本記事は、YouTube動画『AI半導体はセリングクライマックスだったのか|条件は5つ揃い、1つだけ欠けていた7月29日』の内容を基に構成しています。動画内の数値は、2026年7月29日の大引け時点および同日午後5時20分ごろの夜間取引を基準としています。
7月29日の株式市場で答えが2度ひっくり返った
2026年7月29日の株式市場では、AI半導体株をめぐる評価が1日のうちに大きく変化しました。
最初の転換点は昼過ぎです。
韓国の大手半導体メーカー、SKハイニックスが四半期決算を発表しました。動画によると、売上高は前年同期比257%増、営業利益は557%増となり、四半期として過去最高の業績を記録しました。
通常であれば株価の上昇材料ですが、SKハイニックス株は上昇して始まった後、一時20%安まで下落しました。
そして、2回目の転換点が日本市場の取引終了後に訪れます。
半導体検査装置大手のアドバンテストが午後3時30分に決算を発表し、今年度の最終利益見通しを42%引き上げました。もともと過去最高益を見込んでいたところに、さらに上方修正を加えた形です。
この発表を受け、アドバンテスト株は夜間取引で11.49%上昇しました。
同じ日に、同じ「過去最高」という好業績が、韓国では売る理由となり、日本では買う理由となったのです。
動画では、この日の急落が売りの最終局面を意味する「セリングクライマックス」だったのかを検証しています。
日経平均は930円安でも全面安ではなかった
7月29日の日経平均株価の終値は6万1434円19銭となり、前日比930円73銭安、下落率は1.49%でした。終値としては約2か月ぶりの安値です。
ただし、終値だけではこの日の激しい動きは分かりません。
高値は6万3138円、安値は6万448円で、1日の値幅は2689円に達しました。
前日に2500円を超える下落があった反動から、朝方は買いが先行しました。しかし、午後になると相場は急速に崩れ、一時は1900円を超える下落となり、6万1000円を割り込みました。
その後、安値から985円ほど戻して取引を終えています。
つまり、上昇して始まった後に急落し、安値から一定程度戻して終わるという、セリングクライマックスに近い値動きでした。
売買代金13兆円でも値上がり銘柄が多数
東証プライム市場の売買代金は13兆1999億円、売買高は36億800万株に達しました。
通常を大きく上回る取引量であり、市場全体が投げ売りされたようにも見えます。
しかし、実際には値上がり銘柄が1042銘柄、値下がり銘柄が486銘柄でした。
日経平均が930円下落した日に、値上がり銘柄が値下がり銘柄の2倍以上あったのです。
日経平均採用225銘柄でも、値上がりが143銘柄、値下がりが80銘柄、変わらずが2銘柄でした。
日経平均採用銘柄の6割以上が上昇していたにもかかわらず、指数は大幅安となりました。
理由は、日経平均が株価水準の高い値がさ株の影響を強く受ける指数だからです。
この日、指数を大きく押し下げたのは、東京エレクトロン、ソフトバンクグループ、キオクシアホールディングスなどでした。
一方、コナミグループ、リクルートホールディングス、KDDI、トヨタ自動車、ファーストリテイリングなどは指数を押し上げました。
7月29日は、日本株全体が売られたのではなく、AI半導体や電子部品の一部大型株が集中的に売られた日だったのです。
下落の震源は韓国とアメリカ
この日の半導体株安は、日本国内から始まったものではありません。
動画では、震源として韓国とアメリカを挙げています。
SKハイニックスは最高益でも一時20%安
SKハイニックスは売上高、営業利益ともに大幅な伸びを記録しました。
それでも株価が売られた理由として、売上高と営業利益が市場予想に届かなかったこと、AI向け需要が今後も続くのか不安が残ったことが挙げられています。
利益が前年の数倍に増えていても、市場がそれ以上を期待していれば、決算は失望材料になります。
株価は企業の現在の利益だけでなく、事前の期待との比較で動くためです。
SKハイニックスの下落は韓国市場全体に波及し、KOSPIは8%を超えて下落しました。
サーキットブレーカーが発動し、取引は20分間停止されました。動画によると、発動は2日連続で、2026年に入って9回目でした。
日本時間の午後1時23分ごろには、KOSPIが12.3%安まで下落しています。
この時間帯は、日本市場で半導体株が急速に崩れた時間とほぼ重なっていました。
アメリカでも好決算銘柄が売られた
アメリカでは、半導体検査装置などを手がけるKLAが市場予想を上回る決算を発表しました。
1株当たり利益と売上高はともに予想を上回りましたが、株価は通常取引で6.18%下落し、その後の時間外取引でも7.74%下落しました。
