手の両方がいなければ成立しないため、売られた円と買われた円の数量は常に同じです。

したがって、「売りたい人が多かったから円安になった」というだけでは、円相場が下がった理由を正確に説明したことにはなりません。

円安とは、その価格で円を買いたい人が足りない状態

円安の日に変化するのは、売られた円と買われた円の数量ではなく、取引が成立する価格です。

それまでの価格では円を買いたい人が十分に現れなかったため、買い手が現れる水準まで円の価格が下がります。これが円安です。

つまり、円安を正確に言い換えると、次のようになります。

「その価格で円を欲しがる人が、その価格で円を手放してもよいと考える人より少なかった」

金利差や投機筋の動きも、結局は「その価格で円を欲しがる人が足りない」という状態の中身を説明しているにすぎません。

では、なぜ円を欲しがる人が不足しているのでしょうか。

動画では、人がお金に対してできることは「使う」か「持つ」かの2つしかないと整理しています。

そのため、円を欲しがる人が少ない理由も、次の2つに分けて考えられます。

1つ目は、円を使う用事が減ったことです。

2つ目は、円を持っておく理由が乏しいことです。

世界から円を使う用事が減っている

外国人が円を必要とするのは、円で代金を支払う必要があるときです。

かつての日本には、世界中の人々が円を使わなければならない大きな理由がありました。それが日本の貿易黒字です。

かつては日本製品を買うために円が必要だった

1990年代の日本は、毎年10兆円を超える貿易黒字を記録していました。

世界中の企業や消費者が日本の自動車、家電、機械などを購入していました。日本の輸出企業は海外で受け取ったドルを円へ交換し、日本国内の従業員の給料や部品代、設備費などを支払っていました。

その結果、輸出が増えるほど円を買う需要が自動的に発生していました。

当時は、日本製品を購入するという経済活動そのものが、円を使う用事を生み出していたのです。

海外生産の拡大で貿易黒字が縮小

しかし、現在は日本企業の生産拠点が海外へ移っています。

例えば、アメリカで販売する日本車をアメリカ国内で生産すれば、売上も給料も部品代も現地通貨で決済されます。日本企業が利益を得たとしても、その取引の過程で円を買う必要はありません。

その結果、日本の貿易収支は、かつてのような大幅な黒字ではなく、ほぼ均衡する状態になっていると動画では説明しています。

世界が日本製品を買うために円を用意するという、円にとって最大級の需要が弱くなったのです。

日本人が外貨を使う用事は増え続けている

世界が円を必要とする理由が減る一方、日本人がドルなどの外貨を必要とする場面は増えています。

日本は原油、天然ガス、食料など、多くの生活必需品を海外から輸入しています。これらは景気が悪化したからといって簡単に購入をやめられるものではありません。

原油や天然ガスを購入するには、円を売ってドルなどの外貨を用意する必要があります。

さらに近年は、新しい外貨需要としてデジタル関連の支払いが急増しています。

年間7兆円規模のデジタル赤字

企業の業務システムは海外企業のクラウドサービス上で動き、インターネット広告費はGoogleなどの海外企業へ支払われます。

家庭でもNetflixをはじめとする海外の動画配信サービス、スマートフォン向けサービス、ソフトウェアなどを利用しています。

こうしたデジタルサービスへの支払いによって、年間約7兆円の資金が海外へ流出していると動画では説明しています。これが「デジタル赤字」です。

デジタルサービスは、一度導入されると簡単に利用を中止できません。企業活動や日常生活に深く組み込まれているため、継続的に外貨を必要とする構造になっています。

インバウンド収入はデジタル赤字で相殺される

円安によって外国人観光客が増えれば、訪日客は日本国内で宿泊、飲食、買い物をするために円を使います。

インバウンド消費は、日本に円需要を生み出す貴重な要因です。動画では、その規模を年間約7兆円としています。

ただし、デジタル関連の支払いによって海外へ流出する資金も年間約7兆円です。

観光で約7兆円を稼いでも、クラウド、広告、動画配信、ソフトウェアなどの支払いとして約7兆円が海外へ出ていけば、全体として円を使う用事は大きく増えません。

観光立国として稼いだ外貨を、そのまま米国の巨大IT企業へ送金しているような構造です。

経常黒字でも円高にならない「仮面の黒字」

日本は大幅な経常黒字を記録しているため、「海外から日本へお金が入っているなら、円高になるはずだ」と考える人もいるでしょう。

しかし、現在の経常黒字は、かつてのような貿易黒字が中心ではありません。

その多くは、日本企業や投資家が海外資産から受け取る利子や配当、海外子会社の利益です。動画では、その規模を年間約42兆円と説明しています。

海外で稼いだ利益が日本へ戻らない

重要なのは、海外で得た利益の多くが円に交換されず、そのまま海外で再投資されていることです。

日本企業の海外子会社が利益を得ても、現地で工場を拡張したり、新しい会社を買収したりすれば、資金は外貨のまま使われます。

ドルで稼いだ利益がドルのまま別の海外資産へ変わるため、円を買う需要にはなりません。

帳簿上は日本の黒字として計上されていても、実際の外国為替市場では円需要が生まれない状態です。

動画では、こうした日本の経常黒字を、みずほのアナリストが「仮面の黒字」と表現していると紹介しています。

つまり、世界の側では円を使う用事が減り、日本の側では外貨を使う用事が増えています。円を「使う」という面で、円を欲しがる理由が弱くなっているのです。

円を持っていても資産が増えにくい

次に問題となるのが、円を「持つ」理由です。

通貨を保有する主なメリットの1つは金利です。

動画では、円の金利が約1%である一方、日本の物価が約1.6%上昇している状況を例に挙げています。

金利が1%ついても物価が1.6%上昇すれば、実質的な購買力は毎年減少します。円を預金として持っていても、受け取る利息以上に物価が上がるためです。

一方、ドルには3.5%以上の金利がつくと説明されています。

為替変動や各国の物価上昇率まで考えれば、最終的な損益は単純ではありません。しかし、毎年受け取れる金利だけを比べれば、円よりドルを持ちたいと考える投資家が増えるのは自然です。

日銀の金融緩和で円の供給量が大きく増えた

円を持つ魅力が乏しいだけでなく、市場に存在する円の量も大きく増えています。

日銀は異次元金融緩和によって、円の供給量を一時、従来の約5倍まで拡大しました。

現在は少しずつ資金を回収しているものの、それでも13年前と比べて4倍以上の規模が残っていると動画では説明しています。

一方、日本経済の規模は同じ期間に約1.2倍にしか成長していません。

経済規模の伸びを大きく上回るペースで円の量が増えた結果、円は「大量に存在するのに、保有しても大きく増えない通貨」になりました。

一般に、供給が多く、保有するメリットも小さいものは、価格が下がりやすくなります。

もちろん、日銀が増やした円がそのまますべて外国為替市場で売られるわけではありません。

しかし、大量の円を供給しながら低金利を維持したことで、円を借りて外貨へ交換する取引が行いやすくなりました。金融緩和は、こうした経路を通じて円相場へ影響しています。