韓国とアメリカで、好決算にもかかわらず株価が下落する動きが起き、その後に日本の半導体株が売られた形です。
日本の半導体株は軒並み急落
7月29日の日本市場では、半導体製造装置、メモリー、電子部品関連の銘柄が集中的に売られました。
主な下落率は次のとおりです。
- KOKUSAI ELECTRIC:17.68%安
- SCREENホールディングス:17.25%安
- キオクシアホールディングス:13.85%安
- 日本マイクロニクス:13.19%安
- 村田製作所:12.89%安
- 太陽誘電:12.36%安
- 東京エレクトロン:10.59%安
- イビデン:9.32%安
- ルネサスエレクトロニクス:8.43%安
- レーザーテック:8.31%安
半導体そのものだけでなく、製造装置、基板、電子部品など、AI半導体の成長期待で買われてきた銘柄がまとめて売られました。
高値から40%から60%下落
動画では、過去1年間の終値ベースの高値から7月29日の終値までの下落率も確認しています。
キオクシアは6月22日の10万8700円から3万8380円まで下落し、高値から64.7%安となりました。
太陽誘電は高値から60.3%安、フジクラは52.1%安となり、いずれも高値から半値以下になっています。
村田製作所は49.1%安、イビデンは49.0%安と、半値割れ目前です。
そのほか、ソフトバンクグループは45.1%安、SUMCOは44.4%安、ディスコは42.0%安、レーザーテックは40.0%安、SCREENホールディングスは39.8%安、東京エレクトロンは36.5%安でした。
ただし、高値から半値以下になったからといって、前年より安くなったとは限りません。
キオクシアをはじめ、一部銘柄は年初来では依然として大幅なプラスでした。
つまり、企業価値が完全に崩れたというより、短期間で上がりすぎた株価が急速に巻き戻されている面があります。
半導体株から自動車や通信株へ資金が移動
半導体株から抜けた資金は、市場の外へ逃げたわけではありませんでした。
業種別騰落率で最も上昇したのは輸送用機器で、上昇率は5.84%でした。
中心となったトヨタ自動車は3224円で取引を終え、7.18%上昇しました。株価は200日移動平均線を上抜け、出来高も直近平均の約2.2倍に増えました。
マツダ、ホンダ、SUBARU、ブリヂストンなども買われています。
自動車株が買われた理由として、トヨタのPBRが1倍を下回っていたことが挙げられました。
PBRは株価純資産倍率のことで、企業の純資産に対して株価が何倍まで買われているかを示します。
AI半導体株の中にはPBRが非常に高い銘柄もありましたが、トヨタは比較的割安さを説明しやすい状態でした。
さらに、為替も買い材料になりました。
トヨタが業績予想の前提としていた為替レートは1ドル150円でしたが、7月29日のドル円相場は163円台でした。
想定より円安であれば、海外売上高の大きい自動車メーカーの利益が上振れる可能性があります。
1年来高値を更新する銘柄もあった
半導体株が急落する一方で、NTT、日本たばこ産業、KDDI、ブリヂストン、ホンダ、東京海上ホールディングスなどは過去1年間の高値を更新しました。
ソニーグループも1年来高値圏まで上昇しています。
日経平均が1.49%下落した日に、TOPIX連動型ETFは0.48%上昇しました。
これは、資金が日本株市場から流出したのではなく、半導体株から自動車、通信、たばこ、保険などへ移動したことを示しています。
アドバンテストはなぜ下げが小さかったのか
半導体関連株が軒並み大幅安となる中、アドバンテストは1.22%安にとどまりました。
終値は2万5200円でした。
ただし、値動きは小さくありません。
高値は2万7520円、安値は2万4135円で、1日の値幅は3385円、率にして13.9%に達しました。
激しく上下しながら、最終的に小幅安まで戻して取引を終えた形です。
その後、午後3時30分に決算を発表しました。
2027年3月期第1四半期の売上高は3675億円で前年同期比39.3%増、営業利益は1900億円で53.3%増、四半期利益は1748億円で93.8%増でした。
さらに、通期の最終利益見通しを42%引き上げています。
業績拡大の背景には、AI向け高性能半導体の検査装置需要の増加があります。
夜間取引で11.49%上昇
決算発表後、アドバンテスト株は夜間のPTSで2万8095円まで上昇しました。
日中の終値に比べて2895円高、上昇率は11.49%です。
100株単位で考えると、約2時間で評価額が28万9500円上昇した計算になります。
また、日中に13.85%下落したキオクシアも、夜間取引では終値から3.96%上昇しました。