日本の家計と企業も円を外貨へ替えている

円を外貨へ交換しているのは、海外の投機筋だけではありません。

日本の家計は新NISAなどを通じて、毎月、兆円単位で外国株や海外投資信託を購入しています。

外国株を購入するときには、金融機関が投資家の円を外貨へ交換します。つまり、外国株を買う行為の裏側には、円を売って外貨を買う取引があります。

動画では、日本の家計が保有する金融資産のうち、現金と預金の割合が前年に初めて5割を下回ったと説明しています。

企業も過去最高のペースで海外企業の買収を進めています。海外企業を購入する場合も、円を売ってドルなどの外貨を用意する必要があります。

老後資金を増やしたい家計も、海外で成長機会を探す企業も、合理的な判断として円から外貨へ資金を移しているのです。

円は「持つ通貨」から「借りて売る通貨」へ

海外のプロ投資家の間では、金利の低い円を借り、その円を売って金利の高いドルなどで運用する取引が行われています。

これが「円キャリートレード」です。

円は、長期的に保有して利息を得る通貨というよりも、低金利で借りて別の通貨へ交換するための資金調達通貨として利用されています。

動画では、この状況を「円は持つ通貨ではなく、借りて売る通貨になった」と表現しています。

円を使う用事が少なく、持っておく理由も乏しいため、その価格で円を欲しがる人が、円を手放したい人より少なくなります。

これが動画の示す円安の基本構造です。

円安は生活者にとって明確な負担

現在の生活だけを見れば、円安は多くの日本人にとって明確なマイナスです。

日本はエネルギーや食料、原材料などを海外から輸入しています。円安になると、同じ商品を購入するために、より多くの円を支払わなければなりません。

輸入企業はコスト上昇分を商品価格へ転嫁するため、電気代、ガソリン代、食品、日用品などの価格が上がります。

一方、多くの人は円で給料を受け取り、円で貯金しています。物価が上がっても賃金が同じペースで増えなければ、実質的な生活水準は低下します。

動画では、世界基準で見た円の購買力はピーク時の約3分の1になり、シンガポールでは一般的なラーメンが1杯約2500円すると紹介しています。

日本国内では同じ金額で生活できているように見えても、海外の商品やサービスと比較すると、円の購買力は大きく低下しているのです。

円安で利益を得ているのは海外資産を持つ企業や政府

為替や物価の変化は、社会全体からお金を消すのではなく、ある人から別の人へ移す働きをします。

円安によって生活者が負担を受けている一方、利益を得ている人も存在します。

代表的なのは、海外に資産を持つ企業や投資家です。

海外で事業を行う大企業は、ドルなどで得た利益を円に換算したときの金額が増えます。海外株、外国債券、不動産などを持つ投資家も、外貨建て資産の円換算額が膨らみます。

政府も大規模な外貨資産を保有しているため、円安によって円換算上の資産価値が増加します。

先ほど紹介した海外投資からの年間約42兆円の所得も、円換算すれば円安によって金額が膨らみます。

国全体の帳簿だけを見れば、円安にはプラスの面もあるのです。

問題は円安の利益が家計へ配られないこと

現在の円安で最大の問題は、国や企業が得た利益が、生活者の所得へ十分に流れていないことです。

かつて日本企業の工場が国内に多く存在した時代には、円安になると日本製品の輸出競争力が高まりました。

輸出が増えれば国内工場の生産が増え、雇用や残業、設備投資、賃金などを通じて、円安の利益が幅広い家計へ届きました。

しかし現在は、工場や子会社が海外にあります。

円安によって企業の海外利益や資産評価額が増えても、その利益が海外に残ったままであれば、国内の雇用や給料には直結しません。

円安そのものが絶対的に悪いというよりも、円安による利益の配分方法が変わったことが問題です。

企業や政府の帳簿には利益が積み上がる一方、一般家庭は輸入物価の上昇だけを強く受けています。

今後、円安の構造は変わるのか

円安の今後も、「円を使う用事」と「円を持つ理由」という2つの視点から考えることができます。

円を使う用事は増えるのか

円を使う用事として期待されるのは、インバウンド需要です。

訪日外国人の増加によって、宿泊、飲食、買い物、交通などに円が使われる機会は増えています。

しかし一方で、デジタル赤字は今後10年で2倍になる可能性があると動画では説明しています。

インバウンド収入が増えたとしても、海外のクラウド、広告、ソフトウェア、配信サービスなどへの支払いがさらに拡大すれば、円需要が外貨需要を上回るとは限りません。

現時点では、円を使う用事が大幅に増え、需給の天秤が円の側へ傾く材料は見えにくいという見方です。

円を持つ理由は増えるのか

円の金利が物価上昇率をしっかり上回れば、円は再び保有する価値のある通貨になる可能性があります。

しかし、日本政府は巨額の債務を抱えています。

金利を急激に引き上げれば、国債の利払い費が増加し、政府の財政負担が重くなります。住宅ローンや企業融資の負担も大きくなるため、日銀は急速な利上げを行いにくい状況です。