これにより、半導体株に対する評価がもう一度変化しました。
発表時間が株価反応を分けた可能性
SKハイニックスは最高益を発表して売られ、アドバンテストは増益と上方修正を発表して買われました。
動画では、この違いの一因として発表時刻に注目しています。
SKハイニックスは市場が開いている時間に決算を発表しました。
そのため、決算とは関係なく売らなければならない投資家の注文や、指数連動型の機械的な売りに巻き込まれた可能性があります。
一方、アドバンテストは市場が閉まった後に発表しました。
夜間のPTSは通常市場より参加者が少なく、大規模な機械的売りも限定されるため、決算そのものへの評価が比較的素直に出た可能性があります。
ただし、発表時間だけで値動きの違いをすべて説明できるわけではありません。
それでも、7月29日の株価を決めていたのは業績だけではなく、その時間に売らなければならない投資家がどれだけいたかだったと考えられます。
セリングクライマックスとは何か
セリングクライマックスとは、売りが一気に膨らみ、投げ売りが最高潮に達した後、相場が底打ちする局面を指します。
損失に耐えられなくなった投資家が一斉に売却し、株価が急落します。
しかし、売りたい人がほぼ売り終えると新たな売り手が減り、押し目買いや空売りの買い戻しが入ることで株価が反転します。
ただし、その日のうちに本当の底だったと判断することはできません。
後日、安値を更新せずに上昇したことを確認して、初めてセリングクライマックスだった可能性が高まります。
7月29日に揃った5つの条件
動画では、セリングクライマックスの一般的な条件として、次の5つを挙げています。
- 出来高が極端に増える
- 値動きが極端に大きくなる
- 恐怖指数が急上昇する
- 安値から大きく戻して終わる
- 悪材料が出尽くす
出来高が急増した
キオクシアの出来高は8623万株となり、直近60日平均の約2.2倍、過去6か月では最大でした。
SCREENホールディングスは平均の約2.3倍、トヨタも約2.2倍でした。
市場全体の売買代金も13兆1999億円まで膨らみました。
値動きが極端に大きかった
日経平均の値幅は2689円でした。
キオクシアは高値4万8820円から安値3万7650円まで動き、1日の値幅は22.9%に達しました。
韓国ではサーキットブレーカーも発動しています。
恐怖指数が上昇後に低下した
日経平均ボラティリティー・インデックス、通称「日経VI」は、午後2時5分時点で43.93まで上昇しました。
しかし、終値は39.52となり、前日比では3.94%低下しました。
日経平均が930円下落した日に、恐怖指数は前日より低く終わったのです。
日中に高まった恐怖が、株価より先に低下へ転じたことになります。
安値から大きく戻した
日経平均は安値から985円戻して取引を終えました。
一時1900円を超えていた下げ幅も、終値では930円安まで縮小しました。
悪材料が通過した
SKハイニックスとKLAの決算という大きな材料を通過した後、アドバンテストが上方修正を発表し、夜間取引で11.49%上昇しました。
形だけを見れば、5つの条件は揃っていました。
欠けていたのは「全員が投げた」という事実
それでも動画は、7月29日を市場全体のセリングクライマックスとは判断していません。
欠けていたのは、「市場全体が一斉に投げ売りされた」という事実です。
本来のセリングクライマックスは、幅広い銘柄が同時に売られる場面です。
ところが、7月29日は値上がり銘柄が1042、値下がり銘柄が486でした。
日経平均採用銘柄でも、値上がりが143、値下がりが80でした。
輸送用機器は5.84%上昇し、1年来高値を更新した企業も複数ありました。
したがって、この日に起きたのは市場全体のセリングクライマックスではなく、半導体セクターに限定したセリングクライマックスだった可能性があります。
半導体だけの底打ちとも断定できない理由
半導体株に限定すれば、売りが出尽くした可能性はあります。
しかし、まだ断定できない理由もあります。
キオクシアは安値近くで引けた
日経平均は安値から大きく戻しましたが、キオクシアが安値をつけたのは午後3時9分でした。
安値から終値までの戻りは1.94%にとどまっています。
指数は戻したものの、売りの中心にいたキオクシアは最後まで売られ続けていました。
キオクシアの決算が残っていた
動画の時点では、キオクシアの決算は7月31日午後3時30分に予定されていました。
最も大きく売られた企業の重要な業績が、まだ市場に示されていなかったのです。
FOMCと日銀会合を控えていた
アメリカのFOMCと、日本銀行の金融政策決定会合も控えていました。
動画内ではドル円が1ドル163円65銭前後まで円安に進んでいました。
金融政策や為替の変化によって、半導体株や輸出株が大きく動く可能性があります。
好決算でも株価が上がらない相場だった
SKハイニックスは大幅増益でも売られ、KLAも市場予想を上回りながら下落しました。
このような相場で、アドバンテストの夜間取引での11.49%上昇が、翌日もそのまま続くとは限りません。
PTSの上昇には注意が必要
動画によると、確認時点でのアドバンテストのPTS出来高は8100株でした。
一方、同日の東証での出来高は1477万株です。
PTSは通常市場より参加者が少なく、少量の注文で株価が大きく動くことがあります。
夜間取引でついた価格が、翌朝の寄り付きで維持されるとは限りません。
高く寄り付いた後に急落する「寄り天」になる可能性もあります。
アドバンテストの決算が本当に相場の流れを変えたかは、翌日の通常市場で確認する必要があります。
下落しているのは業績ではなく株価評価
7月29日の相場で重要なのは、AI半導体企業の業績そのものが一斉に悪化しているわけではないことです。
アドバンテストの営業利益は前年同期比53.3%増となり、通期の最終利益見通しも42%引き上げられました。
SKハイニックスも四半期として過去最高の業績を記録しました。
KLAも1株当たり利益と売上高の両方で市場予想を上回っています。
それでも、SKハイニックスとKLAの株価は下落しました。
現在下がっているのは企業の利益ではなく、その利益に対して投資家が支払おうとする価格です。
AI需要への期待を先取りして株価が上昇していた場合、好決算でも期待をさらに上回らなければ売られます。
企業が成長しているかどうかと、その株価が割安かどうかは別の問題です。
今後確認すべき3つの数字
動画では、7月29日が本当にセリングクライマックスだったかを確認するため、3つのポイントを挙げています。
アドバンテストの寄り付き
PTSでの11.49%上昇が、翌日の通常市場でも維持されるかが重要です。
好決算が通常市場でも評価されれば、相場の性質が変化した可能性があります。
反対に、寄り付き後に売られれば、まだ売り圧力が強いと判断できます。
日経VIの動き
7月29日の日経VIの終値は39.52でした。
再び40を超えて上昇するのか、30台前半まで落ち着くのかが注目されます。
恐怖指数は株価より先に動くことがあるため、投資家心理を確認するうえで重要です。
キオクシアの決算
7月31日に予定されていたキオクシアの決算は、半導体株全体の方向性を左右する可能性があります。
同日には日銀会合の結果も発表される予定であり、今週の相場の答え合わせとなる重要な日と位置づけられていました。
まとめ
2026年7月29日の日経平均株価は930円安となり、一時は1900円を超える下落となりました。
しかし、東証プライム市場では値上がり銘柄が1042、値下がり銘柄が486となり、値上がり銘柄の方が2倍以上多い状態でした。
日本株全体が売られたのではなく、東京エレクトロン、キオクシア、ソフトバンクグループなど、指数への影響が大きいAI半導体関連株が急落したためです。
半導体株が高値から40%から60%下落する一方、自動車、通信、たばこ、保険などには資金が流入しました。
資金は株式市場から全面的に逃げたのではなく、市場の中で置き場所を変えていたのです。
セリングクライマックスの条件である、出来高の急増、値幅の拡大、恐怖指数の上昇、安値からの戻り、悪材料の通過という5条件は、ほぼ揃っていました。
しかし、市場全体が一斉に投げ売りされたわけではありません。
欠けていた決定的な条件は、「全員が投げた」という事実です。
したがって、7月29日は市場全体のセリングクライマックスではなく、AI半導体セクターに限定したセリングクライマックスだった可能性があります。
ただし、キオクシアが安値近くで引けたこと、重要な決算や中央銀行イベントが残っていたこと、PTSの出来高が少なかったことから、底打ちを断定することはできません。
今回の相場で明らかになったのは、AI半導体企業の業績が一斉に崩れているわけではないという点です。
下落しているのは企業の利益ではなく、その利益に対して市場が支払ってきた株価の評価です。
今後は、アドバンテストの通常市場での反応、日経VIの推移、キオクシアの決算を確認しながら、半導体株の売りが本当に出尽くしたのかを慎重に判断する必要があります。
なお、本記事で紹介した株価や業績数値は、動画内で示された2026年7月29日時点の情報を基にしています。実際の投資判断にあたっては、企業の公式発表や最新の市場情報を確認することが重要です。


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