日銀がゆっくりとしか金利を引き上げられないのであれば、円を持つ魅力も当面は大きく改善しません。

したがって、円安を生み出している構造が大きく変わる理由は、現時点では見当たらないというのが動画の見立てです。

円が突然急騰する可能性は残っている

円安が長期的に続く可能性があっても、一直線に円安が進むとは限りません。

円には、突然大きく買い戻される要因が存在します。

その要因が、円キャリートレードの巻き戻しです。

海外投資家は、金利の低い円を借りて円を売り、ドルなどの高金利通貨へ交換して運用しています。

しかし、借りた円は最終的に返済しなければなりません。

円で借りた資金を返すためには、ドルなどを売り、円を買い戻す必要があります。

つまり、円キャリートレードには、取引を始めた時点から「将来、円を買う」という行為が組み込まれています。

2024年8月に起きた円キャリートレードの巻き戻し

動画では、円キャリートレードの巻き戻しが実際に起きた例として、2024年8月の相場を挙げています。

日銀がわずかに金利を引き上げたことで、投資家は円を低金利で借りるメリットが減少すると判断しました。

その結果、多くの投資家が円キャリートレードを解消し、借りていた円の返済を急ぎました。

円は1カ月足らずで1ドル160円台から141円程度まで急上昇し、日経平均株価は1日で12%下落する歴史的な急落を記録したと動画では説明しています。

このとき起きたのは、長期的な日本買いというより、借りていた円を返済するための買い戻しです。

キャリートレードの巻き戻しは一時的な円需要

円キャリートレードの返済は、大きな円需要を生み出します。

ただし、返済は1度行えば終わります。

円を使い続ける恒常的な用事が増えたわけでも、円を長期保有したい理由が生まれたわけでもありません。

そのため、ポジション解消によって一時的に円高が進んでも、返済が終われば円需要は消えます。

2024年8月の急激な円高が長続きしなかったのも、円安の根本構造が変化していなかったためです。

日銀の利上げで円相場は荒くなりやすい

今後も日銀が金利を引き上げるたびに、円キャリートレードの解消が起きる可能性があります。

円を借りて外貨で運用している投資家が一斉に返済へ動けば、円は短期間で大幅に上昇します。

その結果、円相場は円安方向へ一方的に動くのではなく、突然大きく円高へ振れ、その後再び円安へ戻るという荒い値動きになりやすいと考えられます。

ただし、それはあくまで需給の一時的な巻き戻しです。

動画では、1ドル100円を下回っていた時代のような円高へ恒常的に戻る道筋は見えないとしています。

円を使う用事と円を持つ理由という、通貨価値の土台が変化していないためです。

円安でも日本企業が見放されたわけではない

円安が進んでいるからといって、日本経済や日本企業が世界から見放されているわけではありません。

動画では、外国人投資家が前年度に日本株を約10兆円買い越したと説明しています。

外国人投資家は円を長期間保有したくない一方、日本企業の株式には投資したいと考えています。

一見すると矛盾しているように見えますが、通貨と企業の評価は別です。

円の価値が下がっていても、利益を伸ばす企業、海外売上の大きい企業、値上げができる企業、資本効率を改善する企業は投資対象になります。

円の成績が悪いからといって、日本企業の成績まで悪いとは限りません。

円で暮らす人にとって日本株が選択肢になる理由

動画では、円で生活する日本人にとって、日本株は資金の置き場所として合理性があると説明しています。

これは特定の銘柄を推奨するものではなく、円安と物価上昇の構造から考えた一般論です。

金利上昇は銀行などの収益環境を改善する

金利が存在する経済では、銀行をはじめとする金融機関が融資によって利益を得やすくなります。

長年の低金利やマイナス金利によって圧迫されていた利ざやが改善すれば、金融機関の収益力が回復する可能性があります。

物価上昇は企業の売上を押し上げる

物価が上昇する世界では、商品やサービスの販売価格も上がります。

値上げが可能な企業であれば、売上や利益を増やせる可能性があります。

円預金の実質価値が目減りする状況は、裏返せば、物、設備、土地、企業などの名目価格が上昇しやすい状況でもあります。

現金だけを保有するよりも、企業の成長や値上げによる利益を取り込める株式を保有する方が、物価上昇への対応策になり得ます。

日本株には為替変動による目減りがない

外国株は円安が進んでいる間、株価上昇と円安による為替差益の両方を得られる場合があります。

しかし、円キャリートレードの巻き戻しが起きると、海外株の下落と円高が同時に進む可能性があります。

その場合、日本の投資家は外貨建て株価の下落に加え、為替差損も受けることになります。

日本株は円建てで取引されるため、少なくとも外貨から円へ換算するときの為替目減りはありません。

大きな値上がりや値下がりがあることを理解したうえで、長期的に保有する資金であれば、日本株は理にかなった選択肢になり得るという考えです。

円安を進めているのは日本人自身の合理的な行動

現在、円を手放しているのは、海外の投機家だけではありません。

老後に備えて海外資産を購入する日本の家計や、成長市場を求めて海外企業を買収する日本企業も円を外貨へ交換しています。

これは日本に対する悲観だけが原因ではありません。

日本人が自分の資産を守ろうとし、日本企業が生き残ろうとした結果として行っている合理的な判断です。

多くの家計と企業による個別の合理的な行動を合計すると、円を売って外貨を買う巨大な流れになります。

政府が為替介入を行っても、この構造的な資金移動が続く限り、効果は一時的になりやすいと考えられます。

まとめ

動画では、現在の円安を「世界に円を使う用事がないこと」と「円を持っていても大きなメリットがないこと」という2つの理由から説明しています。

かつての日本には大規模な貿易黒字があり、世界中で日本製品を購入するための円需要が発生していました。

しかし現在は、日本企業の海外生産が進み、貿易によって円を買う需要は弱くなっています。

その一方で、日本はエネルギー、食料、デジタルサービス、外国株、海外企業の買収などを通じて、大量の外貨を必要としています。

経常黒字は大きくても、その多くが海外投資からの利子や配当であり、利益が外貨のまま現地で再投資されれば円需要にはつながりません。

さらに、円は低金利であり、物価上昇率を考慮すると、保有しているだけで実質的な価値が減少する可能性があります。

その結果、円は長期保有する通貨ではなく、低金利で借りて外貨へ交換するための通貨として利用されるようになりました。

政府による為替介入や円キャリートレードの巻き戻しによって、一時的に急激な円高が進むことはあります。

しかし、円を継続的に使う用事と、円を長期間持ちたい理由が増えない限り、円安を生み出す根本的な構造は変わりません。

円安が本当の意味で止まるのは、介入によって円が一時的に買われたときではなく、日本国内で円を使う経済活動が増え、円を保有するメリットが再び育ったときです。

今後、円に関するニュースを見る際には、「円を使う用事が増えたのか」「円を持つ理由が強くなったのか」という2つの視点で考えることで、為替相場の動きをより冷静に理解できるようになります。

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